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山と谷がある話  作者:
09.大断裂
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 丁度良く現れたクオンに、オレの現状を伝えてみる。ここに■■(オレ)が来ないという事は、もしかして意識が無いのだろうか。


『え? ■■(トワ)様なんですか? 何でそんな姿に?』


 斯々然々。と言うかさっき言っただろ。聞いていなかったのか?


『なるほど? 次元口を通った先の異世界でのイレギュラーな事態によって、身体と魂が分離した? よく分からないですが、苦情入れておけばいいんですね?』


 バグ報告とクレームは大事。オレの場合は、とりあえずは戻って来る事が出来たが、マジで何も知らない一般枠だとそのまま詰みかねない事態だ。

 さて、これからどうしよう。とりあえず、この星のオレの意識は不在という事になっているらしい。

 状況整理するのが少々面倒臭いが、■■(オレ)の今の状態は、あの世界(ゲーム)に飛ばした意識()が、次元口を通って箱庭世界に行き、箱庭を脱出した所でTYPE_R_03の中に入り、箱庭管理者の好意によってオレの星(ここ)旅人(プレイヤー)である“トワ”として戻って来た訳だ。よく意味が分からないな。

 まぁ、今がいつかのような次元口から入ってきた不法侵入者の虐殺タイムじゃなくて本当に良かった。………その場合なら死に戻りするだろうからその方が良かったのか? いや、そうするとTYPE_R_03が死亡扱いになってしまう。


『とりあえず………どうします? 私が取り込んでみますか?』


 そうしてみてくれ。一応、オレの意識だけを取り込んで、TYPE_R_03の身体は残す感じでな。


『では、遠慮なく。えいっ』


 周囲から何かが押し寄せてきて、TYPE_R_03(オレ)の身体を圧迫する。少しだけ押されるような感触が有った後、オレ(トワ)の意識はクオンへと溶け込んだ。

 あとに残されたのは、意識()を無くしたTYPE_R_03の身体。オレが身体から出て行っても、奴の意識が戻る様子は無い。やはり、コレには意識()は搭載されておらず、抜け殻のような状態らしい。

 果たして、TYPE_R_03の意識()向こう(ゲーム)へと戻ったのだろうか。まぁ、大丈夫だろう。TYPE_R_03は、自身と同じ性能の分裂体を複数作る事が出来ると言っていた。

 あの世界(ゲーム)に存在するTYPE_R_03はここにあるコイツだけではない筈だ。まぁ、それだと全く同じ個体が複数存在するという事だが、その辺りの処理ってどうなってるんだろうな。余り深く考えてはいけない。


『うまくいったようですね。まぁ、仮に“トワ様“が死んでも、代わりはいっぱい居るんですけどね』


 そもそも、この星全体が■■(オレ)だからな。別世界に出かけた個体が、何処ぞで野垂れ死にした所でどうにかなる訳ではない。死んだ個体の情報も、時間は掛かるが探し出して復旧(サルベージ)出来るしな。

 これで、オレ自身の問題はどうにかなった。意識無く、(オレ)の中に浮いているTYPE_R_03はこのままの状態を保つように保存しておこう。万が一にでも(オレ)に溶けて消えないようにな。


 次は、あの世界(ゲーム)にログインして、TYPE_R_03の様子とオレの状態を確認しに行くか。その前に、運営神()に苦情とバグ報告を入れておいた。………まぁ、アレはバグと言うよりかは、予期しない仕様だとは思うが。



******



 ログイン八十回目。


 ログインした先は、イチバンにある私室だった。

 周りには誰も居ない。オレの身体にTYPE_R_03が“装備”されている様子も無い。………やはり、オレの星に置いてきたのがそうだったんだな。

 暫くして、オレの私室として充てがわれた部屋の扉が開く。そこに立っていたのは黒一色の骸骨兵(スケルトン)。見た目が若干プルプルしているので、オレの姿を真似したTYPE_R_03だろう。


「トワ殿、戻って来たでありますね? いやぁ、(それがし)にもよく分からないでありますが、トワ殿と一緒に行った身体がここではない場所に在るようであります。その件について、トワ殿は何か知っているでありますか?」


 TYPE_R_03が意識を失っていた間の事を斯々然々と説明しておく。やはりと言うか、コイツには自分の身体が何処に在るのか把握しているようだな。置いてきたあの身体には意識があるようには思えなかったが、どうなっているんだろうか。


「某の身体はトワ殿の故郷に在るのであります? しかも、意識が無い状態で? うーん、確かに目茶苦茶遠い場所っぽいでありますね。身体信号は受け取れるのでありますが、応答が無いのはそういう事でありますか」


 オレの星に置き去りにしてきた、あの身体はどうすればいいんだろうな。回収するにしても、TYPE_R_03自身が向こうに行かないとだし、向こうへ繋がる次元口は無理矢理閉じたしで、現状手立ては無いんじゃないか?


「仕方ないでありますね。まぁ、某の身体はほぼ無限でありますので、意識の無い個体が遠い星に置き去りにされているとしても、特に問題は無いであります。ただ、そこで住むトワ殿が気にならなければ、放置でいいであります」


 一応、劣化及び吸収されないように保存はしている。いつになるかは分からないが、いつか受け取りに来いよ。


 TYPE_R_03の無事も確認出来た事だし、次なる場所へと行くか。最近は、次元口を使って他の星に遊びに行っていたのだが、例の人形氏の話を聞いてどうしようか少し迷う。

 オレはただ、現実にある星を舞台にした遊戯(ゲーム)を遊んでいただけなのに、運営()の思惑にまんまと乗る形だったとはな。………まぁ、それ自体には特に思う所は無いんだが。


 よし。次元口に乗るのは次で最後にしよう。あとはこの星(ゲーム)の攻略を進めないとな。


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしてソラリスの海と似てる存在だったりしない?
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