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ログイン七十五回目。
セイン跡地にほど近い、簡易リスポーンアンカーにて死に戻った。
身体中が倦怠感で凄まじく、とてつもなくダルい。ここまでのダルさを感じたのは久しぶりだ。変質魔法で初めて普人族になった辺り以来だな。
あの時は慣れない身体のせいだったが、今は違う。これは、最近アプデされたデスペナのせいだ。
以前のデスペナは、種族を最低二回変化させた旅人がデスペナ対象になったのだが、現在は全ての旅人が対象だ。前回のデスペナは主に上位勢である旅人が対象だった。しかし、上位勢と呼ばれる中には技能レベルを失うリスクを恐れて種族変更をしないモノも居たようだ。そいつ等は今回の変更についてどう思ってるんだろうな。
まぁ、兎も角、オレは種族変更は一度しかやっていないが絶賛デスペナ中だ。身体がとてつもなく重く、何をする気にもなれない。
しかし、アレはなんだったのか。あそこはオレの星で間違いないだろう。問題は何故、オレがあの星に行ったかについてだが。
ふと手を見る。以前はよく見たが、最近は見慣れぬ骨だけの掌だ。………ん? 骨だけ?
オレは逸る気持ちを押さえ付けつつ、自身の能力値を見てみた。
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プレイヤー名:トワ
種族:骸龍骨兵Lv.12
LP:50
MP:0
SP:1
種族能力
打撃属性弱体Lv.2、火属性弱体Lv.1、斬撃耐性Lv.2、刺突耐性Lv.2、水圧耐性Lv.1、生命力半減、持久力超強化、呼吸不要、寒暖無効、飲食不要、死亡時幽体状態可能
保持技能
死んだふりLv.1、透明化Lv.3、気配隠蔽Lv.3、魅了(不死族)Lv.1
称号
光亡き者、森樹精の友、森守護者の加護、統制管(TYPE_R_Lv.0)、統制管(TYPE_S_Lv.1)、統制官(TYPE_A_Lv.4)、統制官(TYPE_O_Lv.5)、統制官(TYPE_Z_Lv.5)、統制管(TYPE_AA_Lv.5)、統制官(TYPE_G_Lv.5)、ヘイルデン要塞総司令官Lv.5、深森館の管理者Lv.1、慈悲なき者、“イッカク”地帯支配者Lv.5
カルマ値:850
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なんてことだ。骸骨兵に戻ってるじゃねぇか。何故このタイミングで? 確か、変質魔法で掛けた魔力が消えるまでとかいう話だった気がする。つまり、死に戻りのタイミングで魔力が抜けたのだろうか。
まぁ、理由ははっきりとは分からないが、これで長らく続いた普人族生活とはオサラバだ。
しかし、この能力値は改めて見ると酷いな。MP値が皆無で持久力値もほぼ皆無って。向こうでは魔力は疎か持久力を使うような事はやってないぞ。ただ、海に揺蕩っていただけだ。
そうそう、変質魔法が解けていた衝撃で思い出したんだが、オレの星とこの星では時間の進み具合が大分違うんだった。こちらの世界に長時間入り浸っていて忘れそうになるが、あちらの方はかなり時間の進み方が遅い。この世界で何日滞在しようと、あちらに帰ればほんの数瞬程度の時間しか経っていない。
この世界は、ありとあらゆる星から接続されている筈だ。その中には、オレの星のように時間がゆっくり流れるモノも有り、逆に凄まじく早いモノもあるだろう。そこら辺の時間齟齬をどう処理しているのかは、オレにはさっぱり分からないが。
まあ、ここで言いたいのは、オレがセイン跡地で次元口に乗ったタイミングでは、あの星のオレは不法侵入者に応対している最中だったという事だ。訳が分からないな。
恐らく何処かしらのタイミングで、あちらとこちらで同期が取られているのだろう。………うーん、理論も原理も分からん。
一つだけ言えるのは、“魔法”ってスゲーという事だ。オレの世界では“魔法”なんてものは実際には無いからな。
ん? 魔法が無い? もしかして、オレの変質魔法が解けたのは“魔法”が存在しない世界に行った事が原因では? いや、よく考えたら、それがあった場合旅人が所持している魔法の品が消失するだろうな。しかし、そういった話は出ていない。とすると、向こうの世界で海に溶けかけたせいか? これも今一確証が持てない。しかし、今はとりあえず念願の骸骨兵に戻れた事で良しとしよう。
骸骨兵に戻ったとしても、デスペナ中は何も出来ない。デスペナで能力値が大幅ダウンしている時間は、ログアウトすればいいじゃないかと思っていたが、このデスペナ時間はログアウト中は減らないらしい。つまり、デスペナを解消するためにはログインし続け、解除されるのを待たなければならない。
オレの周りには顔色悪く座り込んでいる旅人が多く居る。単純にデスペナで体調が悪いのか、仲間でも亡くしたのか。
あの時のオレが、どれだけの不法侵入者を殺したのかは分からないが、何かそれなりの数が居た気がする。ただ、その中に旅人や住民がどれだけ居たとかは全く分からない。もしかしたら、うっかりオレが手に掛けていたかもしれないが、そこら辺はここの運営辺りに苦情でも入れてもろて。
先程トワが■■に殺されたように、あの場で死んだ数が釣り合うまで、こちらの次元口は、あちらの星へ汎ゆるモノを運び続ける。こちらの運営が事象の消去やら改竄が出来ないという証左だが、そこはどうでもいいだろう。
問題は、二回目以降も同じような事が起きたら嫌だなぁ………という事だ。流石に二度も同じような死に方をするのは良くない。以前、とある場所で同じような死に方を散々繰り返したが、もうあのような行為はやりたくはない。
しかし、デスペナ中って本当にやる事無いな。コレがどれだけ続くか分からないが、一度イチバンへと戻ろうか。冒険者組合………というよりは一部の高レベル旅人が簡易移動施設を作ったのらしく、少額の使用料を払えば誰でも使えるらしい。
オレはそれを使い、一度イチバンへと戻った。
唐突に戻るトワさん。




