102
アルは骸獣が近くに居ると告げた。
え? こんな所に骸獣が居るのか? 確かにここは最初の待から大分離れた所で、オレ以外のプレイヤーは誰も来ていないような場所だが、まさかこんな所に?
『気配はするのですが、薄いし散らばっています。恐らく骸獣本体ではなく、感覚器官、端末が配置されていると思われます。お父様はここの土地を知っている様子ですが、何処か骸獣が居るような場所の心当たりはありませんか?』
うーん、心当たりねぇ………。確かに、ここらには一度来た事があるとはいえ、全てのフィールドを行った訳ではない。骸獣が居そうな場所といえば、例のピラミッドだろうか。
今まではてっきりクルジャン王の墳墓だと思っていたんだが、思えば奴は遊戯施設の管理人だったな。もしかしたら、あそこに居座っているだけで、あのピラミッド本体とは関係ないのかもしれない。
でも、あのピラミッドはここからそこそこ遠いんだよなぁ。本体があそこに居るとしても、その端末がここまで伸びてきているのか? 骸獣ってどういう姿形をしているのかさっぱり分からんのだが、アルに特徴とか何とか教えて貰うか。
「ところで、骸獣ってのはどういうカタチをしているんだ?」
『元となった星冥獣の姿によって様々です。個体によっては元のモノよりも形態が変化している事もあり、外見ではこれといった共通点は無い筈です』
なるほどなー。さっぱり分からない奴じゃねぇか。じゃあ、見た目で判別出来ないのなら、どうやって骸獣である事を判断するんだって話だ。
まぁ、アルには骸獣を認識出来る機能が在るんだろうが。やっぱり、オレはこういう事に関してはまるで役に立たないな。
『お父様、私はこれからそこらの端末を潰して解析しようと思いますが、宜しいでしょうか?』
「あー、余り地形を変えないようにな?」
宜しいも何もアルは既に準備万端じゃないか。ここで、オレが宜しくないと言ってもアルが止まるかどうかは分からんし、下手をしたらアルが暴走するかもしれないしな。オレには統制官として、強制命令権があるようだが、余り使いたくはないし。まぁ、端末をやる位ならそんに被害は無いだろう。
『では、行きます』
言うが早いがアルは擬態を解除。光り輝く竜種となり、森へと突っ込む。メキメキと木々を薙ぎ倒し、幾つかの樹木を引っこ抜こうとする。紅い枝葉を付けた樹木は強く引っ張られた事で根ごと引き抜かれ………あれ? 幹が地中にも繋がっている? そのまま耐えきれなくなったかのようにブチリと千切れ、赤い液体が噴出する。
あれは、木なのか? それとも、アレがアルの言う骸獣って奴なのか?
アルは、引き千切った木をまじまじと見詰め、彼方へと視線を向ける。あの方角に本体が居るのだろうか。
視線を切り、周囲の様子を観察するように見回し手に持った樹を放り投げる。その後、周りに群生している木々を同じように引っこ抜いていく。口から怪光線を吐かない辺り、環境に気を使っているらしい。
辺り一帯を焼き払わなかったが、瞬く間に森が更地となった。
最後の一本を引き千切った際、空気が震え何処からか慟哭が聞こえたような気がした。