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輪切りにされた丸太の陰から小妖精が叫ぶ。
「でも!! 報酬は要るからね!! アンタが吸収した魔力、何とかして私に流れるように出来ないの?」
「出来ない事は無いでありますが………その場合、お前は死ぬ。………某が吸収した魔力は並大抵の量ではないであります。そんなモノをただの小妖精風情が吸収しようとしたら、そのゴミがどうなるかなんて………」
TYPE_R_03は語尾を濁したが、言いたい事は明らかだ。とりあえず、何が何でも小妖精に魔力を渡したくないのは分かった。
「そ、それなら仕方ないね!! なら、現物支給で!! 何か寄越しなさいよ!!」
現物支給? うーん、ならコレで。
アイテムボックスから例のブツを取り出し、小妖精に向かって放り投げる。
「何これ?」
「魔力が豊富に含まれた超高級人参だ。知らないのか?」
熊鬼族から貰った、亀甲縛りにされ天日干しのマンドレイクだ。オレには食えないし使い道は無いが、小妖精なら食えるのかもしれない。
「こんなシワシワになってるのがマンドレイク? まぁ、確かに魔力は豊富みたいだけど、どうするのコレ?」
そりゃあ、勿論、そのまま齧るんですよ。
オレの言葉に胡乱げな目で見てくる小妖精。マンドレイクの調理方法なんて知らないし、そもそも料理が出来ない、する必要が無いオレにどうしろと? だから、生でも食えれば魔力は回復するんじゃないか? 知らんけど。
オレの言葉に促され、恐る恐るマンドレイクを一口齧る小妖精。
「ウボァー」
やはり、小妖精でも無理だったか。コレを常食にしていた熊鬼族の変態は一体何だったんだろうな。
小妖精の顔は真っ青且つ白目を剥き気絶している。口中にマンドレイクの欠片がまだあるのを確認し、顎を抑えつけ無理矢理飲み込ませた。
「ゴフッ」
小妖精はビクビクと痙攣しているが、辛うじて生きているようだし暫くは大丈夫だろう。
オレは小妖精の片脚を持ち逆さ吊りにする。ブラブラと両腕と頭が揺れているが覚醒める様子は無い。仕方ないのでそのまま持っていくことにした。
「それを連れて行くでありますか?」
このまま意識が無いまま放置したら獣に食われるかもしれないだろ。
コイツの事は、はっきり言ってどうでもいいんだが、それをされるとオレの目覚めが悪い。そんな訳で、意識を取り戻すまでは面倒を見ようと思ってな。
「それなら、そんな劇物を食べさせなければ良かったのでは?」
もしかしたら、妖精種ならイケるかもしれないだろ。まぁ、案の定ダメだったけど。
マンドレイクという植物は、魔力が豊富に含まれる個体ほど苦味エグミが増し不味くなっていくらしい。魔力を食べるらしい小妖精ならば、マンドレイクを食べなくともそのまま魔力を吸えるのかもしれないと思ったのだが、やはり食べなければならないらしい。………チッ。実験は失敗だったか。
小妖精の身体は思った以上に軽い。これだけ軽ければ頭が弱いのも頷けるな。
オレは小妖精を肩に担ぎながら先へと進む。TYPE_R_03のお陰で、妖精が襲い掛かって来る事もなく順調に進んで行った。時折、妖精の悲鳴を聞きながら。




