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洞窟の中は真っ暗だ。こういう所には、普通灯りみたいな物があるもんじゃないのか。それとも、自分で灯りを持って来なければならない系のダンジョンなのだろうか。
恐る恐る前へと進む。よくよく見れば壁に松明らしきモノが見える。今は火を点ける物を持っていないが、有れば自分で火を点けろという事なのだろう。オレは持ってないが。
まぁ、何とかなるだろう。アンデッドの種族特性で夜目とかあっても良さそうだし。
オレは左手を壁に付けながら進む。所謂左手の法則という奴だな。自動マッピングもある事だし、これなら迷う事もないだろう。
洞窟内の道は幸いにも、暫く真っ直ぐ延びているようだ。これならば、ある程度の場所まで光が届くようのだが、奥へと進む程に徐々に薄暗くなっていく。入口からの日差ししか光源が無いから当たり前ではあるのだが。
徐ろにマップを開き周囲の状況を確認する。マップには、オレが通ってきた道のみ表示されているようであり、道以外の場所は黒く塗り潰されている。これは、通った道しかマッピングされない仕様なのか、この道以外は岩石や他の物質で埋まっているのか、判断が着かないな。なにしろ、暫定ダンジョンに入った事が初めてなのだ。もしかしたら、外の世界とはマッピングの仕様が違うのかもしれない。
それにしても暗い。種族特性で夜目あるかと思ったけど、そんなもの無かったわ。種族スキルの所に表記が無かったら、そういう事なんだろうな。これは、保持スキルに夜目が生えてくるまで気長に待つしかなさそうだな。
しかし、保持スキルってどういうタイミングで生えてくるもんなんだろうな。『死んだふり』が生えてきた時は危機的な状況だったから、あまり深く考えてなかったけど、ゾンビーフ氏の話だと、保持スキルを生やすためには膨大な時間と経験が掛かるとか何とか言っていたような気がするし。
もしかしたら、『死んだふり』は死亡回数が関係している？でも、それならゾンビーフ氏とか、絶対にオレ以上に死んでるだろうしな。
ゾンビーフ氏が『死んだふり』を持っているのなら、“黒疫”のキールから“逃げる”なんてしなくても済むだろうから恐らく持っていないと思われるんだよな。
うーん…何が切っ掛けなんだ？そういうスキル関係もステータス関係もステータス画面に出てこないマスクデータだから一々謎が多いらしいんだよな、このゲーム。
と思っている間に、周りが暗闇に閉ざされてしまっていた。入口からの明かりも届かなくなったらしく、辺りは真闇だ。
これは、大分入口から離れたみたいだな。マップを確認すると、ほぼ直線で脇道が一切無い一本道なようだ。
こんなに離れたのなら、光が届かなくて当然だなと思い、後ろを見てみる。
………変だな？辺りは真暗闇なのに、光が見えるぞ？恐らく入口からの光なんだろうが、光が届いてないのに何故ここまで明るく見えるんだ？ダンジョンの特性か？出入口はよく分かるようになっているとか？まぁ、よく分からんな。とりあえず、出入口が認識出来るのなら帰り道に困る事は無いな。これなら、もっと奥へ行っても良さそうだ。
入口から目を反らし、奥側へと向けると途端に周囲が暗闇になる。なんだか、これを繰り返すと目が視界がおかしくなりそうだな。
それから暫く進む。進んでいる筈だ。マップは変わらず一本道。これまで、何も起こっていない。モンスターにも出会していないし、脇道がある訳でも何らかのアイテムが落ちてるとかも何も無い。ただ、ひたすら真っ直ぐ進んでいるだけだ。多分。余りにも何も無さすぎて本当に進んでいるのかどうかも分からなくなってきたぞ。夜目も生えてこないし、もしかして、オレは白昼夢でも視ているのだろうか。ゲーム内なのに。
うーん…ここまで何も無いのなら、戻ろうかな。
オレは入口の方へと振り返り、元来た所へと戻ろうと足を踏み出した。
「あれ？」
踏み出した瞬間、洞窟の外へ出ていたようだ。脇を見ると、見慣れたあの腹の立つ標識が見える。オレは、いつの間に外へ出たんだ？洞窟内であんなに歩いたのだから、普通は帰りもそれなりに時間が掛かる筈だ。だというのに、オレの体感では、洞窟の外へ出られたのはほぼ一瞬だったぞ。え？マジで白昼夢を視ていたのか？
ステータス画面から時間を確認すると、洞窟に入って数時間は優に経っている事が確認出来た。時間が経っているから、洞窟内に居た事は確実だろう。多分。
しかし、帰り道の記憶が一切無い。不気味だ。何故オレは帰って来れたのか？帰りは瞬間移動でもしたのか？もしかして、これがダンジョンの基本的な仕様なのだろうか。だとすると、マッピング機能って一体何のためにあるんだ？
まぁ、今のオレの知識では、これ以上考えても答えが出ないから仕様もない。とりあえず、この事はダーマ氏に相談してみるとしよう。ダーマ氏なら何か知っているだろう。
今回はそろそろ潮時だ。オレは死んだふりをしてから、ログアウトした。
