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二、三度ある事は四度目どころか五度目もあるようで、あれから何度も遭遇した。大体は妖精種からの干渉だったが、妖精種以外の幻術を使う系の生物からのモノもあった。
まぁ、それら道案内役の小妖精が解除したり、TYPE_R_03が即殺したりで問題なく進んで行けた。………しかし、この森、妨害多過ぎでは?
「こからの地帯は妖精種が多いからね!! それに、妖精は仲間が殺られると挙って仇を取りに集まってくるから、必然的に妨害が多くなるんだよね!! だから、相手をするのが面倒臭い妖精は基本的にスルー推奨だよ!!」
その情報、今更過ぎないか?
しかし、仇討ちに来たのなら、普通は集団で襲いに来るモンじゃないのか?
何でわざわざ空間転移で足止めとか煩わしい真似をするんだ?
「妖精共は生物ではなく、現象でありますからね。対象が一番嫌がる事を読み取って、その通りの行動を取っているに過ぎないであります。つまり、今はトワ殿の散歩の足取りを重くするのが一番の嫌がらせという事であります」
………やはり、妖精はこの世から抹殺した方が良いのではないだろうか。百害あって一利と無い種族だぞ。
「残念ながら、妖精はこの世界の理に組み込まれてしまった現象なので、世界の管理者クラスでないと排除は難しいであります。………ところで、トワ殿は妖精共に対する当たりがやたらと強いでありますが、何かあったのであります? いや、何もないヒトの方が少ないでありますが」
鬱陶しいのに絡まれ、悩まされた経験しか無いな。その時は、TYPE_R_05が何とかしてくれたので、それ以降は特に何も無かったが。
しかし、あの虚言と暴言でひたすら罵倒してくるのは如何なモノか。争いを好まない温厚なオレでもブチ切れ不可避だったぞ。
「なになに? 妖精ってそんな感じに思われてるの? 別の種族だけど、同じ妖精と呼ばれるのが不快になるくらいね」
言っておくが、小妖精も同じようなモンだからな。現に、今のオレ達は全く役に立たないお前をどう処理しようか考えている。
「何でよ!! 言っとくけど、私が同行してなかったら、もっと酷い事になってたからね!! 妖精はどうしようもないけど、小妖精からの手出しは大分減ってるんだからね!!」
まぁ、確かに“オレ達の邪魔をする”という妖精は兎も角、小妖精との遭遇率は少ない。しかも、遭遇した奴は返り討ちにして喰われている。
そう考えると、コイツって割と有能なのでは? とりあえず、ドヤ顔しているのがムカつくので後で絞める。
「あっ、ヤバい」
ヤバい? 何が?
何か見てはいけないモノを見たように、顔を引き攣らせるアリス。だから、何がヤバいんだ?
「トワ殿、どうやら妖精共が手法を変えてきたようであります。妖精共がそこらの巨木の中に入って? なるほど?」
周囲に聳え立っている巨木がザワザワとさざめきだす。枝や葉が擦れる音と一緒に笑い声が聞こえる気がするんだが、何が起こっているんだ?
「妖精が大量に樹木に入って妖樹精になったようであります。周囲の巨木が一斉に、であります」
妖精って、他の生物に取り憑くなんて芸当が出来るのか。
しかし、巨大な妖樹精に囲まれたと言っても何か問題でもあるのか? いつも通り、TYPE_R_03の理不尽クラスの暴力で更地にすればいいんじゃないのかと思わんでもないが。
「そうすると、恐らく妖精共は今後同じ手法を使って物量で攻めてくるでありますね。某が逐一迎撃しても良いでありますが、この森が荒野になるであります。トワ殿はそれで良いであります?」
良くないです。………なるほど。妖精はオレの良心に突け込んで来ていると。小賢しい真似をするじゃないか。
いっその事、全てを焼き払った方がいいんじゃないか? いや、流石にそれはやり過ぎか。この森には妖精以外にも多様な種族が棲息しているらしいし、妖精を処理するためだけに彼等の住処を奪うのは………まぁ、どうでもいいんだが。
「で? どうしたらいいんだ?」
「一番楽な道は一帯を更地にする事であります。某達の邪魔をしてくる妖精と一緒に将来的に邪魔をしてくるかもしれない有象無象を殲滅するであります」
やはり試されているのはオレの良心か。悩んでいても仕方ない。現に妖樹精達は、ブンブンと枝を振り回して素振りしている。
よーし、TYPE_R_03よ、やっておしまいなさい。
「了解であります」
その一言と共に周囲の巨木が宙に浮いた。ついでに、輪切りにされてドコドコと落ちてくる。オレ達の周囲に居た妖樹精は全て輪切りにされて全滅したようだ。相変わらずTYPE_R_03が何をしたのかは分からないが、一応の危機は脱したようだ。まぁ、これからまた妖精共が大挙して襲って来るんだろうなぁ。
「そういえば、同じ妖精種なんだし、小妖精は妖精と交渉出来ないのか? こちらを襲わないようにさせるとか」
「それは無理!! だって、アイツ等話通じないからね!!」
アリスに力一杯否定されてしまった。まぁ、そうだよな。オレもダメ元で聞いたからな。
「妖精種が多く棲息しているのは、魔力が豊富な場所であります。この森の外縁部まで行けば妖精種は少ないと思うでありますが。………何らかの形でここら一帯の魔力を枯渇させる事が出来れば、妖精は自らの存在強度を保てなくなり死滅するであります。因みに、某は魔力を空間から抽出する事が出来るであります」
「魔力が枯渇………砂漠化させるって事? そんなの、トワが許しても私が許さないよ!!」
いや、お前の意見とかどうでもいいから。
しかし、魔力を枯渇させると言ったって、どうやるんだ? TYPE_R_03が土地の魔力を吸い出すとか? それこそ、オレの身体に引っ付いてくる羽虫の言う通り、砂漠化しかねないのでは?
「そこのゴミは勘違いしているようでありますが、魔力の寡多は土地の豊かさには特に関係ないであります。寧ろ、魔力が多い土地はそれなりに強い奴が集まりやすいため、荒れやすいであります」
なるほど。つまり、魔力を吸い取ってもこの森に大して影響は出ないという事だな。
「いえ、この森に棲む生き物は軒並み影響を受けるであります。魔法を使う生物は自身に蓄えた魔力以外にも周囲の空間にある魔力を使う事があるでありますが、これが無くなる事で魔法自体使えなくなる恐れがあるであります。まぁ、トワ殿には関係ないでありますが」
それは、オレの使う魔法はたかが知れているという事か? まぁ、確かに今のオレは魔法自体を使えないんだが。
山谷話を投稿し始めてから、今日で丁度2周年。
★評価といいねブクマ宜しくお願いします。
平和的に森を抜けるつもりだったのに、何故かジェノサイド方面へと走るトワさん。全ては妖精のせい。




