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山と谷がある話  作者:
09.大断裂
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 あれから幾つかのエリアを解放した。ついでに観光名所も聞き出し、そこへ行ってみたりもした。

 そんな訳でオレは、現状のこの世界に概ね満足だ。因みに、これまでにもアブダクション(処理)されたのを何回か見た。恐らくアレ等も旅人(プレイヤー)なのだろう。こんな事なら、あの男の話を聞いてみても良かったかもな。

 今のオレは駅を巡る中で出会った、あの世界(ゲーム)旅人(プレイヤー)と行動を共にしている。そう、ダーマ氏だ。山小屋はいいのだろうか。

 ダーマ氏の姿は普人族(ヒュム)………ではなく、人間になっている。この世界には蟲人(インセクトマン)は居ないようだな。


「トワさんは、何処か目的地でもあるのか?」


「何駅か前の現地人の方に“東京タワー跡地”や“東京スカイツリー跡地”が良いと聞きまして、そこへ行こうかと。それらは、以前この街のシンボルとして立っていたみたいですよ」


 どちらも跡地なのは、ほんの百年前に起きた“第四次世界大戦”の際にへし折られたから、らしい。

 今では周囲を公園として整備され、立体映像(ホログラム)として当時の姿を再現しているらしい。

 建設当時は、一番高い鉄塔として威容を誇ったらしいが、それも今は昔だ。今では、通常の建物が異様な高さを誇る。あんなに高く建てて何をするんだろうな。


「多分、人口が増えすぎたせいで、数多くの人間を収容するためにあんな事になってるんじゃねぇか?」


 なるほど。そういえば、第三次は兎も角、第四次では余り犠牲者は出なかったらしい。普通、戦争が起こったら人口って大幅に減るんじゃないのだろうか。


「ここの世界の“傷害行為は許さない”ってのは何なんだろうな。“犯罪行為は許さない”ってのは分かるが、何で傷害だけなんだろうな。人口が多過ぎるってのも、何か関係があるのか?」


 よく分からないです。オレの答えだと、人口が多過ぎるなら適当に減らせばいいじゃないと短絡的に考えてしまうが。

 ダーマ氏の言う通り、この世界の管理者()は“犯罪行為”を取り締まっている訳ではなく、“傷害行為”のみを取り締まっているようだ。その他の犯罪行為は、“警察”に相当するモノ達が動くようで、何かやらかした旅人(プレイヤー)が捕まる様子を何回か見掛けた。


『多分、“人間”の総数を増やす事が目的なのでは? だから、“人間”の生命を損なう行為である“傷害”は見逃さず、その他の“犯罪”には緩いんじゃないかと思うであります』


 “人間”の生命が何よりも大切だという事か。それにしては、“傷害”を犯した奴は容赦なく抹殺するし、世界大戦なんてモノを起こすしで一貫性が無いような気がするんだが。


『世界全体を管理するモノではなく、この地域を管理するモノがそういう趣向なんだと思うであります』


 なるほど? この世界には管理者が何体も居るという事か。それで、ここの地域は“人間を増やす”担当の管理者とか? 一体で世界運営を行っている訳ではないから、他の管理者と揉めたり衝突したりで不具合が起きるという、そんな感じかもしれない。知らんけど。

 まぁ、“人間の数を増やす”というのが主目的だとしても、現地人に見て見ぬ振りを強いるってのがよく分からないけどな。


「まぁ、あんまり住みたい世界じゃねぇってのは確かだな。山もねぇし」


 ダーマ氏は異世界でも山小屋を経営するつもりのようだ。そのために様々な異世界へ行って、適している世界を探しているとか。

 因みに、この世界の山々は平らに均されているらしい。この世界の管理者が何故そんな事をしたのかは分からないが、ダーマ氏はその話を聞いて落胆していた。住みたい世界じゃないってのは、その理由が大半だろうな。


 現地人に教えて貰った観光名所に行くためには、山手線以外の電車を使うらしいのだが、他の電車も追加された路線図が迷路過ぎて使うのを諦めた。ダーマ氏も電車をよく分かっていないようで、路線図を前にして固まっていた。………よく分からないから歩いて行こうという事になった。


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