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「今のは、骸獣の声………か?」
『そのようですね。末端の端末を数本引き千切っても奴は大して痛みを感じない筈ですが、傷口にちょっとした精製毒を流し込んだのが効いているのかもしれません』
アルさんは毒も自身で作れるのか。寧ろこの超生物に出来ない事って何だろうと思えてくるな。
しかし、結構な本数を抜いたと思うんだが、あれでも末端なのかよ。本体は遠くに居るっている話だし、本体から遠く離れる程に感覚は鈍くなっていくのかもな。
引き千切られた端末の体液で、周囲は赤く染まっていて視覚的にとてもグロい。
ところで、あの骸獣の端末………何か見覚えがあるような。
「ところで、こうして端末を処理した訳だが、何か分かったのか?」
『本体はあちらの方角に居ます。それと、この骸獣は“大地の力”を吸収して育ったモノのようです』
アルは骸獣の本体が居るという方角を指し示す。マップを確認するとアルが指差す方角はピラミッド周辺のようだ。やはり、一番怪しい箇所に居るのは間違いなさそうだな。
『骸獣は星のエネルギーを養分にして成長します。このエリアに蔓延る骸獣は“大地の力”、つまりは地脈エネルギーを摂取していると考えられます。早いうちに、遅くとも成獣に成る前に叩かないと、周囲の土地が枯れ果てます』
なんですと? 成獣? 骸獣って成長するモンなのか?
いや、それよりも星のエネルギーを摂取している? それで、ここの奴は地脈エネルギーを掠め取っているという事なのか? その影響で土地が枯れるっていうのか。
今迄のアルの説明で、奴等は星冥獣の遺骸から出てきたから骸獣なのだと思っていたが、それを聞いてしまったら正しく害獣じゃねぇか。
これってもしかして、骸獣ってのは早めに討伐しないとヤバい奴なのか? そういえば、海中都市の近くにも骸獣が居るとか言っていたな。アレもやっぱり星のエネルギーを吸っているような奴なのだろうか。
「この間の、海の奴は大丈夫なのか?」
『アレは深淵に封印されているので封印が解けるまでは問題ないと思われます。あの封印は、空間に骸獣を固定しているので、骸獣自体の時間が止まっているため奴は何も出来ません』
海の方は特に問題なし、と。しかし、そんな封印が使えるのなら、ここらに居る奴にも封印をしておいて欲しいモノだな。まぁ、当時の状況は知らないし、封印が出来ないような事情が何かあったに違いない。知らんけど。
『それと、この地に居る骸獣なのですが、大規模に拡がっているようで、全容が計り知れません。私として、端末も本体も関わらず根刮ぎにしてやりたい気持ちなのですが、流石に時間が掛かり過ぎるかと思われます。ですので、このまま本体の方へと向かいつつ、道中の端末を根伐りにしていきたいと思うのですが、どうでしょうか?』
「あー、オレとしても、その骸獣がヤバい奴だってのが分かるから、アルの好きなようにやってくれていいと思うぞ。………それに、オレには骸獣に対抗する術が無いから、結局アル任せになるだけだしな」
『ありがとうございます、お父様。では、早速』
アルは今迄の深刻そうな声から明るい声へと切り替え、オレをヒョイと摘む。
あれ? これってもしかして飛んで行こうとしてます。………待って! せめて! せめてもっと無難な位置に! 掌に乗せて!




