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戻って来た。現実に。
あのままあの世界で遊んでいてもいいんだが、あの住人の話を聞いて知ってしまった事で、オレの星に空いている次元口をどうにかしなければならないと思ったのだ。
現在の次元口は、周囲の空間ごと封印してある状態だ。
オレが、次元口から吐き出された旅人を皆殺しにしたのは変えようの無い事実だ。向こうの時間軸はどうにもならないため、あの人数が消費されるのに掛かる時間はよく分からないが、今の状態で向こうからこちらに来る事は不可能だ。
とりあえず、目下の問題はこの次元口をどうするか、だ。
例の“灼熱の星”の住人から、あの世界に接続している星に次元口が開いているという情報を教えて貰った。とても有意義な情報だった。
戻って来て早々、向こうの神に苦情を入れた。相変わらず話が長かったが、気に入らなければ次元口を閉じろとの事だ。それは前にも聞いたが、問題は次元口を閉じる事であの世界に接続出来なくなるのでは………という懸念だ。
あの世界の運営は、星に接続している異星人の情報を元にして、こちらの星を探っているようだ。そして、そこにどういう手段を使ったかは定かではないが、次元の裂け目を勝手に作った。この時点で外交問題。野蛮かつ物騒な星ならば、これを元に戦争を吹っかけても仕方ないレベルの蛮行なんだが、何を考えていたのだろうか。
まぁ、“異世界”に手軽に行けるという意味では、旅人が居る星に次元口を繋げるというのが手っ取り早いという事は分かる。なにせ、その星には旅人が居るのだ。知的生命体が居る事が分かっているのならば、交渉なりなんなりしやすいからな。でも、オレに無許可で開けたから殺す。
あの世界の持ち主はゲームの運営自体には関わっておらず、部下の神に丸投げしているようだし、奴に文句を言っても糠に釘だ。オレより長生きしているだけあって、話が無駄に長い割に世の中に興味が無い。あの世界を始めたのも例の部下の言葉を受けて、とか言ってたし。
運営の意図が読めない。今更な話だが、何だか面倒な事に巻き込まれている気がする。………まぁ、オレがあの世界に行っている時点で、自ら巻き込まれに行ったようなモノだが。
あの世界を立ち上げる時に、運営が掲げた目標は“魂の救済”だった。何言ってんだお前と思いながらも、初めての異世界という事で面白半分に参加して今に至る。
今になって思えば、“灼熱の星”やらの死滅するヒトの精神体を自らの世界に取り込むという目的が有ったのかもしれない。知らんけど。
まぁ、苦情の解答が中々来なかったため長々と語ったが、特に問題は無いとの解答が来たので次元口は潰しますね。持ち主の神ではなく、その部下から直接連絡が来たのだが、明らかに不承不承という雰囲気がしていた。殺すぞ。
ふと思ったのだが、この次元口にこちらから向こうに行けないかなと思ったが、それが可能なら色々な異世界から直接あの世界に乗り込めるという事だ。しかし、流石にそれは出来ないようで、こちら側からは次元口が見えないらしい。帰りの次元口が見えるのは、行きの次元口に乗った旅人か住人だけ。………つまり、次元口は個人ごとに在るという事なんだが。
まぁ、そんな訳で、オレの世界に通じている次元口は周囲の空間ごと削り取った。大元の次元口………この場所に次元口が開くという理自体を消したので、今後は湧き出る旅人に悩まされる事は無い。
後顧の憂いも無くしたし、とっととあの世界に戻るか。流石に、次元口潰したら接続出来なくなったとか無いよな?
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ログイン七十七回目。
今回も異世界に行ってみよう。オレの星で散々な事をやっておいて何だが、他の星では次元口に対する対策を取らないのだろうか。
そういえば、“大断裂”のアナウンスが有った時、『異世界への侵攻が可能』とか言ってたな。早めに対処しないと、文字通り侵攻されてしまうぞ。
次元口が開くのは、旅人が居る星だったな。という事は、“氷雪の星”にも知的生命体が居たのか? あのモノリスみたいな奴等がそれなのだろうか。
それに、オレの種族が骸骨兵から変わらなかったのも気になる。
まぁ、それを確認しに行くつもりはないけども。
今回選ぶのも“ランダム”。既にTYPE_R_03を“装備”済みだ。
次元口を抜けた先は、水だった。
えー、またオレの星か? と思ったが、見覚えの無い場所だ。どうやら、違う星のようだな。
ふと、自身の腕を見る。元の種族である骸骨兵の骨だけの腕ではない。腕には鈍色の鱗が隙間なくびっしりと生えており、見える範囲は全て同色の鱗で覆われているようだ。
鱗で覆われた種族というと、魚人とか蜥蜴人とか?
『今回はこんな感じであります』
TYPE_R_03に映されたのは、魚の特徴を持った普人族のような見た目だ。首の両側に鰓があり、腕や足の各所に鰭が有る。手指の間には伸縮する水掻きのようなモノも有った。
この種族は水中特化のようだ。肺呼吸が出来るのかは知らないが、陸地が存在するのかだけ確認しておくか。
頭上からは朧げながら光が差している。光が届いているという事はそこまで深い訳ではない。暫く泳いでいれば水面に出るだろう。幸い、この種族は泳ぎが得意なようで、それ程苦労する事なく水面まで辿り着いた。
水圧やら内圧がどうのと頭を過ったが、今の所は不調を感じない。オレの水圧耐性スキルがそれなりに機能しているのだと信じたい。
恐る恐る外に頭を出す。肺呼吸が出来なければ息苦しくなる筈だが、それは無いようだ。
辺りを見回してみるが、それっぽいモノは無い。何処まで行っても水平線だ。もしかしたら、何処かに島等があるかも知れないが近くには無い。
とりあえず、いつも通り周囲の探索をしてみるか。




