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えー…洞窟を抜けたら、そこは別世界(物理)でした。
マジで何処なんだココ。慌ててマップを見てみる。マップを開いた瞬間に拡がる地形図。つまり、初めて来た場所という事。マップ区画を全域にして、洞窟に入る前の場所が何処かを確認してみた。
「マジで何処…?」
エルデス山は今居る場所から遥か南にある事を確認した。おかしいな…。オレは確かに真っ直ぐ歩いて来た筈。何故ならあの洞窟内部のマップ自体が真っ直ぐな道だった筈だ。何処かで横道に入ってしまったのか?亡我状態になっていた時が怪しいな。あの時違う道に入ってしまったのか?
まぁ、ポジティブに考えれば“光亡の窟”を通れば、こんなに離れた場所にも到達出来るという事だな。
………問題は、最初期の街から明らかに滅茶苦茶離れているこの場所の適正レベルが、とんでもなく高そうという事だ。
………あ、そうだ。そういえば、あの箱はどうなったんだ?
目の前の事をとりあえず置いておいて、一端現実逃避する事にした。
オレは地面を転がり続けた事によって、すっかり磨り減ってしまった左手を手に取り、元に嵌め直した。
僅かに戻るLP。やっぱり全回復にはならないか。部位欠損状態も戻らないし、やはり明らかに形状が変わってしまうと駄目なんだな。
地面に転がる箱を見やる。何というか滅茶苦茶黒い。底にいた時はよく分からなかったが、真黒い箱だな。光を全て吸収しているような…黒過ぎて角が何処にあるのか分からんな。視覚がおかしくなりそうだ。
箱を拾い上げると、目の前にホロウィンドウが現れた。
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名称:光亡の箱
耐久:1000000000000000(自動回復)
希少:EX
概要:光亡き者の箱。光を拒絶し光から拒絶される。我等は■■■によって■■■■■から拒絶された。永遠に。
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いや、耐久値高過ぎぃ………。しかも自動回復って何をしろと?殴れとでも言うのかこれで。それに、何だか気になるフレーバーテキスト。つまり、どういう事だってばよ。
オレはとりあえず箱を開けてみる。余りにも黒過ぎて、何処から開けるのか分からなくて梃子摺ったのは内緒だ。
パカリと口を開けた中も真黒だった。
ナニコレ?中に何か入ってるのか分からんぞ?
とりあえず、指を突っ込んでみる。何かさらりとした骨触り。何かある事は確かなようだ。指で摘み出すと、サラリと長めの布っぽい物が流れ出てきた。ただ、これも黒過ぎて何が何だか分からない。
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称号、『光亡き者』を獲得しました。
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名称:光亡き者の外套
耐久:10(自動回復)
希少:EX
技能:透明化Lv - 、気配隠蔽Lv -
概要:光亡き者が■■■■■から逃れるために纒っていた外套。装備している間のみ、透明化Lv - 、気配隠蔽LV - 使用可能。
所有:トワ
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称号?ナニソレ?それに、このマント…ナニコレ?暗殺プレイヤー御用達みたいな装備だな?箱と違って耐久値低すぎない?でも、気配隠す装備だったら耐久低いのは当然か?とりあえず装備してみるか。
外套を広げ、肩から纏ってみる。うーん………オレの首から下が真黒だ。何だか滅茶苦茶違和感がある。見た目が呪いの装備なんだよなぁ。
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光亡き者の外套を装備した事により、能動的技能透明化Lv1、気配隠蔽Lv1を獲得しました。“光亡き者の外套”の所有者がプレイヤー”トワ“に固定されました。
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………何て?装備したらスキルが生えてきた。そういうものもあるのか。でも、透明化に気配隠蔽かぁ………まぁ、死んだふりと相性良いよね。………良いか?分からん。
まぁ、基本的に敵に勝てる気がしないから、平和的にやり過ごすためには便利かな。
所有者がオレ固定って事は、コレを売っ払うみたいな事が出来なくなったって事か?………残念だ。希少性ありそうだし、良い値で売れると思ったんだけどなぁ。
まぁ、とりあえずアレだ。ステータス確認しよう。何が何だか分からなくなってきたぞ。
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プレイヤー名:トワ
種族:骸骨兵Lv.1
LP:46
SP:100
種族能力
打撃属性弱体Lv.1、火属性弱体Lv.1、斬撃耐性Lv.1、刺突耐性Lv.1、生命力半減、持久力強化、呼吸不要、寒暖無効、飲食不要、死亡時幽体状態可能
保持技能
死んだふりLv1、透明化Lv1、気配隠蔽Lv1
称号
光亡き者
カルマ値:0
部位欠損状態
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ステータス画面からは装備品は確認出来ないっと。まぁ、今のオレの格好は裸マントな訳なんだが、改めて考えると変態的な姿だな。骨だけだから分からんだろうけど。
そういえば、あんなに重かった箱が今持ってみると、あの重さは何だったんだと思える程滅茶苦茶に軽い。中に入っていたこの外套も重さを感じない程軽いし、洞窟内部では重くなるギミックだか呪いだったのかもな。確かめるために洞窟中に入る気は無いけれど。
さて、そろそろ現実を見るか。
眼下に広がるのは、紅い森。何か無闇矢鱈と赤い気がするが、もしかしたら紅葉しているのかもしれない。という事は、向こうよりも寒い場所な訳で。残念ながらオレには、暑さ寒さを感じる機能が付いてないので分からんが。
そして、これみよがしに建っている建築物。形状的にピラミッドか?山より高いってどういう事だよ。デカ過ぎて分かりにくいが、多分割と遠くにあると思う。ピラミッド周囲の木々が大分小さいし。
そして、見ないようにしたかったが、時折眼下の木々が揺れる。風で枝葉が揺れている訳ではなく、本体の木々が揺れている。つまり、あの木を揺らすような存在が森の中に居るという事。それが友好的な存在であれば良いのだが、十中八九敵モンスターだろう。揺れているのを見た感じ、木々の間を無理矢理通っているような感じがする。
………帰りてぇ。
ゾンビーフ氏のウザいドヤ顔が酷く懐かしく感じる。そういえば、例のレイドボス戦は終わったんだろうか。あのスケルトンプレイヤーはレイドボス倒せたのかな?いや、そもそもアレからどんだけ時間経ってんだ?
恐る恐る時間を確認してみる。
ゲーム内時間で二晩経っていた事を確認したオレは流れるように死んだふりログアウトした。




