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「う? うわあぁあああぁ!! 何だお前! 誰だお前! え!? 何!? ドッキリ?」
例の旅人の前でログインするのを待っていると、突然聞こえてきた叫び。目の前に居る魚人は手に持った銛をオレに向けている。若干手が震えているようだが、大丈夫か?
「驚かせてすみません。オレですよ。以前ここで会ったトワって奴です」
「あ? ああ。そういえば会ったな。ここの魚人の色じゃない黒だったから、アンタだって直ぐ分かったぜ」
直ぐにオレの事を分かったのならば、先程の叫びは何だったんだ。それよりも、魚人の色じゃない? どういう事だ?
『某が纏わり付いているからであります?』
なるほど。目の前の旅人の体色は緑がかった蒼だ。普通の魚人の色はコレなのかもな。
「またここに来たって事は、アンタも遺跡群の調査に駆り出されたんだろ? なら、さっさと始めようぜ。俺もここ二、三日ログインしてなかったからよ。あ、アンタ以外にプレイヤーって居るのか? 居ない? あぁ、そう」
彼はオレが遺跡調査の追加員だと思っているようだが、オレは魚人からの依頼を受けていない。まぁ、実際に依頼を受ける必要があるのかと言われたら無いんだけど。
何故ならこの星は、あの世界ではない。まぁ、でも現地の魚人の話を聞くのは割と重要だとは思うが。
「は? 依頼を受注してない? アンタ、依頼も無しに、ここに何しに来たんだよ。魚人の居場所? はぁ。仕方ねぇ。案内してやるよ。それと、パーティ登録もしとこうぜ。そうすりゃあ情報共有も容易いだろうし一石二鳥だぜ?」
親切な旅人氏に魚人の所へ案内して貰う事になった。
………ところで、名前まだ聞いてないな。
「俺の名前? あー、言ってなかったか? あー、言ったよな? 聞いてない? あー、そう。んー、あー、まぁいいか。俺の名前は、あー、笑うなよ? エターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロードだ」
なるほど。長い名前だな。
「え!? それだけ!? もっと、こう、何かリアクション取れよ!! こっちは受け狙いでやってんだよ!! 笑うなよってのはフリだよ!! 分かれ!!」
そんな事を言われてもな。
蒐集した文明にそういうモノが在ったのは知っている。何でも何処かの世界の最強必殺技だったとか何とか。オレが知っているモノよりも若干長い気がするが、娯楽の名前を付けるという事はそれが好きって事なんだろう。“受け狙い”ってのはよく分からないが。
それで、エターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロード氏………長いな。何処かをもじって略称にした方が良いかと思うんだが、ヒトの名前を勝手に略して呼ぶのもな。
「俺の名前? 好きに呼べよ。まぁ、いつもは、最初と最後の文字を取ってエドって言ってるけどな」
エターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロード氏改めエド氏の先導で魚人の居住地を目指す。あの遺跡群からは少し遠いようで、それが理由なのかは分からないが、現地の魚人は遺跡群には来ないらしい。
それとなく魚人が来ないのは不自然じゃないのかと聞いたが、『NPCはそんなモンだろ』と返されてしまった。………エド氏は、あの世界でどういう生活を送っているのだろうか。
「そういえば、エドさんは向こうでも魚人なんですか?」
「あぁ、そうだよ。海に眠るお宝を探すのを主目的にしている“海の牙”っていうクランに所属しているんだ。他のクランメンバーはまだこっちには来ていないみたいだけどな」
“海の牙”ねぇ………。確かカイリ氏が率いる“海の呼び声”を一方的に敵視しているとか何とか。
「まぁ、俺は魚人じゃなくて半魚人なんだが。前は魚人だったんだけど、カッコ悪かったから半魚人になったんだよな。クランマスターは魚人のままだけど。………知ってるか? 魚人ってあの見た目で人類枠らしいぜ? モンスター枠である半魚人の方がよっぽどヒトに近い見た目してんのによ」
魚人のクランマスター………。そういえば、それらしき奴を見た事があるな。まぁ、今は関係ないけど。
しかし、あの世界の魚人って人類種だったのか。どう考えても魚が主体なのに? あの世界の運営のセンスが分からん。
エド氏と同じクランである“海の牙”の面子がこちらに来るのは兎も角、カイリ氏やヒラメ氏のような“海の呼び声”面子が来たらどうなるんだろうな。カイリ氏達は気にしていないらしいが、エド氏が騒ぎ出すかもしれない。もしそうなったとしても、あの世界とは違うのだから、お互い仲良くして欲しいモノだが。
「そういうトワも魚人だったのか? 俺のクランじゃねぇってのは分かるが、何処かに所属してんのか?」
「いえ、オレは骸骨兵ですよ。それと、何処にも所属していないですね。まぁ、オレが未だに二番目の街で足踏みしているってのもあるんですが」
あの世界の進行度が上がったら、もしかしたら何処かのクランなり何なりに所属するかもな。今の所その予定は無いが。
「その二番目の街なんて俺も行った事無いぜ? まぁ、陸上の大手クランは王都とかの大きな街に集まってるんだろうな」
エド氏が所属する“海の牙”は、魚人を始めとした水棲種族の他にも陸上の種族等も居るらしい。地上班と海中班で分かれて海洋浪漫を探しているとか何とか。まぁ、クランメンバーの中には浪漫や夢ではなく、即物的にカネを求めてなんてのも居るらしい。
結構前に、海底に旧時代の施設を発見し探索してみるも施設に巣食っていたモンスターに襲われクラン全滅した、なんて事もあったようだ。
何か何処かで聞いた………いや、見たような話だな。
エターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロード君の名前はもっと厨二的でカッコイイ単語を並べるつもりでしたが、私の語彙力が貧弱なせいでエターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロードというショボめな名前になりました。ゴメンよ。エターナルバーニングフォースダークネスブリザードコズミックガルガンチュアマキシマムビッグバンケイオスロード君。




