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山と谷がある話  作者:
03.再度山へ行こう
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 ガタガタと音が鳴っていたのは武者震いだったのか何だったのか。とりあえず今言える事は、サリエス氏から発せられるプレッシャーが凄い。


「マルナロア王の系譜である私でも骸獣とやらの相手は不可能であると?」


 いやぁ、凄いプレッシャーだ。サリエス氏の周りに居るような普通の奴だったら思わずブルっちゃうね。オレは筋肉が無いので震えなんてものとは全く無縁なので。

 サリエス氏は片腕を上げ、自身の兜に手を掛ける。

 何をするつもりか何となく分かったぞ。アレだな。今全身鎧を着ているのは自身の力をセーブするための拘束具で、それを脱ぐ事によって実力を発揮するキャラとかそういう感じなのだろう。さもなきゃ、こんな行軍で全身鎧を着込む理由が無いしな。


「サリエス殿! なりませんぞ! 今ソレを脱いだらどうなるか分かっておいでか!?」


 ニース氏が悲鳴のような声を上げ、サリエス氏を掣肘する。やっぱりオレの予想は外れてはいなそうだ。あの鎧に秘密があるのだな。


『あぁ、大きな匣で何かよく分かりませんでしたが、“完全なる闇”ですね』


 ん? “完全なる闇”? 何だそれ?


『“完全なる闇”は対星冥獣戦の初期に投入された概念兵器です。分かりやすく言えば、私が以前使った簡易ブラックホール(ゴミ箱)に命令系統を埋め込んだ物です。使用すると指定された物を吸い込む特性から、星冥獣を削り殺すために使用されたと記録されています。………余り効果はなかったようですが。普段は“カートリッジ”と呼ばれる特殊加工された匣に収納されていたそうです』


 なるほど? サリエス氏は、過去に星冥獣戦に投入された簡易ブラックホール(ゴミ箱)の末裔という事になるのか。………ん? 末裔って事は生殖機能があるような言い方だよな? 概念兵器なのに、そんなものあるのか?


『私が普段使っている物は、吸引出来る許容範囲を超えると崩壊するのですが、“完全なる闇”は崩壊する前に自身の一部を切り離して分裂するように設計されています。末裔という事は、それが恐らく代々続いて行ったのでしょう。ただ、星冥獣戦の終結と共に全ての“完全なる闇”は崩壊処理をされた筈なのですが………どうやら、彼はそれから漏れたモノの末裔なのだと思います』


 分裂か………。まぁ、そうだよな。ところで、サリエス氏の先祖………この言い方が正しいのかは分からないが。先祖は星冥獣と交戦していたという事だよな? それなのに、骸獣の事を知らないのか? 概念兵器だろうと、敵のデータって植え付けられているモノなんじゃないのか?


『恐らくですが、記録の引継ぎに支障をきたしていると思われます。もしくは、何処かの代で記録を欠損した可能性もあります。私の所属の部署とは違う管轄ですので、詳しい事は分かりませんが』


 まぁ、設定では千年以上経っているんだ。何処かの弾みで記録を失うなんて事もあるだろう。

 ところで、気になったんだが、“完全なる闇”があるって事は、“完全なる光”ってのもあるのでしょうか?


『この星系の恒星ですね。お父様、星冥獣が攻めて来たのは、この星だけではありません。奴等の手によって星系内の半数以上の星が消失し、恒星もエネルギーの七割を失い崩壊寸前でした。それを“完全なる光”で補填し、崩壊を免れたと記録されています。この星で星冥獣を討滅出来たのは僥倖でした。他惑星のTYPE機の尽力あっての事ですが、この星で宇宙のゴミ共(星冥獣)の暴挙を止められた事は大いなる幸運でした、と記録されています』


 ちょっと待て。何だか凄い気になるワードが色々とあるんだが。

 とりあえず、太陽(アレ)が、“完全なる光”? 元の太陽は崩壊している? 何だそりゃ。この世界(ゲーム)の設定どうなってるんだよ。それに、他の惑星にもアルみたいな生物兵器が居る? もしかして、世界情勢(ワールドストーリー)が進行してけば、他惑星にも進出するんだろうか。設定だけの筈が無いだろう。………まぁ、それは今の話に関係ないから置いておこう。

 サリエス氏の、例の“完全なる闇”とやらは本当に対骸獣に役に立たないのか?


『はい。私が居るのならば、居ても居なくても状況は変わらないような存在です。それに、“完全なる闇”はその身体を封じている匣から外に出た時点で概念崩壊が始まります。つまり、彼があの鎧を脱げば、死にます。お父様、本当にそれで良いのでしょうか?』


 良くはないな。調査隊の代表が居なくなったら、誰があの集団をまとめると言うのか。まぁ、ニース氏がやるんだろうが、あのヒト押しに弱そうだし難しいかもしれない。

 それに、王国の末裔という肩書もあってか、人望も厚いように思えた。アレをむざむざと殺してしまっては恨まれる事は必至だろう。


「………そうだな。すまない、私もどうかしていた。これは私が出たとして、どうにかなる規模ではないのだろう。それに、皆に累が及ぶ。すまないが、誰か本隊に使いを」


 アルと内緒話していたら、いつの間にかサリエス氏が冷静になっていた。そういえば、さっきからシーン氏の外套姿が見えないが何処に行ったんだ?


「シーン隊長が既に行きましたよ。私達も直ぐに離れましょう。トワ殿、何処まで離れればよいでしょうか?」


 サリエス氏を無数の布で羽交い締めにしていたニース氏が、サリエス氏の拘束を解きながら問いかけてくる。そういえば、何処まで行けば安全圏なんだ?


『分かりやすく言えば、骸獣の端末が無い地点、山向こうの所でしょうか。ただ、安全性を求めるのならば、山二つを越えた所かと思われます』


 山二つ分か………。結構遠いな。まぁ、仕方あるまい。


スプラトゥーン3たーのしー

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― 新着の感想 ―
[一言] 実は、ピラミッドの中に入れて貰えたら安全だったりしないのかな? 残念、腕が疼いたりもしない脱いだら終わりな人だったらしい そうして、最近、プレイヤーに会わないな~ 会…
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