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ログイン八十一回目。
次元口へ行く気分でも無いし、折角骸骨兵へと戻った事もあり、例の管理地………深森の朽館へと行ってみる事にした。ついでに、そこから遡って、熊鬼族の村や元トトリオの集落にでも行ってみるか。
この場所には良い思い出は無い。
ニル氏に人体実験された場所であるし、食うに困ってクソ不味いマンドラゴラを食べて死にかけた所でもある。………そういえば、ニル氏は今何処に居るんだろうな。是非見つけ出して、生のマンドラゴラを口に押し込みたい気分だ。
深森の朽館の見た目はボロい洋館だ。中身も同じくボロいんだが、一部………ニル氏の実験部屋だけまともな場所だ。ヘイルデン要塞と違って管理するモノが居ないため、いつまでも荒れ果てているままだ。ここを拠点として活用するのならば、オレ自身が手を入れるか誰かに管理を任せるかしないとならない。
「という訳で、ここの管理をやってくれないか?」
「寝言は寝て言えであります。あぁ、不死者は睡眠不要でありましたね。いくら某がこの星内であれば大体万能の超兵器であろうとも、家政婦の仕事はやりたくないであります。確かに分裂体に任せる事は可能でありますが、普通に本職のヒトに任せた方が良いであります」
まぁ、それはそうだよな。手持ちの人材で何とかしようとしてはいけない。ゾンビーフ氏のように、店番や管理人を雇うのが普通だろうな。
ただ、こんな場所に来てくれるヒトが居るのかが疑問だが。
この森はそこそこ危険な場所だ。ヒトが暮らす街から大分離れている上に、それなりに危険な獣が多く棲み着いている。
オレは不死者であるため、その危険な獣に襲われる事は少ないと思われるが、こんな所に来てくれるヒトが居るとしても、その種族は考慮しなくてはならないだろうな。
それこそTYPE機を配置ついでに管理してくれたらなぁと思ったんだが、嫌なら仕方ない。嫌嫌ながらやらせると、最悪な事態………館を破壊して逃亡………になりかねない。
とりあえず、住心地は兎も角として雨風や獣除けに使える事は確かだ。ボロさ具合はまだどうにも出来ないから、この事は懸念事項として覚えておくに留めておこう。
オレは世界地図を見ながら、以前来た道を逆に辿って行った。
以前は、強敵揃いの森の中を死んだふりを駆使しながら行った道だが、今は心強い護衛役がいる。“装備”している普段は気配を消しているTYPE_R_03だが、今は気配をバリバリに出して周囲を威嚇して貰っている。透明化する事も考えたんだが、この方が面倒が少ないと思った次第だ。
そういえば、あの時はデカい狼数頭に出会ったんだが、アイツ等はニル氏に付いて行ったのだろうか。まぁ、奴等に会いたい訳じゃないから、この森に居るとしても出て来なくていいんだが。
「こんな所、前はどうやって移動していたでありますか? 貧弱で軟弱なトワ殿が平穏無事にいられる訳ないであります」
それは、偉大なる“死んだふり”サンのお陰でありましてね。
それと、超持久力を頼りにした“透明化”と“隠蔽”コンボで移動し、本当にヤバくなったら“死んだふり”で窮地を逃れる。大体コレであらゆる全てを乗り切ってきた。但し、これを見破る奴も出て来たので、今回はTYPE_R_03の力を借りている訳だが。
この森を進むための技術はオレには無い。危険だろうが安全だろうが、オレの取る行動は一つだ。これがゲームを遊ぶ普通の旅人なら、徒党を組み大人数で移動したり戦闘したりで歩みを進めるんだろうな。隠密に特化した旅人なら、身を隠したりで進む方法もあるかもしれない。
ただ、オレにはどちらも無いしそれらの道に進む事もない。………いや、隠密プレイも楽しいかもしれないな。透明化も隠蔽も“光亡き者の外套”もあるし。
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WORLD ANNOUNCE
ワールドクエスト“大断裂”が次段階へと進みました。
岩窟の街“セイン”に発生した大断裂が抑制されました。岩窟の街“セイン”跡地の次元口は消失しました。今後、各地に発生した次元口を通じて異世界へ侵攻出来るようになりました。
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おや? 何か知らん間に“大断裂”クエストが進んでいた件。まぁ、オレは“大断裂”クエストを進めている訳ではないから仕方ないんだがな。
しかし、セイン跡地に在った次元口は無くなってしまったのか。今後は各地にある次元口を使う? あの次元口ってそんなにポコポコ空いているモノなのか?
他の星に行きたい時は、何処かの次元口を探すしかないんだな。まぁ、暫くは行かなくてもいいだろうがな。
トワさんの知らない所でなにやらクエストが進んでいたようだ。
GWが終わってしまった………。これからは大体一日更新(多分)に戻ります。




