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山と谷がある話  作者:
10.再度北へ行こう
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 小妖精(アリス)の身体に入ったTYPE_F_01は、やや神妙な顔を作り口を開く。………その顔でそういうのやられると何か無性にムカつくな。


「先に叩いて終わりに出来れば、私達も苦労はしない。骸獣は輸送砲の砲門の内部に居ると説明したが、砲門が物理的に閉じられていてな。どうやら、骸獣の血液を吸血鬼(ヴァンパイア)が操血魔法で操り、砲に蓋がされているようで、下手につつくと固められた砲門が壊れかねない。折角、ほぼ無傷で遺されていたモノを無闇に壊す必要は無い。私達も出来れば輸送魔砲は使える状態で手に入れたい。そのためには、吸血鬼(ヴァンパイア)が操血魔法を解除し、骸獣が目覚めるのを待つ必要がある。それに、奴の目的も宇宙に上がる事だろう。故に、打ち上がる前に輸送砲を壊す事は無い筈だ」


 骸獣の目的は宇宙に上がる事? 何故? 星の侵略者ならば、この星を乗っ取る事が目的じゃないのか? 何で態々、TYPE_Oが居る宇宙へと上がる必要があるんだ?


「この輸送砲の着弾点はTYPE_AAだ。貴方達が考えているマスドライバーとやらは宇宙空間に物資を放り投げる技術らしいが、この輸送砲は違う。そのための擬装天蓋であり、そのための魔砲だ。この輸送魔砲で打ち上げられた(物資)は必ずTYPE_AA(目的地)へと辿り着く。恐らく骸獣の狙いは、TYPE_AA(人工衛星)だろう。TYPE_AAを侵食して乗っ取るのが目的なのかもしれない。………まぁ、今更そこに行っても………といった感があるが、みすみす奴を見逃すつもりは無い」


 人工衛星であるTYPE_AAは現在無人である………と聞いている。まぁ、ただ“無人”というだけであり、“ヒト”以外は居るんだが。

 TYPE_AAに居るのは、ここに居るTYPE_R_03(コイツ)の分体だ。分体………TYPE_R_03は本体と分体の区別が無い奴なので、向こうも本体と言えるのかもしれない。まぁ、そんな訳で今更月に上がったところで、向こうのTYPE_R_03に狩られるだけだ。

 この情報を知っているのは、TYPE_R_03から教えられたオレや、情報共有しているTYPE機だけだ。敵対勢力である骸獣にはこれを知る由もない。

 この星に残る骸獣を殲滅すべく、今も星の地表を狙い続けるTYPE_AA_01の存在は、骸獣勢力にとって最も邪魔な存在だろう。しかし、これを奪ってしまえば、邪魔どころか最大の戦力になり得る。

 故に、TYPE_AA奪取という作戦を打ち立て、一縷の望みを賭けて月へと向かうつもりなのかもしれない。

 まぁ、行ってもTYPE_R_03(最大戦力)が居るから意味無いんですけどね。


 エレイン氏とラクガン氏は首を傾げている。『何で月に行く意味が無いんだ?』とでも思っているのだろう。まぁ、事情を知らないとそういう反応になるよな。

 TYPE_F_01の説明で、骸獣を今直ぐ殺れないってのは分かった。それで、奴が目覚めるのはいつになるのか解っているのか?


「ここの骸獣は少し特殊でな。自らの端末である吸血鬼(ヴァンパイア)に自らの精神を配下のモノに入れているようだ。目覚めるのは、端末が本体に接触し封印を解除してからになるな」


 骸獣の精神が入った端末ねぇ………。吸血鬼(ヴァンパイア)は結構な数が居るぞ。有り得そうなのは、この島の長であり吸血鬼(ヴァンパイア)の真祖という肩書があるヒルデ氏が怪しいが………余りにもあからさま過ぎて違うような気もする。


「ヒルデと呼ばれる個体ではない。確かに奴も骸獣の端末の内の一体ではあるが、骸獣の精神は入っていないだろう。小妖精(ピクシー)の身体から計測した限りでは、私達が会った中には居なかった。恐らく、精神を入れられた端末は表に出てきてはいない。本体と同じく地下に隠れているか、誰かに匿われているかだな」


 骸獣と繋がっているのがヒルデ氏ではないという事は、ヒルデ氏に雇われたサギハン氏は敵ではないという事だろうか。………あのヒトの立ち位置が未だにイマイチ謎なんだよなぁ。

 サギハン氏はヒルデ氏の依頼で“天蓋”とやらの残骸を集めていたらしいが、彼女自身はアレが何なのかを分かっていなかったみたいだし、体良く利用されていたという事でいいのか? 別行動しているとはいえ、一応“海の呼び声”の一員でもある。TYPE_F_01的にはお仲間認定しているのかもしれない。


「つまり、私達に何をさせようと言うんだ? その骸獣?とやらは、レイドボス(災害級)なんだろう? たった三体しか居ない私達が戦って倒せるモノなのか?」


 普通は無理ですね。旧イッカク周囲の森でオレが見掛けた“黒疫”のキールですら、高レベルの旅人(トッププレイヤー)達が十数体集まった事で討伐出来たみたいだしな。

 ラクガン氏やエレイン氏の戦闘力はよく分からないが、オレ自身にそんな力は皆無だ。ここに居る旅人(プレイヤー)だけで倒そうとするのならば、無謀というモノだろう。………旅人(プレイヤー)に限るのなら、な。


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