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山と谷がある話  作者:
11.バカンス(仮)
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 さて、ここから何処へ行こうか。

 ここへ来たのは『北極点へ行ってみよう』という軽いノリだった。まさか、月まで行く羽目になるとは思わなかったが。

 ふむ………。次は南極点でも目指してみるか。

 という訳で、とりあえずイチバンに戻る事にした。ついでにTYPE_R_04からの報告とかがあれば聞いておこう。

 この村にテレポート機能があればそれを利用している所だが、残念ながら村が崩壊した時点で諸々の設備が破壊されたらしい。リスポーン登録も出来なくなっているようだが、誰か早く直してくれないかな。

 では、どうやって行くか。ここから歩いていく? それも良いだろう。だが、今はそういう気分ではないので、TYPE_R_03でカッ飛んで行く事にした。

 TYPE_R_03で移動するにあたり、ロドリック氏(異物)を内部に入れなければならない事に難色を示されたが、ロドリック氏の意識を奪ってから内部に収容するという事で落ち着いた。

 ロドリック氏はもう勇者ではないただの竜人だし、何とかなるだろう。………まぁ、何とかするのはオレではなく、TYPE_R_03なんですけどね。


「えぇと、これに入れと?」


 オレ達の前に鎮座するのは、巨大饅頭な形状のTYPE_R_03。どう見ても巨大なスライムっぽいが、命までは奪わないので安全ですよ。多分。

 ロドリック氏が中へ入るのを逡巡していると、業を煮やしたTYPE_R_03が触手を数本生やし、そのまロドリック氏を内部へ引き摺りこんでしまった。

 TYPE_R_03の内部でジタバタ藻掻くロドリック氏。藻掻くのは得策ではないと感じ取ったのか、じっと何かを耐えているロドリック氏。

 そういえば、普通の生者には呼吸が必要だったな。オレは不死者(アンデッド)なので、そういうのを気にした事が無かったが、生身の頃だとTYPE_R_03が気を利かせて空気穴をとか作ってくれていた気がする。

 しかし、今のTYPE_R_03には空気穴なんてモノは設けてはいない。暫く経った後、弛緩したロドリック氏の身体はプカリと漂っていた。このまま窒息で殺すのならばこのままにしておくのだが、今回は意識を奪う事を目的にしている。

 TYPE_R_03はゲロリとロドリック氏を外へと押し出し呼吸させる事にした。………しかし、流石の竜人だな。意識を失うまで結構時間が掛かった。勇者という称号を失い、能力値(ステータス)が以前より低下している筈だが、生命力は変わらず高いようだ。


「これ、運んでいる内に目を覚まさないよな?」


『強めの神経毒も打ち込んでおくであります? まぁ、旅人(プレイヤー)なら多分死なないであります』


 うーん………。いや、止めておこう。TYPE_R_03の口振りだと、死なないけど何か別の後遺症が出そうな言い方だった。


 ゲロリと出されたロドリック氏を再度TYPE_R_03の中へと押し込み、オレも内部へと乗り込む。そういえば、ロドリック氏は島に住む吸血鬼達と別れの挨拶とかしてきたんだろうか。………まぁ、いいか。

 その後、オレとロドリック氏を積み込んだTYPE_R_03は超音速でカッ飛び、何事もなくイチバンへと辿り着いた。尚、イチバンの周囲にある平原に着地したため、そこそこ大きいクレーターが出来てしまったが、その内消えてなくなるだろう。



 ******



「…………何だこの街は」


 ロドリック氏は目覚めて早々、そんな台詞を呟いていた。どうやら、彼女はイッカクという街が物理的に消えてから、ここへ来た事は無いようだな。


「旧イッカク………イチバンというらしいですよ。新しい領地保有者が名付けたとか何とか」


「トワさんは、その新しい領地保有者が誰か知っているのかい?」


 いや、知らないですね。一体誰なんだろうか。そもそも、オレはイッカク防衛戦の前後はここには居なかったですからね。噂によると、住人(NPC)に代官を任せて何処かに遊びに行っているらしいですよ。


「なるほど。新しい領地保有者は旅人(プレイヤー)と。やはり、あの時の光は旅人(プレイヤー)が放っていたのか? あれで、全てを持っていかれてしまったと?」


 TYPE_AA_00の極太ビームですね分かります。あの時のロドリック氏はまだ勇者だったな。だが、対世界獣用の戦略兵器の前にはゴミ同然だったようだが。


「あぁ、こんな所で立ち話も何だし、それぞれの用を済ませておこうか。私は冒険者組合に行ってみるよ。………何処にあるか分からないが」


 現イチバンの街並みには、旧イッカクの様相は皆無だからな。以前のごちゃごちゃとした街並みから、整然とした箱物が並ぶ風景だ。ロドリック氏の記憶にあるモノは全く役に立たないだろう。………まぁ、仕方ない。連れて行ってやるか。

 冒険者組合がある場所は中央区域の箱物建築の中だ。建物内の各テナントの割り振りはTYPE_R_04に任せておいたのだが、今は一棟丸々冒険者組合が借り受けているようだ。

 冒険者組合の内部には、普人種だけでなく獣種や不死者(アンデッド)まで居た。………あの不死者(アンデッド)はヘンシェル氏の所の奴だな。軽く目礼してきたので頷くだけに留める。ここで身バレする訳にはいかないんでな。


「以前はヒト族とそれに近しい見た目の種族以外、街には入れなかったが………。ここまで様相が変わるとはね」


 以前のイッカクは、シルクススと一部の旅人(プレイヤー)のせいで普人種以外お断り状態だったからな。しかし、今の統治者は不死者(アンデッド)だ。たかが種族程度の違いで、お互いを差別する事は許しませんよ。


 ロドリック氏をとは一時的に別れ、暫く時間が経った後に冒険者組合で合流する事にした。オレは特にやる事も無いので、ゾンビーフ氏の店に顔を出す事にした。


『折角帰ってきたんだし、トワ殿の部屋でのんびりしないのでありますか?』


 オレの私室? あそこには特に用事が無いし、部屋の近くに居るであろう街代官(仮)の不死者(アンデッド)の面を見るのも面倒臭いし、行かない。

 私室には行かないが、下層に居るTYPE_R_04の所には行って来るか。ロドリック氏と合流した後には寄れないし。


次回はゾンビーフ回です。

みんな(作者が)大好きゾンビーフ。

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