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山と谷がある話  作者:
03.再度山へ行こう
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 オレの必死の抗議もあって、アルの掌に乗って移動する運びとなった。ここに至って、山沿いを歩いていくのも面倒なので空を飛んでいく。道中の骸獣の端末は余り周りに被害が出ないように焼き払う事にした。流石に一々降り立って伐採作業するのも大変だからな。

 上から見ているとよく分かるが、ここら一帯は紅い森が広がっている。アルの分析によると、アレが全て骸獣の端末らしい。多すぎて嫌になるね。

 この広すぎる紅い森で思い出したのだが、アレは確か“紅曜樹”と呼ばれていた筈だ。植物らしからぬ硬質な葉と異質な生態に変な木だと思っていたが、まさか樹木ですらないとはな。

 とりあえず、今の所は目に映る全ての森が紅耀樹に侵食されている。つまり、ここらは骸獣の端末しか居ない訳で。それなら何も遠慮する事は無いとばかりに、先程から怪光線(ブレス)を吐き出しながら飛行している。そのお陰でオレ達が通った所は一直線に紅耀樹が焼き払われているのが分かる。焼き払っていない残りの分は、骸獣本体を滅すれば同時に滅びるだろうとの事で今は放置だ。


『む! お父様、進行方向に何かの集団が居ます』


 アルがガチンと口を閉じる事で怪光線を放つのを止める。

 この森に集団? ここがどういう場所か分かっていない………いや、オレもついさっき“紅耀樹”がヤバい奴だと知ったばかりだし、下に居るという集団が知らないとしても無理は無いか。

 しかし、何だ? その集団ってのは何を目的にしてこんな所に?


『このまま進めば鉢合わせになりますが、如何なさいますか?』


「うーん、ちょっと話を聞いてみよう。あちらの目的が何であれ、ここから避難させないと拙いだろうし」


 少し進むと眼下に黒っぽい一団が見えて来る。

 何体か“紅耀樹”より背の高いのが居るな。巨人か? 巨人で思い出すのはアウリィ氏だが、もしかしてあの一団が戻ってきたのか?


 何だか見覚えのあるような一団を飛び越え、一団から少し離れた所で停止。周囲の紅耀樹を焼き払い地面に降り立った所で、アルはオレを地面に下ろしてくれた。

 そのまま少し待つと、先程の一団がポツポツと姿を現して来る。

 多種多様な種族の集まりのようだが、見覚えのあるモノは居ない。気の所為だったのだろうか。まぁ、あの時の彼等でなくとも警告をしておかなければならない。


「えーと、オレの名前はトワ。“旅人”だ。怪しいモンじゃない。ただ、そちらにちょっとした警告をしに来ただけだ」


 一団の面々はオレの言葉に顔を見合わせた後、代表と思われるモノが進み出てくる。


「“旅人”のトワ様でしたか。私は、この隊の折衝担当のニースと申します。それで、後ろの方の関係性等、色々と聞きたい事はありますが………警告ですか?」


 ニースと名乗ったモノは大量の布を全身に纏った得体の知れないヒトガタだった。身体のラインとかも全て隠れているから、見た目だけでは何の種族なのかがさっぱり分からないな。


「そうです。これから後ろに居る奴とこの森の奥に居る奴とで怪獣大決戦を繰り広げるので、是非避難をと」


「………は? 怪獣?」


「敵はこの森に蔓延る………と言うか、この森そのものと言っても過言ではないでしょう。その戦闘は熾烈な物となるでしょう。皆さんはそれに巻き込まれないようにお早く逃げて下さい」


「えぇと。あー、後ろの竜種の方とこの森の奥地に居るモノが争うので避難、という事ですか。えー、我々にもこの奥地に行かなくてはならない事情がありまして、我々が目的を達成するまで延期して貰うことは?」


 まぁ、そりゃあそうだろうな。いきなり怪しい奴等が来てここから立ち退けと言っている訳だ。ニース氏は丁寧な態度を崩してはいないが、周りの奴等が殺気を含んだ目でオレを見ている。


『お父様、やはり説得は面倒……あえ、難しいようですし、手っ取り早く私が脅しますか?』


 さらりと面倒だから脅すとか言わない。

 ここは穏便にな。手を出すのは、向こうが出してからにしてくれ。そうでないと、正当防衛が主張出来ないからな。


「それは、出来ません。オレ達としてもこの機を逃す訳にはいかない。ここを見逃せば、この地は枯れ果ててしまいます。ニースさん達の事情も理解出来ますが、優先度は変えられません」


「そうですか………。では、少々お待ちを。代表の者に話して来ますので」


 ニース氏はそう言い残し集団の中へと戻って行った。あとに残されたのは、オレとオレの周りを取り囲む殺気立った奴等。オレの後ろでアルが睨みを効かせているのが効いているのか襲っては来ないが、邪魔者が居なければ即排除みたいな感じがする。まぁ、つまりは殺意が。


 連々と現実逃避しているオレの目の前にピッと光の線が走り、直ぐに消えた。地面には焼け焦げた穴。それを見てどよめく集団。先程の殺意は見る影もなく、代わりに蔓延するのは、畏怖か。

 どうやら、アルが威嚇するかのように極々少量に絞った怪光線を発射したらしい。あんなんでも誰かに当たれば即死は免れないんだろうな。なんたって、避けるよりも早く照射され、かつ、受ける=死というものだ。周りの連中が恐怖を抱くのも無理からぬ話だ。

 ニース氏、早く戻って来ないかな。殺意は薄れたが、未だに地獄のような雰囲気を早く何とかしてほしい………。



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