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ログイン三十一回目。
ルルーナル氏の長ったらしい話を纏めるとこうだ。
ルルーナル氏を召喚した術者との契約は切れていたが、核に刻まれた命令は生きていた。氏は、“星の獣”も仇為す者も知らないが、オレ達を前にした事によって、原初の命令によって思考が塗り潰され凶行に至ったとの事だ。
そして、命令が刻まれ歪んだ核を破壊した事に感謝している事。本当に?
『本当だとも。これで、儂は誰とも知れない召喚者の意志に左右される事が無くなったのだ。まぁ、本当の意味で召喚者の手を離れ、この火山と一体となってしまったのだがな』
アルの話では、ルルーナル氏は半ば精霊化していたのが、この機に精霊の仲間入りとなってしまったようだ。ただ、普通の精霊ではなく、精霊モドキらしいが。
『端的に言えば、この山限定の精霊ですね。良い意味でも悪い意味でも、この山に縛られているのでこの火山の外へ出る事は叶いませんが』
なるほど。より強い結び付きによって、この火山限定の精霊という訳だな。つまり、そこらに居る火蜥蜴と大差が無いという訳か。
『いえ、違います。そこらに居る火蜥蜴は精霊界から物質界へと顕現した自然現象ですが、ルルーナルは物質界の存在が変質した事によって精霊に近くなったモノ。火蜥蜴はこの山以外でも生きていけますが、ルルーナルは野垂れ死にます。つまり、ルルーナルは火蜥蜴の下位互換です』
あぁ、最初から精霊である火蜥蜴と、元々は不死竜である事の違いかぁ。まぁ、それは仕方ないね。
チラリとルルーナル氏を見ると、ショックを受けたような雰囲気になっている。………まぁ、元気出せよ。元々が竜種っていうのだけでも誇りに思わなくちゃな。
『確かに身体は竜種ですが、精神の方が元々竜種だとは言い切れないのでは?』
シッ。それは言っちゃいけません。
確かに造られたアンデッドならば、身体と魂が別の生物でも作成可能だろう。だが、ルルーナル氏が竜種って言ってる………言ってたか? まぁ、いいか。
余りそういう事は思っても言わないように。相手が不快に思って凶行に走るかもしれないからな。
『あー、ところで、その、儂に刻まれていた“星の獣”とは一体何なのか知っておるか?』
あぁ、命令には従わざるを得なかったが、ルルーナル氏自身は“星の獣”が何なのかを知らなかったらしいな。
アルに詳しく説明させるのもいいかもしれないが、それだとアルの正体をバラす事になる。折角、ルルーナル氏がアルの事を竜王種だと勘違いしているので、それを正さない方がオレ達にとって都合がいい。
「オレも詳しい事は知らないんだが、この星の外から来た侵略者、だそうだ。ソイツ等自体は大昔に滅んだと伝えられているが、ルルーナルさんを召喚した奴が刻んだ命令を加味すると、生き残りが居るのかもな。何でオレ達が“星の獣”の敵認定されているのかは知らないが」
まぁ、本当の所は、侵略者である星冥獣は滅んでいるが、その残滓である骸獣はまだ生き残りがいる。
そして、アルはその骸獣を殲滅する事が使命と言うので、奴等にとっての大敵だ。ルルーナル氏が誰かにオレ達の事を話したりする事を危惧して、ちょこっとボカシて伝えるのも悪い手ではないだろう。重要なのは、“星の獣”はルルーナル氏含むオレ達にとって、敵であるという事。そこを間違えなければ大丈夫な筈だ。
『なるほど。了解した。来るかは分からんが、次に儂の元召喚者が現れたら殺しておこう。今迄の分とこれからの分を含めて、な』
うーん、頼もしい言葉を頂きましたね。まぁ、ソイツはもう来ないと思うけど。
しかし、『“星の獣”に仇為す者を殺せ』ね………。その命令を下したのは、まるで“星の獣”の味方………というか、信奉者のようなモノか。骸獣を崇めるカルト宗教みたいな? 今の時点では分からんが、敵は骸獣だけではないのかもしれないな。
アルの望み通り、骸獣だけを叩けばいいのだと思っていたが、骸獣に辿り着くまでに取り巻きをどうにかしなければならないようだ。
まぁ、そこら辺は強いヒト達が何とかするでしょ。オレ達というかアルは、有象無象を取り除いた後で、骸獣を料理すればヨシ。そういう事にしておこう。