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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 まさか、オレまで吸い込まれるとは思わなかった。下へと引き摺り込まれる中、どうにか体勢を変え下が見えるようにする。何だか底の方はぼんやりと光ってるな。果たしてオレはあそこまで辿り着けるのだろうか。水圧耐性持ってないから到着する前に圧死しないか心配だ。

 あ、ヤバい。身体がミシミシいってる。そろそろ本格的に圧死するのではなかろうか。………ん?何か見える。ぼんやりと何か大きな塊が………何か見覚えがあるような………。いや、危ねぇ!!

 みるみるうちにオレに迫ってくる潜水艇の残骸。潜水艇の方が先に沈んでいるので、迫っているのはオレの方だが、この速度でアレに叩き付けられたら圧死する前に死ぬだろう。

 オレら身を捩り流れる方向を変えようと泳ごうとし、何とか潜水艇のスレスレを擦り抜けた。

 潜水艇の脇を通り過ぎる時、潜水艇から伸びているアームが壁に突っかかっているのが見えた。アレのせいであんな所に取り残されてしまったのか。ところで、搭乗員は何処に行ったのだろう。飲み込まれた状況を考えるに、何人か巻き込まれていてもおかしくないと思うんだが。


 吸い込まれる勢いが段々と弱くなり、光が灯っている手前で止まった。

 何だか、ここらの水の粘度が高いような気がする。水の上に立っているというのは中々無い体験だ。どうやら、あの光はこの粘度の高い水の下から発しているようだが、ぼんやりと光っているだけであり、下の様子は伺えない。

 この下には一体何があるんだ? 粘度が高いとは言え、これは水だ。オレは手で掻き分けながら下を目指す事にした。

 その前にステータス確認しとこうかな。死にかけてる事は分かっているが、一応の指標にはなるだろう。


 ******


 プレイヤー名:トワ

 種族:骸骨兵(スケルトン)Lv.2

 LP(ライフポイント):3

 SP(スタミナポイント):75


 ******


 思ったより大分死にかけてた。しかし、何故か知らないが加圧状態ではなくなっているようだ。もしかして、水圧耐性でも生えたかと思ってスキルも確認してみたが、全く何も生えていなかった。………いや、知ってるけど。そんなに簡単に生えるものではないって事は。

 しかし、水圧耐性が関係ないとすると、ここにはデメリットが発生しない程度にしか掛かっていないという事か? 詳細は分からんが今は好都合だ。オレは水を掻き分け、足をバタつかせながら前へと進む。泳ぎ方は何となくしか知らないが、案外何とかなるもんだな。

 暫く泳いでいると、ズルリと指の先が水から出る。そのまま掻き分け、頭を突き出し中の様子を見てみる。遠い場所に鉄色の床のようなものが見える。ここは、結構高い場所のようだ。何となくだけど、何かの施設のようだな。誰かの拠点なんだろうか。ただ、その割には手入れがされていないように、彼方此方が劣化してボロボロになっている。辺りを見渡すと壁のような所に幾つか突起がある。アレを伝っていけば、下へ降りられるかもしれない。


 *******


 壁を伝い下りた先は上部通路だ。下へと降りるための階段は劣化し、落ちてしまっている。他の階段を探すか。

 下へと降りるための通路を探していると何か聞こえる事に気が付いた。耳をすますと何だか怒鳴り声が聞こえるような………。オレの所まで響いてくる怒鳴り声を聞く限り、余り近付きたくないと思うが、ここに何が居るのかを探っておいた方がいいだろう。

 声の方へと進むと段々と声が大きくなってくる。どうやら、怒鳴っているのは一人であるようだ。時々相槌が聞こえるので、独りで怒鳴り散らしている訳ではなさそうだな。彼等は下階に居るようで、オレは彼等を見えるだろう場所まで近付いていく。彼等の様子が見える辺りで透明化し下を覗き込む。一体何を話しているのやら。



「だから!俺達だけでも調査するべきだって!!これはチャンスだ!そうだろ!?」


「いえ、ここは拠点に戻るべきです。ご存知の通り、ここは古代文明の軍事基地。どんな防衛装置があるのか分かりません。私達が無闇に探索するよりも一度帰って皆で来た方が効率が良いと思われますが?」


 大きな声でプルプルと震えながら怒鳴る大きめな緑のスライム。話を聞いた感じ、例の潜水艇で飲み込まれた者だろう。

 グリーンスライム氏の話に反論しているのは、ウサギか? 二足歩行するウサギのようだ。パッと見、ウサギがスライム(モンスター)に襲われているようにしか見えないな。


「防衛装置だと!? それがどうした!! こんなにボロいのにそんなもん有ったとしても動かねぇだろうが! それに、アイツ等が来るまでに俺達で先行調査していればいいだろうが! あ? それとも………怖いのか? 知らないモンが出てくるかもしれないってのが怖いのかよ!? 流石腰抜けウサギさんは違いますねぇ!?」


「はぁ。平和的に解決しようと思っていたのですが、やはり貴方には話すだけ無駄のようですね。余りこういった行為はやりたくないのですが、マスターにも言われてますし仕方ないですよね?」


 グリーンスライム氏はウサギ氏を見下ろしながら煽るように怒鳴る。グリーンスライム氏はうねうねと触手を動かしながらウサギ氏を威圧している。何やら剣呑な雰囲気。恐らくプレイヤー同士で仲間なようだが、先行調査するか帰還するかで考えが一致していないようだ。


 ウサギ氏の周りを取り囲んでいた触手が爆散する。いつの間にかウサギ氏はグリーンスライム氏の背後に移動している。ナニカサレタヨウダ。


「仕方ないだぁ!? また、弱い者虐めかよぉ!? 自分よりも弱い奴にしか強気に出れねぇのかぁ!?」


「弱い者虐めではありません。これは、躾です」


 そんな言葉を残しウサギ氏の身体が消え、グリーンスライム氏の身体がバラバラに引き裂かれる。ナニカサレタヨウダ。まぁ、状況的にウサギ氏がグリーンスライム氏をキルしたんだろうな。バラバラにされたグリーンスライム氏は、断末魔を上げる事も出来ず消滅した。


 グリーンスライム氏が死に戻ったのを確認したウサギ氏は、どこかから刃物を取り出し己の首に押し当てる。刃物がウサギ氏の首を半ばまで切断し、光の粒子を上げながら消滅した。

 後に残ったのは、グリーンスライム氏を消滅させた時に出来たと思われる床に残った無数の傷と、床にぶち撒けられた血痕。………さっきのやり取りを見ないで、この惨状を見つけたら絶対に勘違いしていたな。


 さて、邪魔者は去った事だし探査でもしますかね。ウサギ氏は軍事施設とか言ってたな。経年劣化で動作停止しているといいな………。



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