428
やっとの思いで外に出ると、黒い物体が小妖精を身体の中に取り込んだ状態で地面にでろでろと伸びていた。何だこれ。
「トワ殿がやっと戻って来たであります………。コイツは煩いので暫く前からこうやって黙らせているであります………」
TYPE_R_03は大分疲労を滲ませたような声だ。やはり、煩いのと一緒に残したのが拙かったか。小妖精は気を失ったように、スライム状のTYPE_R_03の身体の中で浮かんでいる。………もしかして死んでる?
「残念ながら、まだ生きているであります。存外にしぶといようで、気を失って仮死状態になっているようであります」
まぁ、コイツの役目は終わったから、もう死んでようが生きていようがどうでもいいんだが。
とりあえず、TYPE_R_3に内部で何があったのかの説明を斯々然々。
「これは星冥獣用の封印装置で、内部に星冥獣の残骸? 確かに、封印装置があるとは記録されているでありますが、それは某が製造されるよりも大分前の事であります。ですので、何処にあるのかは知らなかったであります。でも、まさかこんな所にあるとは………であります。それで? その白い粉が星冥獣の? なるほど。確かに、奴等由来のモノのようであります」
TYPE_R_03は渡した白い粉を返してくる。返すのはいいんだが、それと一緒にスライム状の粘体を渡されても困る。
「何言ってるでありますか。コレは無害化されていると言っても、星冥獣のモノである事に代わりはないであります。そんなモノをその辺に撒いたらどうなるか分からないであります。ですので、某の一部に包んで拡散を防いでいるのであります」
確かに、この白い粉が周囲の生命体に悪影響を与える可能性は無い訳ではないからな。でも、それならTYPE_R_03には影響は無いのだろうか。
「某達TYPE機は星冥獣、骸獣に対する免疫を持っているであります。………まぁ、TYPE_Z_03のように頭をやられたら別でありますが、大抵の事は問題ないであります。そうでないと、奴等と殴り合いが出来ないでありますし」
まぁ、それはそうか。とりあえず、渡さなかった残りも含めてTYPE_R_03の一部ごとアイテムボックスに収納しておく。
何か最近、変なモノばかりアイテムボックスに入れている気がするな。暇な時にでも内部を整理してみるか。
「それで、色々と聞きたいんだが、この陽喰鳥ってのが太陽を喰った星冥獣でいいのか? それに、恒星のエネルギーを吸収した奴を封印なんて本当に出来たのか? TYPE_Rってのは、01と02が試作機とか言ってたよな? それなら、TYPE_R_00ってのは何なんだ?」
内部で疑問に思った事をとりあえず全部聞いてみた。これらの事は、純戦闘タイプのTYPE_R_03に聞くよりも、広域支援タイプのTYPE_R_04に聞いた方が良いかもしれないが、分からない所は04と通信してもらえばいいか。
「本当に質問が多いでありますね。幾つかは某にも記録されているだけで分からない事柄でありますが、一応説明解説していくであります。所謂、設定開示回とかいう奴でありますね」
メタ発言は止めろ。まぁ、TYPE機の立ち位置的に仕方ない所もあるんだろうが。
TYPE_R_03曰く。
実は太陽を喰らった星冥獣は数多く居たのだが、その中で最も力が強い奴を“陽喰鳥”と呼称した。因みに、見た目は雄の鶏に似ているらしい。
記録自体には、本当にそんな奴を封印出来たと書かれている。さっきの白い粉がそれの証明となっているのでは?との事だ。それと、陽喰鳥以外の太陽を喰った星冥獣は、奴の封印前に全て殲滅された。
TYPE_R_00はTYPE_Rの基となった存在。つまり、星冥竜の事だ。
「その、星冥竜ってのは、第一人類種の仲間になった奴だって聞いた覚えがあるんだが? それがTYPE機なのか?」
「第一人類種の仲間になったと言うよりかは、厳密に言うと仲間を裏切った奴であります。TYPE_R_00………星冥竜はかつて仲間だった星冥鳥………陽喰鳥を手土産に第一人類種の元に下ったのであります。何故、奴が裏切ったのかは分からないでありますが、奴が居なければ某達も創造されていなかったので、そこら辺については感謝してもいいかもしれないであります死ね」
最後に隠しきれない殺意が漏れてるぞ。
しかし、TYPE_R_05がお父様と呼ぶ奴が実は裏切り者だったとはな。
それと、何処かで誰かに聞いたTYPE_Rは他のTYPE機とは違い、大まかに言えば骸獣と同じというのはこういう事だったんだな。
「しかし、トワ殿にしか見えない封印装置でありますか………。しかし、奴の封印当時には旅人は居なかった筈。何か別のトリガーでもあるのであります?」
知らんがな。と言いたい所だが、旅人が〜ではなく、称号が関係しているような気がする。封印当時に“光亡き者”を持っている奴が居たのかは知らないが。
この黒一色の不審なモノが星冥獣の封印装置だという事が判明し、内部に収められていたモノも回収?出来た。という訳で、もうここには用が無いため移動する事にした。
「ところで、この小妖精はそろそろ捨てても良いであります?」
そうだな。気を失っているし、森の中よりも比較的安全な封印装置の内部にでも入れておくか。
TYPE_R_03の中から小妖精を引っ張り出す。軽い身体を片手で持ち上げ、封印装置の内部に入ろうとした辺りで何かに引っ掛かる。周囲に突っ掛かるような物は何も………ん? これは小妖精自体が見えない壁にぶつかっている? オレが持っていれば付属品として入ってこれるかと思ったが、そうではないらしい。
見えない壁によって変顔を晒している小妖精を見て思った。もう色々と面倒臭いからこのまま放置でもいいんじゃないか? この森出身だし、曲がりなりにも空間魔法が使えるらしいしどうにかなるだろう。
オレは小妖精の身体をそっと木の枝に乗せ、更に森の先へと歩みだした。




