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ログイン七十九回目。
オレは次元口内の待機場所で悩んでいた。今回もランダムな星に行くか、行った事のある星へ再度行ってみるか、だ。勿論、“オレの星”と“水の星”以外で。
“水の星”でエレイン氏の去り際の言葉だが、どうやらオレの話を聞いた後、他の事情通の人魚に話を聞いたらしい。そして、自身も今後、あの世界に参加するつもりのようだ。どういう接続方法しているのか知らないが、そんな文明が残っているのだろうか。
それは兎も角やはり、あの星の旅人は人魚だったんだな。良かった。魚人じゃなくて。いや、別のに種族差別をするつもりは無いんだが、彼等には知性というモノを感じられなかったからな………。
今回は、ランダムな星に行く事にした。恐らく初めて行く星なので自分都合で帰る事は出来ないが、面白そうな星だといいな。
次元口から出た先は真っ暗闇だった。頭上には無数の星が瞬いている。周囲に明かりが全く無いお陰で星々がよく見えるのだが、ここは一体何処なのだろうか。見た所、木々が生い茂った林の中っぽいのだが、山の中だったりしないよな?
『おや? トワ殿の身体は珍しく骸骨のままでありますよ?』
オレの種族が骸骨兵のままという事は、この星にも骸骨兵が居るという事だ。別の種族に変わらなくて良かったというべきだが、どういう種族が居るのか気になるところだ。
『因みに姿はこんな感じであります』
TYPE_R_03に映し出されたのは、黒っぽい骸骨兵。いや、ちょっと待て。これオレの身体じゃないぞ? オレの身体は微発光している身体だった筈だ。日差しの下では目立たないが、この暗闇ならば相当目立つ筈だ。しかし、今はそれは無く。寧ろ、暗闇のような黒だ。
つまり、現地の骸骨兵に身体が変換されているのか?
TYPE_R_03と話しながら、周囲を散策していると広い道らしきところに出た。それなりには使っているのだろうが、道には雑草が生い茂っているし、ヒト通りは余り無さそうだな。
折角だから道なりに歩いていると、前方に明かりがぼんやりと見える。揺らめき方を見るに、どうやらこちらへ向かって来ている様子だ。アレは現地のヒトだろうか? 少なくとも、言葉や意思の疎通が出来ると良いのだが。
近付いて来るのは、骸骨だった。しかも、骸骨の動物に乗っている。何で足音しないんだと思ったら、そもそも足が無く宙に浮いているようだ。何だコレ。
「こんばんは。良い夜ですね」
とりあえず、相手に話し掛けてみる。挨拶は基本。
「こんばんは。違ったら申し訳ないですが………もしかして、向こうの世界のヒトですか?」
既にバレてる件。ゲームの事情を知っているという事は、このヒトも旅人なのだろうな。それにしても、何故分かったのだろうか。
「この世界では、挨拶の定型句がありまして、皆それに則って挨拶を行っているのですよ。つまり、それに外れた挨拶をしているのは他の世界から来た方、という事ですね」
なるほど。挨拶の時点で現地民ではないとバレてしまったようだ。しかし、何だその定型句って。
「ここは常闇の世界。常時、陽の上らない世界です。一応、時間の概念はまだ残っているので朝昼夜として区切りはあるのですが、時間毎の挨拶は使いませんね」
常闇の星という事か。でも、陽が上らないのは極夜というんじゃないのか?
「ここは閉じられた世界ですので、陽に相当するモノが既に無いのですよ。昔は在ったらしいのですが、寿命を迎え消失したとか」
箱庭? 星じゃないのか? つまり、この世界は誰か上位存在が管理する箱庭の中の世界という事か?
「その認識で間違ってはいません。ついでに言うと、この世界には不死者しか居ません。いえ、皆が不死者になったという方が正しいですね。この世界を管理している方によって、この姿に変えられたのです」
なるほど? 目の前のヒトは穏やかに話しているが、自身の種族を勝手に変えられる………しかも、生者から死者に強制的に変えられてどういう心境なんだろうな。
上位存在には太刀打ち出来ないという面もあるんだろうが、そいつの好き勝手にされるのは堪らない筈だ。
「この世界を管理している方は横暴ではないですよ? この姿は私達がそう望んだからです。何しろ、陽の光を亡くした事で飢え、狂い、死が蔓延ったのです。それならばと、この世界で存在し続けるために不死者として生きる事を決めたのです」
この世界の管理者はその願いを受け取り、箱庭に居る生物を不死者にしたと。
「まぁ、そんな訳で、あの世界では、成る種族に生者を選択する方が多いですね」
多いと言える程、多くのヒトがゲームやってるのかよ。




