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あれからどれだけ経っただろうか。前々から言っている事であるが、オレの時間感覚は死んでいるのでさっぱり分からない。TYPE_R_03が居ればすかさずツッコミを入れてくれるんだけどなぁ。………同じような事を以前もボヤいた気がする。
ロドリック氏の忠告に従いヒルデ氏を呼び寄せた後、ここまで色々あった。
ラクガン氏とエレイン氏と共に吸血鬼の街や周辺を観光し、この街に来た何体かの旅人達とも情報交換をしていた。
いつだったかは覚えていないが、ロドリック氏も何故かオレ達に着いてくるようになり今に至る。
オレとしては、骸獣関連の情報が無いものかと思っていたが、特にコレと言ったモノは出てこなかった。
強いて言えば、サギハン氏がヒルデ氏の依頼で周辺の海中から何かを集めているくらいか。これも本人から聞いた事だし、特に隠している事も無さそうだった。
ラクガン氏の本体も島周辺まで辿り着いた。流石にあの巨体を上陸させる訳にはいかないので、周辺に偽装岩礁として留まってもらっている。
という訳で、ほぼほぼやり尽くした感。島の数少ない観光スポットと呼ばれる所は全て巡ったし、島の住民である吸血鬼達ともある程度仲良くなった。相変わらず、ロドリック氏人気は高いようだが、彼等も節度を保つ事を覚えたのか、今は群衆に囲まれる事は無いようだ。
「私はまだこの島に留まるつもりだが、キミ達はどうするつもりなんだ?」
ロドリック氏が唐突に聞いてくる。まぁ、確かに、オレ達の目的は終わった感があるが、この島を離れても良いものか………。当たり前ではあるが、ラクガン氏やエレイン氏、ロドリック氏には骸獣の事は話していない。
オレには観光以外にも骸獣の情報を集めるという目的があったんだが、骸獣関連の進捗はゼロだ。まぁ、TYPE_R_03が居ないから、所詮オレ程度の情報収集では骸獣に繋がる何かが見付かるとは元々思ってはいなかったが。
「そうだな。私達もこの島へ来た目的を果たしたし………。いや、私は元々トワについて来ただけだからな。トワの意向に従おう」
ロドリック氏の問をオレにぶん投げるエレイン氏。まぁ、オレもそろそろここを離れてもいいんじゃないかと思うんですけどね。
その前に、どうやってこの島から脱出するかだな。行きはウキシマ氏の手を借りて来る事が出来た。では、帰りは? 途中まではラクガン氏ででも行けるだろうが、海溝があるような場所は別だ。また、ウキシマ氏を呼ぶしかないのではなかろうか。
「ところで、ロドリックさんはどうやってこの島に来たんですか?」
「どうやって? 勿論、泳いでだが?」
うーん、この脳筋具合。全く参考にならない。
あれこれと話し合い、この世界での明後日にここを発つ事にした。
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「そうか。分かった。短い間だったが、キミ達には色々と世話になった。例えば、視聴者の方々から逃げるための口実とかにね。また何処かで会ったら一緒に観光でもしよう」
見送りに来たのはロドリック氏だけだった。………まぁ、他のヒト達には色々と仕事があるからな。一観光客であるオレ達を態々見送りに来るような酔狂な奴は早々居ないだろう。
「そういえば、他の旅人に聞いたんだが、極光を観測出来る地域もあるらしい。残念ながら、この島周辺では見る事は出来ないようだが」
ロドリック氏は、この島で極光を観測する事を期待していたらしい。この島周辺は万年極夜だから、極光も毎回出てくるとでも思っていたのかもしれない。………ロドリック氏とっては残念な事だが、極点付近では極光は出ないらしいぞ。
岩礁に擬態したラクガン氏の元まで歩いて行き、擬態を解除して貰う。ゴゴゴという地響きと共に聳え立つ巨体。余りのデカさにロドリック氏は若干ビビっていた。『あの不死者よりデカくない? ヤバ………』等とボソボソ呟いていた。
改めてラクガン氏の上に乗ると、滅茶苦茶高いな。こんな巨体でも海に入ってしまうと、殆どの身体が沈んでしまう。
立ち上がったラクガン氏の上から、下に居る筈のロドリック氏を見るが………何処に居るのかよく分からないな。まぁ、いいか。
適当に手を振りつつ………ラクガン氏の指?らしきモノもロドリック氏に向かって振られている。デカ過ぎてよく分からないが。
「さて、これで用は終わったと考えても良いのかな?」
何だか聞いた事の無い声が聞こえた。
声の発生源は足元。ラクガン氏の本体に括り付けられた小妖精が半目でこちらを見上げていた。最早殆ど忘れかけていたが………コイツ、エレイン氏の蜘蛛糸で猿轡されていた筈では?
俺氏、年末に風邪引く。
今年はご愛読ありがとうございました。来年も宜しくお願い致します。




