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ログイン七十六回目。
ゾンビーフ氏から店を再オープンしたという知らせが届いたので行ってみる事にする。
前回、ゾンビーフ氏の家にお邪魔した時は転移陣を使用さへて貰っただけで、店の方は覗く事もしなかった。
という訳で、ゾンビーフ氏の店に行く事はこれが初なのだ。錬金術師の店だと言っていたが、一体何が売っているのだろうか。
「いらっしゃいませ。いやぁ、トワさんのお陰で無事新装オープンする事が出来まして、それから売上的にも調子よく回っていますよ。まぁ、オープン自体は結構前の事なんですが」
ゾンビーフ氏の店は上手くいっているらしい。オレのお陰と言われても大した事していない………というか、TYPE_R_04に口利きしただけで本当に何もしていない。
とりあえず、店の品揃えを見てみるか。残念ながら?オレがコレ等を使うとは思えないので、冷やかし程度だが。
「冒険者組合の方にも錬金術師の店があるのですが、私の店ではここでしか取り扱っていない物や旅人が使う想定で作った品物がウリです。トワさんもどうです? 気に入った物がございましたら、お一つだけですが差し上げますよ」
なんてことだ。冷やかし程度で済ませる筈が、まさかのお一つどうぞとは。しかし、オレには何が何やら………。
「あー、オレには物の良し悪しも、何に使う物なのかも知らないんですよ。なので、気になった物が有ったらどういう物か教えて貰っていいですか?」
ゾンビーフ氏の返答は『勿論』との事だった。
流石に全ての品物の説明を受ける気は無い。ゾンビーフ氏の時間を奪ってしまう事になるからな。直感で気になった物だけ教えて貰って、気に入った奴を貰えばいいだろう。
暫く見回り興味を惹かれたのは、魚卵のような半透明な球だ。何でこんな所にこんな物が?
「おや、それを選びますか。それは人造生命体ですね。私がつい先日作成したもので、その卵に魔力を込めると人造生命体が生育するといったモノです。ただし、まだ私の錬金術レベルが低いので耐久度も低いです。生まれてから一時間も持たないですが、一度程度なら肉盾として機能出来ると思います」
なるほどね。割と生命倫理を無視した発言が見られたが、ここはゲームだ。それに作成者はゾンビーフ氏だし、現時点での人造生命体の性能を鑑みて、肉盾にしか使えないと割り切っているのだろう。
肉盾………。使えない事も無いだろうけど、防御面で言えばTYPE_R_03を装備している限り怪我するとは考え難いし、そもそも骸骨兵だから骨折以外の怪我とは無縁だ。それに、普人族の時は使えなかった『死んだふり』があるからな。肉盾とか、ぶっちゃけ要らない………。いや、他の物もよく分からないから、これを貰っておこう。
「人造生命体をご所望ですか。これは未完成の代物ですので、いつか完成品の人造生命体が出来た時にお見せしますね」
ゾンビーフ氏から人造生命体を受け取った。見た目はどう見ても魚卵だ。とりあえず、アイテムボックスに保管しておく。………そういえば、コレって生物か? 腐ったりしない?
「アイテムボックスに入れている限りは大丈夫だと思います。魔力を込めない限りは活性化しないので、アイテムボックス内で無くても日持ちはする筈………。すみません。そういう事は試していませんでした」
ラギ氏から聞いた話では、アイテムボックス内は時間が止まる訳ではなく、時間経過がゆっくりになるらしい。とりあえず、人造生命体は、この中に入れておけば早々に腐る事は無いだろう。ちょくちょく様子を見るようにすればどうなっているか分かるだろう。
『人造生命体でありますか。何処か親近感を感じるであります。今はまだ程度は低いでありますが、遠い未来には旅人がTYPE機を造り出す事も可能かもしれないであります』
旅人がTYPE機を造り出す未来か………。いや、どう考えてもゲームの末期だろ。
TYPE機が、もし作成可能になってしまったのならば、始まるのは全ての旅人と住民を巻き込んだ対立だ。それこそ世界大戦が起きると言っても過言ではない。そんな自体になったら、この世界自体が終わりそうな気がする。
まぁ、流石にそんな事になりそうになったら運営のテコ入れがあるだろうが。
『まぁ、確かに愚物が手に余る物を手に入れたら、最悪な未来が待っているかもしれないであります。今の内に消しておくであります?』
消すって何をだよ。人造生命体の製法か?
そんなもの消して何になる。そんなモノは消したとしても、またいつか出てくるモノだ。それにオレは世界の調整者を気取るつもりは無い。そういう面倒臭い事はここの運営に任せておこう。
『ところで、トワ殿はTYPE_R_05ちゃんの欠片を異空間収納に入れているでありますね?』
確かに、自己修復中のTYPE_R_05の欠片が入っているがけど………話した事あったっけ?
チラッと見ると修復度は六十四%になっていた。
『トワ殿に“装備”された事で、他の存在を感じ取れるようになったであります。本題でありますが、先程手に入れた人造生命体とやらは、非活性状態の時に使用者の魔力を注入する事で爆発的に細胞分裂し誕生するようであります。さて、この非活性状態の人造生命体にTYPE_R_05の欠片を注入するとどうなると思うであります?』
えー? そりゃあ、TYPE_R_05の魔力を吸収して人造生命体が作られるのでは? それで、TYPE_R_05の修復度が後退する。………良い事無くね?
『たかが旅人が作った人造生命体程度が、某達TYPE機に勝てる筈が無いであります。正解は、TYPE_R_05が人造生命体の生命情報を書き換え乗っ取るであります。つまり、自然修復を待つ事なくTYPE_R_05を復活させる事が出来るであります』
な、なんだってー。
『どうであります? この方法なら、TYPE_R_05ちゃんをトワ殿の好きな姿に改変出来るでありますよ? 星冥龍の姿を模しているのは気に食わないでありますよね? ここはいっそ、トワ殿の配下であるクオンのようにするであります?』
はい、却下。そんな事にオレは興味無いし、万が一があるかもしれない。TYPE_R_05に人造生命体を混ぜたせいで不具合が起きても困る。オレは気長に修復が終わるのを待つつもりだ。
それにしても、TYPE_R_03ってTYPE_R_05の姿が嫌いなのか。
『なんて事言うでありますか。某は05ちゃんに愛情いっぱいであります。まぁ、実際に会った事は無いでありますが。それに、あの姿になったのは05ちゃんの意志では無いであります。05ちゃんに対しては他意は無いであります』
そういえば、TYPE_R_03を再起動させた時は既にTYPE_R_05はアイテムボックスの中だったな。
実際に会った事は無いのに、何でTYPE_R_05の姿を知っているのかと言うと、TYPE_R_04に同期したからだろう。TYPE_R_04自身が巨大なデータバンクだ。アレに接続出来るのならば、汎ゆる情報を把握出来るだろう。
拙者、人外キャラを安易に擬人化する奴を斬り殺す勢で候。




