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いやぁ、嫌な事件でしたね。
いや、ゾンビーフ氏との話ではなく。ちょっと空気読まない感出てるけど、アレがゾンビーフ氏の特徴なのだし、余りそういうのよくない。
まぁ、例の尾根から転げ落ちた事だ。
強風が吹いていた事、骨だけのオレはそもそもの体重が軽い事を色々と失念していた。何普通に歩いて行こうとしていたんだオレは。風に煽られないように、身を屈めて進むべきだった。
あそこまで行くマップは出来ているし、ルートも確保出来ているので転げ落ちた尾根に着くのは前回よりも早く行けるだろう。多分。
しかし、他のルートを開拓したい欲もある。いや、それより先にあの灯りの発生源を確認するのが先か? いや、でもそこまで行ったらもっと上へ、みたいな感じで頂上を目指そうとする気がする。とすると、今の内に他のルートを開拓するのが良いか?
考え事をしながら歩いていたが、今回はエリアボスもレイドボスにも遭遇する事なく、登山道入口に着いた。まぁ、あの共同墓地が若干山間に立地しているので、登山口もクソもないんだが。
前回はもうちょっとゾンビが居たような気がするが、今回は殆ど遭遇しなかった。もしかしたら、近場のゾンビ達はゾンビーフ氏がやっているイベントに引き寄せられているのかもしれない。
やはり、前回辿った道が最善のルートとは思えない。マップを埋めつつ、他のルートを開拓しよう。
木々の間を抜け、茂みの中を歩く事暫し、何か明らかにヒトの手が入った道に出会した。
これは、もしかして、既に整備された登山道があるのか? という事は、この山に登る奴がそれなりに居るという事か。最初の街近くの山に意味深にある登山道。やはり、あの灯りはダンジョン関係である可能性が高いか? ダンジョンが関係しているなら、道がある事も頷ける。
とりあえず、この道を進んでみるか。何処に通じているのかも気になるし。
山道を歩く。うん、明らかに前回オレが辿った道より歩きやすい。アレは道なき道を無理矢理歩いていたからな。
この登山道、整備はされているのだが、登っている他のプレイヤーなりNPCなりを全く見ない。出会うのはゾンビだけだ。登山道やその周辺に屯するゾンビをやり過ごすのは、正直始めの頃は難儀した。だが、今では対処法を確立し、死んだふり一回で済むようになった。
どうやら、奴等は音を頼りにしているらしく、石ころを投げて音を出すと投げた方向に寄っていく習性があるようだ。これに気付いたオレは、邪魔になりそうなゾンビを見掛けると、その辺の石ころを拾い、邪魔にならない所へ向かって石を投擲。その後、速やかに死んだふりをすると奴等はこちらを気にする様子もなく石ころの方へ向かってくれる。
そんな調子でサクサクと進み、例の灯りが見える所まで来た。時間を確認すると、もう結構な時間が過ぎていた。ぶっちゃけると暗い。ゾンビーフ氏の話が、ちょっと?長過ぎたようだな。
オレは死んだふりをし、そのままログアウトした。