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ログイン三十三回目。
ルルーナル氏の所を発ち、それなりに遠い場所まで来た。あれから特に変わった事は無く………無かった事にしておこう。とりあえず、アルの性能で何とかなったので、特に困った事は起きませんでしたね。
『“角無し”を|戦闘不能の重症を負わせた《ちょっと小突いた》程度ですし問題ないですよ』
そうそう。特にオレ達に実害は無いし問題ないな。
………いや、あるわ。関わらない筈だったのに、相手から喧嘩を吹っ掛けて来るから、ついやってしまった。オレ達は“角有り”陣営じゃないと何度も言ったのに、無視して襲ってきたからこらは正当防衛ですよね。ちょっとやりすぎてしまったかもしれないけど、元はと言えば“角無し”が悪い訳で。
まぁ、これでベンジャミン氏達のクエストも何らかの形で進むんじゃないか? そう考えれば良い事をしたような気がする。
とりあえず、あの“角無し”のベルツ氏を置き去りにしてしまったが大丈夫だっただろうか。死なないようにはしたが、周りの原生生物に襲われてしまった、かもしれない。………まぁ、その時は運が悪かったと思ってもらおう。
そんなこんなで、とりあえず目的地付近に辿り着いた。大体ここら辺が、光亡の洞窟の出口付近と緯度が同じだ。つまり、ここから光亡の洞窟まで移動する運びとなる。まぁ、光亡の洞窟に用は無いんだが、洞窟出口付近の森………のピラミッドもどきに用がある訳で。いや、クルジャン王はどうでもいいんだが、目印としては優秀なランドマークだ。アレを目印にして進めば、例のヒルトロール村へと辿り着けるだろう。
オレの今回の目的は、観光と元ヒルトロール村の後始末だ。オレはアイテム化していてどうにもならなかったとはいえ、間接的に彼等を不死族にしてしまった責任の一端が有ると思っている。あの時のオレには何も出来なかったが、幸いにも今はアルという絶対的な暴力が在る。
せめて、アルの一撃で葬ってやるのが情けだろう。………あと、レイドボス倒したらどうなるのかを体験してみたい。
オレ達は山を下り、マップに従って山間を歩いている。この土地は、最初の街から大分離れている故に強力なモンスターが出やすいらしい。
しかし、ここもアルの威圧感のせいで生物を全く見ない。先を急ぐなら兎も角、観光するのならやはり、威圧を切ってもらうべきか。でも、そうすると面倒臭いのが寄って来るから時間取られるんだよなぁ。とりあえず、元ヒルトロール村の件をどうにかするまではこのままでいいか。
『お父様!』
「え!? 何だ! 敵か!?」
アルが珍しく鋭い声を出す。今までの、のほほんとした空気はもはや無く、何かを警戒しているような感じがする。
アルがここまで警戒する相手、何かヤバい奴が近くに居るというのだろうか。
アルが警戒している事から、度胸試しのような感覚で突っ込んでくる身の程知らずが居る訳ではなさそうだ。もしかして“角無し”勢力が追ってきたのか? それはそれで面倒臭いが、アルが警戒する程ではないような気がする。
一体何を感じ取っているんだ?
『お父様、骸獣が、近くに居ます』
“角無し”クンの件が冗長に感じたので全カットしたら大分短くなったわね…