表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
44/460

44

 

「なし崩し的にここまで来ちゃったけど、そろそろお別れギョ。トワさんはこれから何するつもりなんだギョ?」


「ちょっと、この拠点の周りを散策でもしますよ。水圧耐性は持ってないので、地道に生えるのを待ちながらね」


「なるほど。ボクは肺呼吸を生やすために、あの湖にでも行ってくるギョ。ついでにヴィセル達を冷やかして来るギョ」


 ヴィセル氏達………あぁ、なるほど。そういう関係だったのか。ヒラメ氏………馬に蹴られても知らないぞ。


「拠点の周りは管理NPCのお陰で明るいけど、少し離れたら暗くなってくるギョ。暗いところは敵対生物(モンスター)が多いから気を付けるギョ。あと、ちょっと離れた所にある海溝には絶対に入らない方がいいギョ」


「海溝………例のレイドボスが居る場所ですか?」


「そうギョ。レイドボス以外にも凶暴なモンスターがいっぱい棲息してるから、普通に危険地帯ギョ。まぁ、水圧耐性持ってないなら、そこまで行くまでに自動的に死に戻るギョ」


 どうやらレイドボスエリアとやらは、かなり深い場所らしい。ヒラメ氏でも辿り着けないとか言ってたからな。水圧耐性持ちの魚人でも辿り着けないとは、カイリ氏とかの水圧耐性のレベルは一体幾つなんだろうか。

 まぁ、オレが気にする所じゃないか。


「大丈夫ですよ。ただ散歩するだけですし、早々危険な所には行きませんから」


「海に慣れてないと迷子になりやすいギョ。ボクもたまに迷子になるから気を付けてギョ」


 迷子になるんかい。マップ見ればどこかは分かるだろうに、ヒラメ氏は方向音痴なのかもしれない。


 拠点から出る所まで一緒に行き、拠点の外の数多くのプレイヤーが浮いている花畑を境にヒラメ氏と別れた。

 ヒラメ氏はこちらに手を振りながら後向きに泳いでいる。尾鰭を動かしてるのに後退してるぞ。どうなってるんだアレ。


 花畑から出て、ヒラメ氏が戻った方向とは逆の方へ歩く。ヒラメ氏から聞いた通り、拠点から遠のくにつれて段々と暗くなってくる。だが、何も見えなくなる程ではなく薄暗い程度で済んでいる。余り暗い訳ではないので、そんなに深い場所ではないのかもしれない。それとも、ゲームの仕様的な何かか。


 何やら前方に無数に煌めく小魚が集っている。小魚がああやって大群を形成しているのは、群体になる事で大きな魚に見せ掛けているとか何とか。大きな魚には見えないが、ギラギラと輝いているから目に悪いな。しかし、ああいう行動をしているという事は、近くにそれなりに肉食生物が居るという事だ。

 そんな事を考えていると、オレの横を何かが通り過ぎ、ギラギラした群れがニ分割された。二分割された群れを無数の影が横切る。その度にギラギラ度が減っていき、瞬く間に小魚達の群れは霧散していた。

 オレの視界を高速で横切る姿は身体の各所が鋭利に尖り、杭のような長い角らしき物を持つ魚だった。噂をすれば、だな。アレ等を警戒するために群れていたようだが、あの魚にとっては群れていた方が好都合だったようだな。

 何だか視線を感じる。例の魚達がオレの方を見ている。おや? これって結構ヤバいのでは?

 そう思うと共にオレに突っ込んで来る魚達。杭のような鋒が煌めきオレの身体にぶち当たる。鋒は運良くオレの肋骨の間をすり抜け、途中で引っかかる。その突進をまともに受けたオレの身体は浮き上がり、魚に運ばれる形でその場を高速で後にする。


 ヤバい。コイツ等何処まで行く気だ。止めろ! 振り落としてもいいからオレを降ろせ!

 願い虚しくオレは魚に拉致されてしまった。何処に行くんだろうホント………。



 *******



 漸くオレが邪魔だと気が付いたのか、頭を振り回して適当にその辺に降ろされる。奇跡的な事にLPは全損しなかった。


「いや、ここ………何処?」


 周囲がかなり暗い事から、海中都市から大分離れてしまったのは間違いないだろう。

 おや? 何だか向こうの方が明るくなっているな。もしかしたら、別の拠点でもあるのかもしれない。ちょっと近付いてみよう。

 暗い中で、オレを招くかのように蠟燭の炎のように灯りが揺らめいている。うーん、これは多分アレかなぁ。とりあえず、死んだふりLv1。

 暫く幽体状態で見守っていると、灯りに誘われたようにオレを優に超える大きさの魚が近寄ってくる。見ず知らずの魚氏はその灯りに興味があるかのように口先で突き、その場から姿を消した。

 何も見えなかったけど、どうやら灯りの持ち主に喰われたようだ。何の事は無い。誘蛾灯に惹き寄せられた間抜けがくわれただけだ。しかし、透明化と気配隠蔽コンボでの待ち伏せ型かぁ。オレも頑張ればああいう事出来るようになるのかなぁ。

 しかし、ここらは危険な奴等が多そうだな。アレは待ち伏せ型だから良かったけど、一歩間違えれば喰われていたのはオレだったな。

 オレは死んだふりを解除し、その場から立ち去る。LP全損してはいないが、死にかけである事は変わりない。あまり危険な行動は取りたくないんだが、今はこの場からさっさと離れるのが吉だな。もっとヤバいのが居そうな気がするし。


 オレは海底にゴロゴロと転がる岩礁を隠れ蓑にコソコソと移動する。岩礁には今のオレのように、外を悠々と泳ぐ大型の魚から身を隠す生物が多数身を寄せ合っている。

 物陰を慎重に進んでいると、何かの穴に嵌ったかのように下に落ちかける。幸い手を引っ掛けて落ちる事は無かったが、運が悪かったらそのまま下に吸い込まれていたかもしれない。這々の体で上まで登ると、何か違和感がする。

 何だかこの地面、嫌にツルツルするな。地面かと思っていたが、何やら一定の大きさのパネルのような物が連なっているようだ。

 ………もしかしてこれは、海底遺跡的な?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 谷ってまさか海溝のことだったか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ