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TYPE_F_01の見立てでは早くても半日後だったが、骸獣側が行動を起こしたのはあれから三日後のことだった。輸送魔砲とやらは島の下にあり、それが起動すると島が破壊されるとか何とか。
そんな訳で、事が起こった際には島がどうなるのか分からないという事でオレ達はラクガン氏の身体に乗り、島周辺の海にて待機している。
因みに、この間に“元勇者”のロドリック氏はオレ達の元へ五回訪れ、四回死んだ。オレ達………と言うよりはTYPE機達を止めようと海を泳いで再来したが、戦闘開始した時点でTYPE_R_03に乱切りにされてしまった。
三度目からは対策を講じて来たようなのだが、小手先の技なんてものがTYPE_R_03に通じる訳もなく、都度細切りにされたり銀杏切りにされたりしていた。五回目の来訪では、事前に排除するのは諦め、吸血鬼達に手を出すような時に邪魔をする旨を宣言しに来た。それにしても邪魔をするだけとか………それでいいのか“元勇者”。
そんなこんなで三日後の夜、地響きと共に島の中心部から何かが地面から迫り出し、徐々に上へと伸びていくのを確認した。
地響きが起こるのと同時に、TYPE機達は飛び出して行った。何故かオレを連れて。
おい? オレには安全な所で観戦しろって言ってたよな?
『まぁ、この後色々あるので、そのついでに連れて行った方が後々面倒が無いでありますね。それに、ここらで一番安全な場所は某の内部でありますから』
やめろー。確かにそれはそうなんだが、オレは行きたくない。こんな所から何が観えるんだ?状態だが、オレもエレイン氏とラクガン氏と一緒に観戦だけしていたいんだー。そうだ。TYPE_R_03の中はまだ余裕があるんだから、エレイン氏とラクガン氏も連れて行けー。お前なら出来る筈だ。
「は? 何故私達がそんな危険な場所に行かなくてはならない。貴様にはそいつ等を従えている故に、当事者としての義務があるだろう。勝手に一人で行って死ね」
いやだー。オレの悲痛な叫びも虚しく、TYPE_R_03に拉致られ戦場へと連れて行かれた。
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「で? 実際のところはどういう理由があるんだ? 今迄は用が済んだ後にオレを運んでいたし、お前等にとってはこの程度の距離なんて大した事ないだろ? 寧ろ、足手纏いなオレを連れて行く方が面倒臭いんじゃないか?」
『概ねはあの場で言った理由でありますよ? ただ、骸獣が宇宙へと飛ばされる懸念がある以上、トワ殿もついでに連れて行った方が面倒が無い訳で。それに、トワ殿にはそのままTYPE_AAへと行ってもらう予定でありますからね』
TYPE_AA? 人工衛星であるらしいアレか? そういえば、あの輸送魔砲でならば確実にTYPE_AAへと着けるとか言っていたな。でも、何でこのタイミングで? あそこに用でもあるのか?
『主には月面に取り残されたTYPE_A_01の回収が目的だ。TYPE_R_03の一部が定期的に世話をしているようだが、そろそろ資格を持つ統制官と契約させた方が良いだろう』
そういえば、TYPE_A_02の本体であるTYPE_A_01は月面でくたばっているんだったか。あの頃は、まさかオレが月へと行く事になるとは思っていなかったな………。
話していると島の外縁部まで来た。いつもならTYPE_R_03の最高速度でかっ飛んで行くのだが、今は小妖精の身体に入ったTYPE_F_01が居る。TYPE_R_03が、中身がTYPE機であろうとも小妖精を内へと取り込む事を拒否したため、小妖精の飛行速度に合わせた結果だ。
遠くから見てもデカいなと思っていたが、改めて近くで見るとそれは巨大な壁である。いや、微妙に曲面だから壁ではないか。
そんな巨大なモノが突然島の下から盛り上がって来たため、当然の如く吸血鬼の街は無事ではない。建物は崩壊し大量の土砂が撒き散らされている。これは、島に住んでいた吸血鬼の大多数は生き埋めになってるんじゃないか?
吸血鬼達の身体スペックは分からないが、このままでは圧死や窒息死で全滅するだろう。
オレとしても彼等には色々とお世話になったので助けたい気持ちはミリ程度にはあるが、TYPE機はそんな事微塵も考えてないんでね。見殺しみたいになるのは仕方ないね。
「我々に責任転嫁するのはいいが、あの状況を憂うような心を持つ統制官であるならば、TYPE_R_03に『彼等を助けろ』と一言命令すれば済む話では?」
それはそうだが、骸獣という世界規模の災害があそこに居るんだろ? だったら、そっちを優先した方がいいよな?
確かに巻き込まれた彼等は可哀想ではある。だが、吸血鬼という種族は元々骸獣の配下みたいな存在だ。なら、ここで無闇に助けない方が相手の戦力を削れていいだろう。………それに、彼等はロドリック氏が助けるだろうしな。
輪切り→乱切り→細切り→銀杏切り。
これを人体でやると大変グロい事になります。




