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山と谷がある話  作者:
01.山へ行こう
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 ログイン十一回目。


 いやぁ、嫌な事件でしたね。

 いや、ホント。まさか死んだふりが見破られるとは思いもしなかった。やはり、ユニークボスやエリアボスは騙せても、レイドボスクラスには通用しないという事か。

 リスポーンして降り立つは、イッカク共同墓地。何だか矢鱈と他のプレイヤーが居る。いつもなら、オレかゾンビーフ氏くらいしか居ないのに。まぁ、原因は例のアレもとい突如として爆誕してしまった“暴食”のキール(レイドボス)だろう。

 普段ならアンデッド以外のプレイヤーはリスポーン地点として利用出来ないのだが、この共同墓地の周辺エリアがレイド専用エリアに変えられた事で、アンデッド以外のプレイヤーも多く居る。

 どいつもこいつも強そうな装備に身を包み、如何にも上級者です、みたいな雰囲気を漂わせている。


 おや?アレはもしかして、骸骨兵(スケルトン)か?何だか一際高級そうな装備を着ているスケルトンらしきプレイヤーを見掛けた。アレは恐らくスケルトンの上位種の一つなんだろう。どれだけレベルを上げれば、アレに辿り着けるのかは分からないが。

 ………ちょっと聞いてみるか。



 ******



 いやぁ、有意義な情報交換でしたね。

 件のスケルトンプレイヤーは、アンデッド系の上位種の一つである死の超越者(オーバロード)という種族らしい。彼は、始めの種族がゴーストだったため、スケルトン系列に限らず種族レベルを上げれば成る事が出来るかも………との事だった。

 余りネタバレを良しとはしない性格らしく、好感の持てるスケルトンであった。

 種族の情報を教えて貰った代わりに、オレは“暴食”のキールの情報…というかレイドボスに成った時の事を教えた。

 どうやら、モンスター同士の共食いによってレイドボスが誕生するのは、まま在る事らしい。アンデッド系のレイドボスは初めてとの事で愉しみだとも言っていた。アンデッドのレイドボスとか、面倒の極みだと思うんだけどな。



 さて、共同墓地からエルデス山へ行く道はレイドボスという存在のせいで物理的に絶たれてしまった。となると、ロッヂ蜘蛛の巣に行って、上の方のマップ埋めでもするかな。

 え?レイドボス?行くわけないだろう。


 ロッヂ蜘蛛の巣への行き方だが、彼のオーバーロード氏から有益な事を教えてもらった。なんと、各リスポーン地点からならば他のリスポーン地点までテレポート移動出来るというのだ。勿論、この共同墓地でも可能だ。なんなら、彼はそれを使ってここまで来たと言っていた。


 テレポート出来る場所は霊廟との事だ。この墓地にもそんなものあったんだな。

 オレは教えられた場所…墓地の中心部にある崩れかけ、植物の蔦で覆われつつある霊廟に入っていった。


 ここで、マップを開きロッヂ蜘蛛の巣を選択すると。

 お、『ロッヂ蜘蛛の巣にテレポートしますか?』という表示が出た。勿論『はい』だ。

 目の前が一瞬暗くなり、明るくなると、狭い部屋のベッドに立っていた。

 この狭さは間違いなくロッヂ蜘蛛の巣。まぁ、このゲームでベッド見た所なんてここしか無いんだが。

 借りた部屋を出て、階下に降りるとダーマ氏がカウンターからこちらを見ていた。


「よぉ、久しぶりだな?今回は何処へ行くんだ?」


「………久しぶり?実はあの後、死に戻りしてな。諸々あって、山下のイッカク共同墓地からテレポートで飛んできたんだ」


「なるほど、例のイッカク共同墓地か。そんで、トワさんは、レイドボス討伐に参加しないでこんな所に来て良かったのか?」


「オレ程度のレベルじゃあ、役に立たないし、レイドボス戦を見学するにも危険だからな。この山のマップ埋めでもしようかなと」


「まぁ、そうだよな。あんなアナウンス入ってんのに、わざわざここへ山登りに来るんだ。………そうそう、トワさんが前取った部屋はそのままにしてあるぞ。他に客も居ないからな」


「あぁ。部屋が無かったら、小屋の中に直接飛べないらしいから助かったよ」


 一頻りダーマ氏と会話した後、山小屋の外へ出る。下の方では今頃レイドボス対上位プレイヤーの戦いの火蓋が切られているんだろうな。まぁ、オレには関係の無い話だ。とりあえず、頂上でも目指してみるか。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダーマ氏は癒やしだなぁ
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