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どうやらお邪魔なようなので、エレイン氏の研究施設を後にした。ダメ元で人魚が居る場所を聞いてみたが、やはり教えてはくれなかった。当たり前か。
しかし、人魚に遭ったら問答無用で攻撃されるから注意しろとの忠告を貰った。オレ自身を信用してはいないが、忠告を与えるだけの好感度はあるらしい。
そんな訳で、エレイン氏から教えて貰った観光名所に行こうかと思ったんだが、この星の魚人の生態を聞いた後だとな………。
いや、今は一方的に人魚側の言い分を聞いただけだ。公平性を期すためにも、次は魚人側の話を聞きに行くべきではなかろうか。丁度、オレの身体は魚人だし、敵対している人魚よりかは話を通しやすいだろう。
とりあえず、例の遺跡群を目指す事にした。現地民に会えなくとも、遺跡調査している旅人が居るだろうと踏んでだ。
ここから真っ直ぐ行くような真似はしない。エレイン氏は魚人を警戒しているようだし、万が一にでもこの場所がバレるような行いは良くないからな。
ぐるりと遠回りをしつつ、遺跡群へと向かう。道中、人魚は疎か魚人にも会わなかった。
例の旅人と会った遺跡群へと辿り着いた。暫く遺跡群内部を探してみたが、誰も居ないようだ。この間会ったばかりで調査が終了したとは思えないし、あの旅人はまだログインしていないのだろう。
しかし、ログインしていない旅人は兎も角、現地民も居ないのはどういう事なんだろうな。魚人にここの調査を依頼されたというが、肝心の現地民がここへ来ないってのはどうなんだ? 調査はただの名目で他に目的があるのだろうか。それとも、現地民がここへ来れない理由がある?
『前回も思ったけど、変な場所でありますねぇ』
TYPE_R_03がぼそりと呟く。
変な場所? 遺跡ってのはこんな感じじゃないのか?
『あの魚の話だと地上が海に沈んだ名残りという話でありますが、それは相当前の時代の筈であります。この建造物は藻類は茂っているでありますが、朽ちてはいないであります。何か特殊な建材で造られているのか、最近造られたのか………』
それは、沈んだ大陸ってのがあの世界のようなトンデモ超文明だったからとかじゃないか? それなら長年海に沈んでいても劣化しないとか有り得そう。
『うーん。何だか某の性能を発揮しようとしても、何処からかジャミングが入るようで上手く解析出来ないのであります』
やはり、別の星でも最強で万能という訳ではなさそうだな。まぁ、この星ではなくオレの星に来たとしても同じ事だが。
それでも何か情報が無いかとTYPE_R_03を展開したまま、遺跡群を泳ぎ回る。
ここの遺跡群の広さは、大体以前の最初の街より少し広い程度だ。大陸が沈んだという話だったが、この広さだと小さ過ぎる。ここの遺跡群以外にも同じような所があるのだろうな。
『ん? これは?』
TYPE_R_03が何かを見付けたらしく、それを手繰り寄せてくる。やがて姿を表したのは白目を剥いた魚人だった。………何これ? 死んでる?
『いえ、死んではいないようであります。ただ、魂が抜けている感じでありますね』
魂が抜けている? それってもしかして、旅人の身体なのでは? そういえば、ログアウト中のヒラメ氏達の身体がこんな感じだった気がする。まるで陸に打ち揚げられた死体のような………。いや、それよりも。
「元在った場所に戻して来なさい」
『はーい。であります』
ふわふわと水の流れに揺られながら離れていく魚人。その姿はどう見ても潮に流される死体だが、中のヒトが入っていない状態の旅人は大体あんな感じなんだろうな。
まぁ、これで以前会った旅人がログアウト中だという事が分かった。何だか既に魚人連中を胡散臭く感じているが、あの旅人に何かをした訳ではなさそうだな。
とりあえずは、暫くここの調査をしつつ先程の旅人がログインしてくるのを待つか。
魚人に会うより先に、彼の知っている情報が欲しい。同じ旅人の誼で有意義な情報交換が出来るかもしれない。




