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オレの話を強請る人魚氏に、例の世界について語る。まぁ、全てを語る訳ではなく、聞かれた事にだけ答える形だ。
人魚氏からの質問は、大抵は海に関する事だった。
こちらの魚人は、魚にヒトの手足が生えた姿だと伝えたら笑われた。何故だ。
今の状況に不満でもあるのか、あの世界に居住は可能か?なんて事も聞かれたな。それは無理です。
「何? 貴様のようなぷれいやーと呼ばれるモノ共は不死であると?」
死なないという訳ではなく、死んでも蘇るというだけだ。遺体は暫く残るが一定時間経過後に空間に溶けるように消えるとか何とか。
「なるほど。面白い話だ。まぁ、それが本当ならばな。………うむ。良い暇潰しになった。まさか、殺し合いと繁殖行為しか頭に無い野蛮な魚人がこれ程荒唐無稽な作り話を出来るとはな。………その礼に楽に殺してやろう。本来ならば貴様等が現在進行系で働いている、我が同胞達への仕打ちの代償に惨たらしく殺す所だが、面白い噺に免じて許してやろう。ではな」
は? おいおい。確かにオレ達旅人は死んでも向こうの世界で蘇るとは言ったが、そう易々と殺していいって話じゃないだろ。それに、TYPE_R_03がそれを許す筈が無い。下手したら返り討ちに会うぞ。
「あれ?」
何の攻撃を受けたかも分からず、オレは死んだ。TYPE_R_03を装備していたのに、その防御を抜いて来た? この星、実は結構ヤバいのか?
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「いやぁ、面目ないであります」
死に戻りしてイチバンの私室へと戻って来た、TYPE_R_03の第一声がコレだ。
TYPE_R_03は何だかしょぼくれたように、床でいじけている感じがする。まぁ、見た目は床にデロデロと広がっているだけだが。
「まさか、某の身体を貫通して、トワ殿の身体内に直接影響を及ぼすとは思いもしなかったであります」
オレの身体はTYPE_R_03で覆われていた筈だ。その状態でオレにだけ攻撃した? 一体オレの身に何が有ったんだ?
「恐らく、音であります。奴と話している間から未知の音波がずっと聞こえていたのであります。どういう仕組みかは分からないでありますが、トワ殿の身体内に毒素が発生し瞬時に死に至ったのであります」
え? 毒物で死亡? それなら、TYPE_R_03を装備していたらブロックしてるんじゃないのか?
「毒素はトワ殿の身体内部で生成されたであります。某は外部からの攻撃は全て無効化するでありますが、内部は別であります」
方法は分からないが、毒素がオレの内部で精製されたのは分かった。でも、音が原因って何でだ?
「あの空間には不審なモノは何も無かったであります。そもそも、外部要因は某が間に入ってカットしているであります。ただ………」
今回は運が悪かった。この世界内の生物であったならば、TYPE_R_03が完璧にブロックしてくれただろうが、勝手の違う異世界だ。TYPE_R_03の予期しないモノが害になる事もあるのだろう。TYPE機は異世界でも最強兵器という訳ではないからな。
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そのままイチバンでうだうだと過ごした後、また次元口を通って“水の星”へとやってきた。
『あの魚にリベンジでありますね』
違います。あのヒトには、旅人は蘇るという事を伝えてある。再度来訪すれば、オレがこの星の魚人ではなく異世界から来たモノだと分かって貰えるだろう。
あのヒトはこの星の魚人をやたらと警戒していたみたいだし、オレが無関係だと分かれば友好的に接する事が出来るかもしれない。
ここの星の魚人と人魚はどういう関係なんだろうな。
人魚氏の言っていた魚人は野蛮な種族のようだが、旅人に遺跡調査を依頼するような知性を持ち合わせている。お互いの不理解によって生じる軋轢が酷いのかもしれないな。
前回と同じ場所に来たが、例の泡は無い。他の魚人に位置がバレる事を恐れて何処かへ移動したのだろうな。
まぁ、見つからないのなら仕方ない。前回と同じく星の探索を再開するのみだ。
「………………………」
「どうも。また来ました」
前回よりも更に深い所に在ったので再来訪してみました。
人魚氏は苦々しい変顔をしながらも泡内部に入れてくれた。
「あの後、貴様の死体を観察していたら、確かに空間に溶けるようにして消えていったのは確認出来た。本当にあんな事が起こるとはな………。故に、確かに貴様はそこらの魚人ではないようだ。奴等は腐るにしても、あれ程短時間ではないからな。で? 私に何の用だ? 殺された復讐にでも来たのか?」
復讐だなんてとんでもない。オレが来たのは単なる好奇心。この星の観光名所とか、人魚と魚人の関係性とかを聞いてみたいだけですよ。
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