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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 長い洞窟を抜けた先はとても海中とは思えない見事な花畑でした。

 え?本当にここ海中だよな? もしかして、ヒラメ氏に担がれてる? いや、魚人が居るんだから海中で間違いないか。でも、明らかにこの風景がおかしいんだよなぁ………。


「この花畑の先に海中拠点があるから、とりあえずそこまで案内するギョ」


 ヒラメ氏はオレを下ろすと、着いてこいとばかりに泳ぎだす。何やらこの先に拠点があると言っているが、ヒラメ氏のクランホームだろうか?

 花畑の先と言うから、てっきり花畑の中を進んでいくのかと思われたが、地に足を付けて歩く種族用の道があるようだ。色とりどりの石が等間隔に敷き詰められた綺麗な道だ。これもプレイヤーが作ったのだろうか。

 道を進んでいると奇妙な光景が目に入る。大きな泡で頭部をすっぽりと覆った者達がそこかしこに散見される。ヒトガタだったり、四足だったりと統一性が無い。


「あれは、ここに辿り着いたはいいけれど、水圧耐性を持っていないプレイヤーなんだギョ。鰓呼吸スキルも持ってないから、ああやって酸素を確保しながら街の外に出て水圧耐性を生やそうと頑張ってるんだギョ」


 なるほど。オレのように呼吸不要ではないから、空気の泡で酸素を確保している訳だな。どうやって泡を頭部に固定しているかは分からないが、アレがあれば溺死せずに済む訳か。


「そういえば、オレも水圧耐性って持ってないんですけど………。特に不調は感じないですね」


「トワさんは肉体が無いから水圧を感じ難くなってるだけだギョ。ステータスを見ればLPの上限が減ってる筈ギョ」


 そういえば、ステータス見てなかったな。LP上限が削れるという事は部位欠損状態のようなものなのか。


 ******


 プレイヤー名:トワ

 種族:骸骨兵(スケルトン)Lv.2

 LP(ライフポイント):10

 SP(スタミナポイント):86


 加圧状態


 ******


 思ったより減ってたわ。ヤベェな水圧。こんなんでよく死ななかったなオレ。


「水圧は身体の全身に掛かるから、その分LP減少値も多いギョ。海中散策するなら水圧耐性が無いと普通に死ぬギョ」


 これは、オレも水圧耐性生やさなきゃならんかもな。でも、あんな事で水圧耐性なんて生えるものなのか? 自然にスキルを生やすのはかなり大変だと聞いたが。彼等はどの位の時間を掛けているのだろうか。


「あー………。それで、あれで水圧耐性って生えるものなんですか?」


「物凄い時間掛かるけど、生えるらしいギョ。ボクは知らないけど、現に生えた奴が居るらしいギョ。でも、あんな事しないでも魚人に成った方が楽なんだギョ」


 わざわざ水圧耐性を取りに行かなくても魚人に転生した方が手っ取り早いって言うのは………まぁ、身も蓋もない事を言うと、その通りなんだが。魚人に成ったらなったで、今度は地上に戻れなくなるのではなかろうか。


「ここで頑張ってるのは、レイドボスに挑みに来たプレイヤーだけなんだギョ。………ここだけの話、水圧耐性のレベルが高くないとレイドボスの居る所には辿り着けないから、ここに居る奴等は参加資格が無いと言っても過言では無いギョ」


 流石に周囲に聞かせる事ではないと思ったのか、ヒラメ氏は身を寄せながらオレに囁く。

 ツィル氏から聞いた第六のレイドボスとやらはこの近くに居るらしい。魚人以外のプレイヤーが居ないっていうのはこういう事だったのか。でも、水圧と酸素さえどうにか出来たら行けるんじゃないか?魔法を使うなり、潜水服を着るなりすればレイドボスまで行けるのではないだろうか。でも、オレが思い付くような事は他のプレイヤーも試したのだろうし、有効ではなかったという事だろう。でもなきゃ、こんな所にこんなに多くのプレイヤーが居る訳ないからな。


「一時期、潜水服を着込んだプレイヤーがクラン単位で潜って行ったんギョが、身動きが取りにくい上に酸素補給係が真っ先に潰されて返り討ちに遭ったらしいギョ。その結果がアレなんだギョ」


 その言葉が聞こえたのか、数人のプレイヤーが睨んでくる。どうやら、返り討ちに遭った皆さんらしい。でも、あんな泡被ってるのに音が普通に聞こえるんだな。


「失言だったギョ。さぁ、さっさとこんな所は抜けて街に入るギョ」


 ヒラメ氏はギョロリと目を回して戯けたように言うと、気持ち早めに泳いで行く。オイ、オレを置いていくな。気不味いだろ。

 ヒラメ氏は数々の珊瑚で彩られた洞窟に入って行く。また洞窟か。あの洞窟の中がヒラメ氏のクランホームなのだろうか。

 洞窟の中は仄かな灯りで照らされおり、緩やかに下っているようだ。思った通りここが拠点への道のようで、道中何人かのプレイヤーと行き違う。生者と思われるプレイヤーは一様に泡を頭部に纏わせ、オレと同じくアンデッドプレイヤーは、何も着けないというのが何だか面白かった。

 仄暗い洞窟へと強い光が差し込んで来る。洞窟を抜けた先が拠点ようで、その手前にヒラメ氏が待っている。

 洞窟を抜けると、洞窟内にも関わらず太陽のような物が輝き、光が満ち溢れる場所だった。建物らしきものは珊瑚礁のように入り組んでおり、全容が伺い知れない。何より目に付くのは、通りを歩いているのプレイヤー達だ。外とは違い、頭に空気の泡を被っていない。もしかしてここは水中ではないのかと思ったが、ヒラメ氏がピンピンしているから水が無い訳ではなさそうだ。


「ここが、ボク達が解放した海中都市。その名も竜宮城だギョ」


「竜宮城?ここは、ヒラメさん達のプレイヤーホームなんですか?」


 オレの言葉にヒラメ氏は首………身体を傾げる。


「いや? プレイヤーホームじゃなくて、元々有ったけど遺棄されてた都市なんだギョ。それで、拠点として解放するためにみんなで必要素材を集めて回って、晴れて拠点として活用出来るようになったんだギョ。あ、竜宮城というのは通称なんだギョ。他の面子はアトランティスとかルルイエとか、各々自由に呼んでいるギョ」


 通称かよ。それにしても、遺棄された都市とはね。必要素材とやらが何かは分からないが、集めれば廃墟でも復活させる事で拠点として利用出来るのか。

 という事は、例のヒルトロール村も復活させれば、拠点として利用出来るのだろうか。でも、あそこはレイドボスの拠点になっている気がするんだよな。まぁ、ヘンシェル氏達に挑戦する奴が考えればいい問題だな。


「ここは一応ボク達のクランが解放したけど、ここを管理してるのはNPCなんだギョ。その設定で、この都市の中でなら自動的に“呼吸不要”と“水圧耐性”が付与されるギョ。外に出るための洞窟に入った時点で解除されるから要注意ギョ」


 ヒラメ氏の言葉通り、改めてステータスを確認するとオレにもその二つが付与されていた。オレのステータス欄に呼吸不要が二つあるのがウケる。

 道理で泡を付けない一般プレイヤーが魚人と連れ立って歩ける訳だ。その設定とやらが無ければ大分不便な事になっていただろう。誰が考えたのか知らないが、よく出来てるな。


何だか昨日のPVが恐ろしい事になってるが、何が有ったんだ…

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[一言] 水圧で死ぬと思ったのに生きてるだと!
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