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TYPE_R_05の事は一旦保留にしておくとして、今回も異世界に行ってみよう。
という訳で、例の小部屋に入った。表示されているのは、“オレの星”と“前回行った世界”と“ランダム”だ。
やはり、行った事のある世界はここで一覧表示されるようだな。これ、この世界の名前って変えられないのだろうか。
ペタペタ触っていると『異世界の名称を変更しますか?』という表示が出てきたのでYESを押しておいた。
とりあえず、“オレの星”と“渋谷の星”に変更しておいた。“渋谷”は恐らく地名だろうが、星の名前が分からないから暫定的にこの名前だ。
今回行くのは、勿論ランダム。それこそ星の数は無数にある。流石に生者が生存可能な星のみに絞っているだろうが、オレの星の件もある。
次元口で飛ばされる星は、どういう基準で選んでいるのか分からないが、一つ言えるのは『行ってみないと分からない』という事だ。
さて、今回はどんな異世界かな?
次元口を抜けた先は一面の銀世界だった。
周囲に人影は一切無い。オレは寒暖無効だから特に何とも無いが、この環境は生者は生存可能なのだろうか。
オレの足元は凍りついている。雪を掻き分けてみたが、分厚い氷が見えるだけだった。………果たして、この星に生物は居るのだろうか。
『大気も薄いでありますね。気温も低いでありますし、通常の第二人類種では凍死する可能性が非常に高いであります。大凡、ヒトが住むには適さない環境かと思うであります』
ですよね。星の表層の環境は厳し過ぎる事から、もしかしたらこの星の住人は地下に居るのかもしれないな。
『む? 向こうに生体反応が在るであります何かは分からないでありますが、生物である事は確かであります』
こんな辛い環境でも生物は居るんだな。
オレの胸辺りから物理的に指先が伸びる。TYPE_R_03が指し示す先に何かが居るらしい。一先ずそれを探しに行こう。
氷をバリバリと踏み締めながら歩く。“装備”したTYPE_R_03が足裏にスパイク状の突起を作り出してくれたお陰で、足元が滑る事もなくそれなりに快適に歩ける。
前方にぼんやりと何かが見える。黒っぽい背の高い何かだ。TYPE_R_03が指し示す先に聳え立っている。………もしかして、アレがそうなのか?
黒っぽい何かは、巨大なモニュメントだった。外見はツルリとした材質であるが何で出来ているのか分からない。………これは一体何なんだ?
『えー、この黒っぽい奴から生体反応を感じるであります。それと、この周囲には同じような反応のモノが幾つか在るようであります』
え? 生体反応? コレから?
つまり、アレか。この、コイツが生命体だと?触っても何も感じない。まぁ、オレの熱等への知覚は非常に鈍いから、コイツを触っても何も感じないのは仕方ない事なんだが。
「えー、例えば、これは住居で、中に生物が住んでいるとかないか?」
『無いでありますね。内部を透視して見たでありますが、不明な鉱物のみで作られているとしか分からないであります。鉱物のみの筈なのに、何故生体反応があるのかすら分からないであります』
なるほど。TYPE_R_03にも理解不能な事が起きている、と。
このモニュメント、動いたりしてないよな?
周囲に同じようなのが幾つか在るという話だったな。気付いた時には躙り寄られ、よく分からんモノで包囲されていたとか無いよな?
『位置は先程から一切変わっていないでありますね。周囲のモノも同じであります』
良かった。コイツは独りでに動くモノではないらしい。
しかし、コイツが生物か………。どう見ても鉱物なんだが、TYPE_R_03が感知したところ生体反応があるらしい。鉱物なのに生命体扱いされる存在のようだ。………オレの本体も、ほぼ水だからか何だか親近感が湧く気がする。
この星の環境で生きていくためには、この姿が最適だったのだろうな。知らんけど。
とりあえず、暇だし周辺を探索してみるか。普通の生物には厳しい環境でも、生命活動をしていないオレにとってはこれらの障害は無いも同然だ。大気が薄くても寒さが厳しくても関係ない。いやぁ、不死者は気楽でいい。
周辺を歩き回り、先程見たのと同じような鉱物体を幾つか見かけた。形状はまちまちなんだが、全体的な形は一緒だ。形状が違うのは個体差みたいなモノなのだろう。
周辺を探索した結果、地表には氷雪と鉱物体以外には何も無い世界だという事が分かった。
何と言うか………この星は“外れ”だな。この環境に最適な種族か、適応も何も関係ない不死者くらいでないと生存する事すらままならない。
そういえば、オレは向こうの世界と同じく骸骨兵だ。という事は、この星にも骸骨兵かそれに近しい種族が居るという事だが、どうなっているのだろうか。
考えられる事柄としては、過去に存在したが今は居ない種族とか? もしくは、地下等のこちらからは見えない場所に居る場合か。
あちこちを見回っている間にピコピコ音が鳴る。そろそろ帰る時間だ。これ以上ここに居てもこれといった収穫は無いだろう。
オレは次元口に乗り、向こうの世界へと帰った。
******
前回と同じく、次元口の小部屋にて色々と調整をする。先日の氷の星は、“氷雪の星”と名付けた。これで、行った事のある異世界は三つとなった。………まぁ、今回も“ランダム”を選ぶんですがね。
次元口を通った先は、熔岩がそこら中を流れており、見た目的に目茶苦茶熱い場所だった。今回の異世界は、前回と打って変わって灼熱の世界のようだな。
『おっと、これは拙いであります』
“装備”したTYPE_R_03がぶわりと広がり、オレの全身を覆っていく。ふと見ると、オレの身体は骸骨兵ではなくなっていた。
TYPE_R_03越しに見た感じだが、節くれ立った腕になっている。どうやら、骸骨兵からこの星の住人に変化したようだな。どういう生物なのだろうか。
『トワ殿の見た目? こんな感じでありますよ』
TYPE_R_03がホログラムを出してオレの姿を映す。
TYPE_R_03に覆われているせいで分かりにくいが、黒っぽい肌で全身が節くれ立った身体だ。よく見たら眼が三つある。顔付は中々の凶悪面だった。よくよく見ると虫みたいな見た目してんな。あの世界だったら問答無用で刺されそう。
ところで、TYPE_R_03が拙いと言っていたのは、何なんだ? この星の住人に変化したのなら、この星の環境には適応している筈だが?
『熱や有毒ガスに対しては適応出来ているようでありますが、宇宙線に対しては無防備のようであります。この星の大気は宇宙線を軽減する効果は無いようでありますね』
この星の住人は宇宙線が降り注ぐ中、どうやって生活しているんだ?
『あそこのアレが恐らくこの星の住人だと思うであります。所謂、宇宙服を着込む事によって宇宙線を軽減しているようでありますね』
TYPE_R_03が指し示す先には白っぽいテカテカした服を着たヒト型が歩いていた。この星の住人は中々凶悪な見た目をしていたんだが、ああやって全身を隠されると中身が全く分からんな。
その住人はこちらを見付けたようで、ヒョコヒョコと特徴的な歩調でこちらに向かって来る。
「やぁ、良い日柄だな。ところで、キミは支給防護服を身に纏っていないようだが、それは新型なのかい?」
凶悪な見た目に反して、思ったよりも友好的だった。
そらにしても、支給防護服? あの防護服は一般的な物なのか?
「あぁ、いや、これは防護服………ではないが、似たような物だ」
「おや、そうなのか。それで、キミは大丈夫なのかな?」
何が大丈夫なのか。気を効かせたTYPE_R_03が全身を覆っているとはいえ、あの防護服と同じような効果を得られているのだろうか。………少し心配になってきた。
『失礼な。某の防御を抜けるモノは殆ど無いであります。それに宇宙線なんて何処も一緒であります。某は、あの防護服よりも遥かに有能であります』
なるほどな。流石はあの世界で最強兵器だけある。その性能については疑いようも無いか。
それよりも、目の前のヒトにこの星の事を聞いても良いものなのだろうか。判断に困る。
あの世界でならば、余程の事情が無い限り気軽に聞けるんだが、今回は異世界だ。場合によっては、オレは侵略者扱いされてもおかしくはない。それに、次元口を渡って来たというのも説明しなければならない。それで納得してくれるのならば良いが、理解出来ないとなれば面倒だ。
ここは、素知らぬ振りをする方がいい。暫く見て回って、どんな世界なのかを把握してからで良いだろう。
オレは、先程のヒトと適当に挨拶を交わし別れた。




