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クオンのお陰でカネの心配をしなくて良くなったから、エリア解放をしに次の駅へさっさと行くか。
「あ、トワ様。戻るのなら兎も角、次の駅へ行くためには実績を解除しないとダメですよ」
実績? どういうモノを達成すればいいんだ? この認識阻害が掛かっているのを解除すればいいのか?
「実績はヒトそれぞれらしいので、コレっていうのは分かりません。私の時は、駅周辺の散策でした」
なるほど。そういえば、“渋谷”でも入る事の出来ないエリアが有った。隣の駅まで来たんだし、もしかしたら渋谷まで歩いて行けるかもしれないな。
『方角的には向こうでありますね。距離はそれ程離れてはいないであります』
TYPE_R_03の道案内の元、渋谷駅を目指して歩いている。今はまだ空気の壁のようなモノには出くわしていない。
やはり、渋谷の隣である■■駅に来た事によって、壁が解除されているのかもしれない。
様々な種族が練り歩く道を通り抜けていく。………しかし、この世界はどういう所なんだ? 生活している種族は、見た感じ普人族が多いようだが、オレのような不死者も居るらしい。種族的にはあの世界と変わらないようだが、未だに普人族と蜥蜴人以外の種族を見ないんだよな。不死者とか見さは以ての外だ。
「確かに、この星の種族は謎ですよね。トワ様は普人族と言っていますが、彼等は“人間”という種族らしいですよ? それに種族は人間のみで、他の種族のように見えるヒト達は仮装しているらしいです」
は? “人間”という種族以外居ない? それなら、何でオレの種族が骸骨兵ままなんだ?
それに、先程見かけた蜥蜴人は“人間”が仮装している姿? そんな馬鹿な。骨格の時点で既にヒトと違っていたぞ。
もしかしたら、この世界に住んでいる“人間”自体に、『この星には“人間”という種族以外存在しない』という認識阻害が掛かっているのかもしれない。それが、何のためかは知らないが。
暫くクオンと話しながら歩いていると、あっさり“渋谷”へ着いてしまった。途中で空気の壁のようなモノは感じなかったから、エリアが解放されているという事だろう。
「ぐえー。疲れましたぁ。あんな歩き詰めでトワ様は平気なんですか?」
オレには、持久力超強化という技能があるからな。それに、“歩き”程度では持久力はそれ程減らないだろう。それこそ、向こうでなら、もっと長い距離歩く事も有るだろう。
「これは気分の問題なんです。それに、地面が硬いから足が痛くなっちゃいますよ」
そう言われてもな。ここらの道は全て舗装されているためとても歩き易い。その反面、地面を蹴る反動が強いから上手い歩き方をしないと足を痛める。
しかし、不死者には痛覚が存在しないのでそれらを感じない。クオンは普人族なので痛みを感じるが。
「いえ、私は不死者にはしませんよ?」
そうなのか。この身体、結構色々と楽なんだけどな。不定形生物? 見た目がちょっと………。というより、オレの元々の身体に似ているのでやるつもりは無い。まぁ、向こうは液体なんだが。
再度渋谷駅に入り次の駅へ行く。今度は反対方向へと向かう事にした。駅名は■■■。やはり認識阻害で名前はよく分からない。
ところで、この世界の主な交通手段って電車なのか?
「“タクシー”と呼ばれる乗り物も利用出来るみたいですよ。勿論、それで解放していないエリアを抜ける事は出来ませんけど」
乗り物で見えない壁に当たると、乗り物だけが壁をすり抜け、旅人はその場に置いていかれるらしい。なんでも、その壁に当たった瞬間に乗り物が透明化し、乗っていた旅人を投げ出す形になるようだ。
「何かここの世界で、旅人が色々やらかしているらしいですよ。意識を失ったヒトが大勢居るのは、道端でログアウトしたヒト達のせいらしいですし。それと、“救急車”で運ばれた意識の無いヒトが途中で消えるというのが、未解放エリアに入ってしまったからというのもあります。だから、トワ様もログアウトする時は場所を選んで下さいね?」
道端でログアウトする奴なんて、オレ以外に居たのか。ほら、オレは死んだふりがあるからな。死んだふりをしておけば、安全にログアウト出来たんだ。
最近、それをやる事は全く無かったが、この世界ではそれは問題行動になるらしい。まぁ、ここまで歩いて来て、道端に死体が転がっているなんて事は無かったからな。
「トワ様、乗り場が違います」
何? あぁ、行き先が逆方向だから電車に乗る場所も違うのか。
乗り場にも路線図が貼ってある。
渋谷駅とさっき行った駅………“原宿”というらしい………は認識する事が出来るが、他の駅は相変わらず何て書いてあるのか不明なままだ。これも、エリアを解放していけば全部見えるようになるのだろうか。
そういえば、原宿はいつの間にか解放されていたな。やはり、オレの解放条件も“周囲を散策する事”だったのだろう。




