表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山と谷がある話  作者:
11.バカンス(仮)
468/480

468

 

「やぁ、お待たせ。待った?」


「いや、貴女の方が先に居ましたよね?」


 待ち合わせ場所に行ったら、既に居たロドリック氏の第一声がコレである。明らかにロドリック氏の方が待ってる側だよな?


「まぁ、いいか。先に報告ですが、実は同行者が増えましてね。オレの知人なんですが」


「いや、構わないよ。私も勝手にキミに同行する身だしね。同行者の増減は私にはどうしようもない事柄さ」


 増える同行者は、ゾンビーフ氏とツィルディエンデ氏だ。どちらもロドリック氏に一方的に因縁があるらしいが、両者が会ったらどうなるのだろう。

 暫く二体で待っているとゾンビーフ氏が現れた。彼は今日も普人族(ヒュム)に擬態している状態だ。

 まぁ、ヒトと会う際はそちらの方が都合が良いだろう。吸血鬼(ヴァンパイア)面の方は凶悪な面相な上に、対面した事があるロドリック氏が覚えている可能性もあるしな。


「やぁやぁ、お待たせしてすみません。あぁ、貴女が同行者の方ですね。初めまして。私は、この街で錬金店を開いております、錬金術師のゾンビーフと申します。まさか、元“三代目勇者”にこうして会えるなんて思ってもみませんでしたよ。ところで、トワさんとはどうやって知り合ったのですか? 私が言うのは何ですが、彼は滅多に会えないレアキャラのような存在ですからね。最前線に居るような方と接点があるようには見えないのですが。あぁ、すみません。こういった事を聞くのは野暮でしたね。いや、私の野次馬根性が悪い形で出てしまいましたね。今回は南の島でバカンスだそうで、ロドリックさんの場合は最前線攻略に疲弊した身体と精神を癒しに行くという事で付いて行く事を決めたのでしょうか。いや、私も日々の業務に追われていましてね。まぁ、多くの旅人(プレイヤー)住人(NPC)の方々に御愛顧にして頂いている故の嬉しい悲鳴という奴ですね。しかし、私も一度リフレッシュ休暇を得たいと思っていたところに、トワさんからお声が掛かった次第でしてね。やはり、旅は道連れ。多くの方が居た方が道中も楽しいでしょう。前置きが長くなりましたが、これから宜しくお願い致します」


 ロドリック氏とは初対面であるという事を白々しく強調して宣うゾンビーフ氏。それとロドリック氏相手でも変わらず話が長い。ロドリック氏の様子を見るに、途中から聞き流していたぞ。

 そんな彼女はゾンビーフ氏の余りの話題の多さに、何に対して応えようか迷っている感じがする。


「初めまして? 何だか何処かで会ったような気がするんだが、気の所為かな? まぁ、いいか。ご存知のようだが、一応。私はロドリックという。それと“勇者”だったのは結構前の事だし、最近“元勇者”という称号も返還したから、私はもう“勇者”とは縁もゆかりも無いよ。だから、これからはただのロドリックとして接してくれると嬉しい」


 ゾンビーフ氏を何だか見覚えがあるとか言ってますよ、この竜人。まぁ、実際会った事在るのでその感覚は正しい。

 あの時のゾンビーフ氏は、いつもの饒舌は鳴りを潜め言葉少なめだったが、滲み出る雰囲気のようなモノがあるのだろう。ロドリック氏は、ゾンビーフ氏を不審げに観察しているようだったが、頭を切り替えたようで右手を差し出していた。

 その手を両手でかっしりと握るゾンビーフ氏。ついでに口も開かれる。


「まぁ、私のようなヒトは大勢居ますからね。勘違いしてしまうのも仕方ない事ではあります。“錬金術師”と聞くと胡散臭く感じてしまうのもそうです。錬金術師は魔法術師の一種とされていますが、他の分かりやすい魔法術師とは違い、戦闘で敵性存在(モンスター)に攻撃魔法を使うよりも、室内で様々な材料を混ぜ合わせた実験や研究が主な仕事ですから。何をしているのか同業者でないと分かりにくいという側面もあります。それに加えて、研究の果てに生み出されるモノの効果も一律ではない。錬金術で作成したモノを扱うヒトの多くも錬金術師です。作成した物品に対して開明的な説明をするヒトも居れば、何も説明せずに売りつけるようなヒトも居る。まぁ、何と言うか、私が言うのも何ですが、閉鎖的なヒトが多いんですよね。旅人(プレイヤー)ならば兎も角、住人(NPC)はそれが顕著です。自身の研究結果を他所に漏らさないようにするのは結構なんですが、それから始まり、ヒトとの交流を断つという風になってしまうヒトが後を絶ちません。世界の神秘を解き明かす事も含めて、彼等には是非とも協力してほしいのですが、中々そういう訳にもいかず───」


 話し続けるゾンビーフ氏の前にツィルディエンデ氏が割り込む。こういった場合、霊体だと厚みとか無くて便利だな。


「はいはい。長話のヒトは置いといて。初めまして。俺っちはツィルディエンデというッス。宜しくでス」


「黒い幽霊(ゴースト)のツィルディエンデ? 悪名高きPKクラン、“邪霊の目(イビルアイ)”の鉄砲玉じゃないか。何故こんな所に? うーん、トワさんの交友関係が少々心配になってきたよ。………まぁ、今は関係ないか。初めまして。“ただの”ロドリックだ。“休暇中の”でもいいかな。キミも“休暇中”でいいんだよね?」


 PKクラン? 邪霊の目(イビルアイ)

 何だか色々気になる言葉が出てきたな。ツィルディエンデ氏が言っていた『自分とは面識は無いけれど』の下りは、これを指していたのか。

 しかし、PKクランねぇ。ツィルディエンデ氏もPK(迷惑野郎)に散々殺されていたのに、自分自身もPKになるとはな。何が有ったのかは知らないが、不穏な空気にはしてくれるなよ?


「そうッスね。暫く戻らない事はリーダーに伝えておいたから、このバカンスが終わるまではそういう事はしないつもりスよ」


 そういう事とはPKの事だろうか。まぁ、ツィルディエンデ氏が如何に高レベルであろうとも、この面子だとそう簡単に殺られるような奴は居ないだろうが。

 ん? バカンス? 何でそんな話になってんの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ