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山と谷がある話  作者:
01.山へ行こう
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 オレが思い付いた秘策。簡単な話、『振り返らない』事だ。あの洞窟内で入口を振り返って見た時、何処まで進んでも入口から入る光は一定の強さ、大きさで見えた。それに、入口に戻ろうと踏み出した瞬間に外へ出た事。つまりは、入口を振り返らない事が鍵になっているのではなかろうか。それを思い付いたのが、さっきの背後からの視線だった訳だが。


 洞窟内は前回入った時と同じく真暗闇だ。光が見えない不安から後ろを振り返りそうになる気持ちを我慢して前へと進む。

 前回と同じく左手を壁に添わせたまま進んでいるが、少なくとも左側に横道等は無く、ひたすら真っ直ぐな道を進む。

 ぶっちゃけ前回来た時と一緒だな。これ、後ろを振り返らない事が何かに繋がるんだろうか。まぁ、確信がある訳でもないし、他に特にやる事も無いし行ける所まで行ってみるか。



******


 ………長い。長過ぎる。ひたすらに長い。

 オレの体感では、もう既に何時間も経っている筈なんだが、一向に終わりが見えない。行ける所まで行くとは言ったが、ここまで長いとは考えもしなかった。前回はもっと早い段階で諦めていたからな。それに、何のイベント事も起こらない。モンスターが出てくる訳でも、プレイヤーやNPCに出会う訳でもなく唯ひたすら歩いているだけた。オレは精神修行でもしてるのか?



******



 あれから、大分時間が経った。我ながら馬鹿な事してるな、という気持ちはあるが、逆にここまで来たのだから最後まで行けなければ腹の虫が収まらない。これで、奥まで行って何も無かったら、温厚なオレでも流石にキレる。マジで。

 ここまで、一度も振り返ってはいない。こうなったら、意地でも辿り着いてやる。



******



 意地でも辿り着いてやると言ったな。

 心が挫けそうだ。あれからどんだけ歩いてると思ってるんだよ。って言うか、この洞窟何処まで続いてるんだ?物理的な距離なら山の向う側に突き抜けるているような距離だぞ。まさか、山脈の中をぶち抜いている訳ではないよな?



******



 何かの拍子で振り向いた判定になるのが怖くて、死んだふりからのログアウトをし辛い。



******



 しかし、種族スキルで飲食不要があって良かった。飲食不要でなければ、空腹ゲージを満たすために食事を摂る必要があるからな。空腹状態が続けば歩きでもSP(スタミナ)が減り続け、最終的にはその場から動けなくなるらしい。この暗闇で食べるのは難しいだろうし、至極面倒だろう。飲食不要なタイプのアンデッドで良かった。



******



 ピチョンピチョンと水が滴る音が何処かから聞こえる。近くに水場でもあるのだろうか。



******



 何だか頭がぼんやりとしてきた。オレはなんでこんな所にいるんだっけ?



******



 かわらない。何もわからない。おとはいつの間にかきえていた。何もみえない。



******



 かゆい…うま…



******



 はっ!?オレは一体何を…

 脳裏でゾンビーフ氏が満面の笑みで手を振っていた。走馬灯かな?


 余りにも退屈過ぎて思考停止していたようだ。

 そういえば、思考停止やら何らかの状態異常で亡我状態とやらに陥るらしい。この亡我状態が続くと強制的にログアウト処理が為されるらしいが………恐らくさっきまでのオレは亡我状態だったのだろう。では、何故戻ってこれたんだ?

 まぁ、クッソ退屈だったから自発的に亡我状態になったので、何かの弾みで戻ってきたのだろうが、まさかゾンビーフ氏が三途の川で手を振っていたのを見たからか?


 いや、何かがある。

 どうやら、底に辿り着いたようだ。洞窟だから底と言っていいのか不明だか、ぱっと思い付いた表現が『底』であった。

 底は行き止まりだった。しかし、何かが置いてある。暗くてよく分からないが、硬い素材で出来た箱のようだ。軽く持ち上げてみようとすると、思ったより重い。片手で持てるようなサイズなのに、重力的に片手では持てないぞ。何が入ってるんだこれ?開けようとしてみるが、鍵が掛かっているのか開け方にコツがあるのか、開く事は出来なかった。


 目の前に光が灯った。咄嗟に目を覆う。振り返ってはいない。突如として底に灯ったのだ。何が起きた?オレが箱を手に取ったのがトリガーなのか?


 ぼんやりと灯る光の側に、金属のような光沢のある看板があった。何か文字が書いてあるが、オレが普段使っている文字じゃないな。このゲーム特有の文字か?だとすると、翻訳機能が働く筈。


『ここは、光亡の窟。宝を持ち帰りたくば、光亡き道を進め』

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゾンビーフ氏www
[一言] 盛り上がってまいりました
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