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この星の上でなら、大体何でも出来るであろうTYPE_R_03に色々と任せる事になった。
「では、ここら一帯の魔力を根刮ぎ吸収するであります」
その言葉と共に、見えない何かがTYPE_R_03へと吸い込まれていく。空気中に漂っている魔力を吸収しているんだと思うが、魔力自体が見える訳ではないため、パッと見だと何しているのか分からんな。
視界の端で何かが地面に落ちる。下を見るとさっきまで喧しく騒いでいた小妖精が地面に這いつくばっていた。何だ? 何してるんだ?
「何か飛べなくなったんだけど!?」
「小妖精は浮遊するために外部魔力に干渉しているであります。周囲一帯の魔力を某が吸い取ったため、浮遊する事が出来なくなったのであります。自身の魔力を使っていれば、地に落ちる事は無かったというのに………であります」
浮遊魔法か………。確かに、あの小さい翅で、しこも羽ばたく事もせずに浮いているからおかしいとは思っていたんだよな。………ん? という事はあの翅って飾りなのか?
「小妖精の身体を浮かせるためだけなら、翅は必要ではないであります。浮遊魔法を使用するために翅があると、魔法のイメージがし易いとか何とか、そういう説もあるであります」
丁度ここに飛べなくなった小妖精が居るんだし、コイツに聞いてみるか。そこら辺どうなの?っと。
「翅? 私にそんなモノ付いてるの? えー、うそー、知らなかった!! でも、飛ぶのに必要無いなら抜いてもいいって事!? 虫みたいで可愛くないし!!」
まさかの小妖精自身が知らなかった件。それと、可愛くないという理由で翅を引き抜くのは止めておけ。絶対にそれが原因で浮遊出来なくなるぞ。
本来ならば、大挙して押し寄せて来る筈の妖精が全く来ないという事は、TYPE_R_03の作戦は成功したのだろう。小妖精は飛べなくなったが、妖精の邪魔が入らないというのはとても良い。これからも、これで進むとするか。
小妖精は飛べないため歩いていくようだ。しかし、その歩幅は大分狭い。普人族の子供サイズ程度しか無いから当たり前ではあるが、オレ達の歩く速度に追い付けなくなってくる。
「ちょっと!! 待ってよ!! そもそも、私が魔法使えなくなったのはそっちのせいなんだから、乗せてくれてもいいんじゃないの!?」
お前が浮遊魔法を使えなくなったのは、オレ達ではなく妖精のせいだ。文句は全て向こうに言ってくれ。
そもそも、道案内役であるお前が防波堤になって、オレ達を妖精の脅威から守るのが普通じゃないのか。
そんなため、苦情は受け付けません。そもそも、道案内役も必要という訳ではないんだし。嫌なら帰ってもいいんだぞ。
「じゃあ、トワの魔力を寄越しなさいよね!! 約束通り報酬を貰わないとね!!」
そういえば、そういう話だった。まぁ、あの時はいざとなったら始末すればいいとか思っていたからな。
コイツの働きは、はっきり言って微妙過ぎて居なくても良かった感があるが、報酬は払っておかないな。それを無かった事にするのは仁義に悖る気がする。
「あぁ、それはいいんだが、魔力ってどうやって渡すんだ?」
魔力譲渡とかいう技能でもあるんだろうか。オレは修めてないけど。
オレの近くに居た小妖精がオレの脚に齧り付いてくる。痛覚が無いからよく分からんが、コイツは一体何をしてるんだ?
アリスは暫くゴリゴリと骨を齧った後、何処か諦めたように口を離す。
「うーん、普通ならこうやって相手の身体から直接吸い取れるんだけど。肉も血も無い骨だと上手くいかないというか、魔力が吸えないというか」
つまり、普段は生物の肉やら血を食っているって事か? それ、魔力ではなく肉を食っているのでは? 危ねぇ………。やはり、魔力と言いつつも生命力を奪ってくるような奴だったか。
「肉なんて食べないよ!! ちょっと血液に含まれる魔力を吸ってるだけだよ!!」
吸血鬼の食事方法と同じじゃねぇか。向こうは血液から魔力を吸ってるのかは知らんが。
この世界の小妖精は吸血鬼の親戚だったとはな。つまり、ゾンビーフ氏も一歩間違ったら小妖精になる可能性が? いや、不死者だからそれは無いか。
「トワからは魔力吸えないっぽいから、そっちの黒い奴の魔力でもいい?」
「吸えるものなら吸ってみろであります。ただし、某の血肉を啜ったら、内包する過剰な力に耐えられず全身から血を吹き出しながら身体が爆発四散して死ぬであります。それでいいのならやってみやがれであります」
血肉といっても、TYPE_R_03は不定形生物だからな。しかし、身体は不定形生物でも、コイツは世界最強クラスの生物兵器だ。さっきのは冗談なのかもしれないが、そこらの木端小妖精が吸血したらどうなるかなんて分からない。
「や、止めておく………。私もまだ命が惜しいし」
TYPE_R_03の威嚇が効いたのか、小妖精はドン引きしたように離れていった。
明日から世界が終末を迎えるらしいので、土日更新しないかもしれない。




