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未だ穴が各所に空いている小妖精の処遇は一旦置いておくとして。オレが足止めされていたのはコイツで間違いないのだろうか。事と次第によっては、二度目の串刺し刑も有り得るとだけ言っておこう。
「だからゴメンって。まぁ、確かに? アンタ達を道に迷わせていたのは私だけど? 生きるために必要なんだから仕方ないじゃない!!」
道に迷わせる事が捕食行動に繋がるのか? 何で?
「妖精は生物を道に迷わせ衰弱させて弱った所に集って生命力を吸い出すのが手口であります。小妖精も似たような生態であります」
なるほどな。ところで、こちらは骸骨兵の旅人と最強兵器なんだけど、どう思う? 道に迷った程度で衰弱死しそうにないが?
「小妖精等は見た目通り、知能が低い種族であります。罠に嵌める種族を選んでいる訳ではなく、適当に決めているのであります」
「ちょっと!! そんな訳ないでしょ!! それに、私は衰弱させるとかないから!! 命を奪うなんて野蛮な真似する訳ないでしょ!!」
さっき生きるために必要な事って言ってたじゃねぇか。衰弱狙いでないのなら、わざわざ道に迷わせる意味は何なんだよ。
「道に迷って途方に暮れた奴に交渉して、外に出す代わりに魔力を要求するのよ。みんな、助かったと思って私に感謝してくれるのよ? チョロいと思わない?」
つまり、マッチポンプという事か。自分で罠に嵌めた癖に、恩着せがましく代償を要求するのか。何て奴だ。やはり生かしてはおけないな。
「何でよ!! 命を取る訳じゃないからいいでしょ!!」
まぁ、つまり、さっきの道を堂々巡りしていた状況は解消された訳だ。しかも、それの原因が目の前に居る小妖精だという事だ。TYPE_R_03が言っていたような、“この先に進ませたくない誰か”がやっている訳ではないらしい。
「え? 何? アンタ達、この森の先に行きたいの? 私が言うのも何だけど、ここは小妖精が結構居る森よ? 止めておいた方がいいんじゃない? 犠牲になりそうな小妖精のためにも」
小妖精等の事なんて、どうでもいいんだよ。
しかし、邪魔をしてきそうな小妖精が、コイツの他にも結構居るのか。オレの経験上、妖精種に好きにさせると碌な状況にならない。森の環境とか度外視して、TYPE_R_03の力を全面的に出して行こうかな。その方が面倒が無い。まぁ、もしかしたら、その余波で森からあぶれた生物が何処で迷惑を掛けるかもしれないが、オレにはどうしようもない。
そう、全ては妖精が悪いのだ。オレは悪くない。
「しょうがないから、私が道案内してあげる!! お代にそれなりの魔力を貰うけどね!!」
え、要らない。
穴だらけだった全身が、ほぼ修復し終わった小妖精が道案内役を提案してくる。この森に棲息しているだけあって、この森について詳しいのだろう。それに、小妖精は同族には干渉してこないようで、コイツを連れているだけで小妖精はほぼ無視出来るらしい。
鬱陶しい小妖精にちょっかいを掛けられないのなら、それなりにメリットがあるかもしれないが、煩いのが付いてくるってのがなぁ………。
それに、代金の代わりに魔力を寄越せか。まぁ、オレは魔力なんてほぼ使わないからいいんだが、それが生命力だった場合は死にかねない。妖精種は基本的に嘘吐き………ヒトを騙す事に戸惑いが無い。魔力と言っておいて、生命力だった場合はどうなるか分からない。
「トワ殿、いいんじゃないでありますか? 面倒になったら黙らせればいいでありますし」
オレよりも反対派だと思っていたTYPE_R_03は、小妖精を雇う事に賛成らしい。確かに、TYPE_R_03が言うように小妖精を始末する事自体は大した事はない。………まぁ、つまりは、ちょっと試してみて、使えそうだったら生かしておいて、懸念通り使えなかったらそれまでという事でいいか。
「オッケー!! アンタはトワって名前ね!! 私はアリス!! これからヨロシク!!」
小妖精改めアリスが仲間(仮)になった。お前は同族である小妖精の風除けとして雇ったのだ。もし、それが嘘だった場合は………分かってるな? TYPE_R_03が、こうだぞ?
「分かってるって!! 私に任せなさい!!」
羽虫………アリスの無意味に自信満々な返答。………正直、不安だ。何しろ、妖精種は嘘吐きが多い。大事な事なので二回言いました。
今回のバチコン楽しすぎか




