452
「貴方達は宇宙へ上がる必要がある。それは今直ぐにという訳ではないが、ここで宇宙へ上がる手段を得ておくのが最善だろう」
次シーズンの話かな? 未だ、この星の一部しか踏破していないらしいのに、更に宇宙へ進出しろというのは時期尚早な気がしないでもない。そういうのは、もっと進行度が進んでからだな。
しかし、オレはそんな進行度なんて知った事ではないので、使えるようになったらさっさと宇宙へ行く所存である。この星での宇宙は、恐らく全旅人未踏の地だろう。それに、不死者であるオレは、過酷な宇宙環境をほぼ無視して活動出来る。
ただ………TYPE機達の話だと、この星系では、この星以外の惑星は全て星冥獣に喰われて無くなったらしいんだよな………。
『例え不死者であろうとも、魔力過多症をなんとかしない限り宇宙進出は無理でありますよ』
そういえばそうだった。この宇宙は星冥獣が拡散した“魔素”が異常に濃い空間であり、何の対策もしていないと身体に魔素が溜まり過ぎて死ぬんだったか。魔素を身体に吸収させないような特殊な装備を着込むか、有るのかは知らないが専用技能を取得するしかないのだとか。
「それで、お前達はいつ骸獣とやらをやりに行くんだ?」
「奴等が事を起こすのは、恐らく約半日後。日が沈み、夜時間になってからだろう。奴等は日の光に弱い特性を持っているからな」
ん? この地域は年中極夜地帯じゃないのか? 極夜なら、日が沈む時間とか関係無いんじゃないか?
「この星が公転している以上、年中極夜というのはあり得ない。それが年中極夜に見える原因は、この地域一帯を覆う擬装天蓋のせいだ。あれが日光を遮り、吸血鬼達の活動を補助しているようだ」
なるほどな。擬装天蓋とやらは、吸血鬼達を助けるための装置という事でもあるのか。上空にあるらしい天蓋の下から見ても夜空が見えるのは、透過しているからなのか夜空を映しているからなのか。………ところで、この擬装天蓋ってのを作ったのは、第一人類種だよな? それって本当に吸血鬼達のためなのか?
『ここを作った第一人類種が何を考えていたのかは分からないでありますが、輸送砲の維持管理のための手が必要だったのかもしれないでありますね? まぁ、多分元々は違う目的だったと思うでありますが、途中から吸血種達への保護のためになったのかもしれないであります?』
何だかTYPE_R_03にしては、随分と曖昧な言い方だな。TYPE機ならば、第一人類種が遺した機構とか把握してそうなモンだが。それに、オレ達がこの島を観光している間に色々調べたんじゃないのか?
『某は情報機ではないでありますので、第一人類種の全てを知っている訳ではないであります。某達のようなTYPE機を造ったモノと、ここの輸送砲を作ったモノは違う部類の第一人類種であります。そもそも、星冥獣が襲来する以前はこんな非効率的な手段は取らなくとも宇宙へ行けたであります。恐らくコレを造ったのは星冥獣戦の最後期、某が機能停止した後であります』
栄華を誇っていた第一人類種の文明は、星冥獣の襲来で後退したとか何とか。その後、第一人類種は緩やかに絶滅し、後進を第二人類種へ譲ったとか何とか。
まぁ、そこら辺の歴史は殆ど記録が残っていないらしい。観測出来る奴が殆ど残っていなかったからな。唯一、無事?だったのはTYPE_AAに残されたTYPE機だけだったとか。具体的に誰が居るのかは知らないが。
とりあえず、TYPE機が戦闘開始するのは早くても半日後らしい。それまで何をしていようか。いや、そもそも戦闘に手出しするなとしか言われていないから、オレ達はさっさと島を離れてもいいんじゃないか?
「何を言う。私達は手出しはしないが、コイツ等が起こす事を出来る限り最後まで見届ける義務があるだろう。これは、島に住む彼等に対する責任だ。貴様は飲食も睡眠ま必要ないだろうが、少しでも彼等の世話にはなっただろう。ならば、彼等の行く末を見届ける義務が発生する筈だ。………私達は彼等を見殺しにするしかないのだからな」
えぇ………。普通そんな義務ないだろ。無いよな?
エレイン氏は責任感が強過ぎるような気がするな? 水の星では街を離れて隠居生活していた癖にな。
恐らくそれは建前で、さっきTYPE_F_01が言っていた輸送砲使用の優先権が欲しいんじゃないか? この星で宇宙に行ってどうする的な問題はあるが、ここでの経験が向こうでも活かせるとか思っているのかもしれない。
『私もエレインさんと同意見です。それに、骸獣とやらがどんなモノか興味がありますしね』
ラクガン氏はこのまま観戦したいらしい。平和主義なら、さっさと島から離れるんじゃないか? 平和主義?とか言われるのはそういう所だぞ。
TYPE機の戦闘が始まる前に島を離れるという提案は、一対四の多数決により却下となった。エレイン氏とラクガン氏は兎も角、TYPE機が反対するのは何でだよ。
『トワ殿を一人で放流すると、寂しさで直ぐに死んでしまうからでありますね。某も統制官がこの場から居なくなると、少々面倒でありますので』
「貴方は私達の統制官ではないが、TYPE_R_03の力を借りる以上、必要な存在だ。戦闘面は全く期待していないので、比較的安全なここで待機しているように」
はいはい。オレはただの置物ですね分かります。
過去に出したキャラや設定を思い出すために自作品を一から読んでいる。




