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山と谷がある話  作者:
01.山へ行こう
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「お兄ちゃん、起きて!これからレイド戦だって昨日言ったでしょ!?」

「いやいや、ちょっと待ってくれよ。オレは、まだまだレイドとか行けるレベルじゃないんだって。まだ、最初の都市にも入れてないんだぞ? それに、お前が居るのって5個も先の都市だって言うじゃないか。それなのに、オレにどうしろって言うんだ?」

「だって、お兄ちゃんとやっと遊べるって思って………ごめんなさい。私、独りで浮かれちゃって。そうだよね、お兄ちゃんにも都合があるもんね………」

「はぁ。しょうがないなぁ。分かったよ。出来る限り頑張ってみる。でも、お兄ちゃんは始めたばかりの雑魚プレイヤーだからな? 戦力の当てにはするなよ?」

「そんな事ない! お兄ちゃんは世界一強いもん!」

「いやいや、今のお兄ちゃんはゾンビ相手に苦戦するような雑魚なんですよ。まぁ、これからどうなるかは分からんけど」

「流石お兄ちゃん! でも、無理しないでね! 待ってるから! いつまでも!!」









 っていう事がありましてね。いやぁ、ただひたすらゾンビを千切っては投げ、千切っては投げと群れてくるゾンビを処理していたら、脳が勝手に現実逃避をし始めましてね。自分はここで何をしているのかと。ただひたすらゾンビ相手に無双ゲームやってんじゃないぞと。彼女みたいにレイドボスと戦える日はいつになるのかと思ってしまいましてね。何だか脳内異母妹(いもうと)が語り掛けて来るんですよね。早く先に進もうぜって。まぁ、実際には肉親はもう誰も居ないんですけど。しかし、イッカクに行くためにこの墓地から出るとひたすら集ってくるゾンビは一体何なんですかね? あのゾンビは一体何処から来ているのか………もしかしたら、近場のフィールドでゾンビが大量発生しているイベントでも起こっているのか。だとすると、ゾンビ密度が高い方に行けば、この原因がはっきりするのでは? と思って原因を探りに行ったら、何だか強めのゾンビが混じりだしましてね。まぁ、言うてゾンビなのでね。自分が持ってるゾンビスレイヤーのゾンビ特攻で他のゾンビと同じように千切っては投げ千切っては投げと処理していたら、何だか寂れた村に辿り着きまして。もしかしたら、この村がゾンビ大量発生の現場かもと思って、処理の合間に調べてみたんですけど、まぁこれが全然皆目検討も着かない感じでしてね。何か日記でも残されてないかなと家探ししたんですけど、全然見つからなくてですね。唯一見付けた日記というか手記がありましてね。これがまぁ面白いんですよ。何て書かれていたと思います? 実はですねぇ、“かゆい うま”ってだだ一言が書いてあったんですよ。いやぁ、つまりはそういう事なんですね。自然発生的なイベントかと思っていたら、実際は人為的に引き起こされたものだったという事なんですかね。つまりは、あの村はゾンビの発生現場という訳ではなく、あの手記を置いておくために配置されたゾンビらしいんですよね。いやぁ、このイベント?を起こしているプレイヤーはいい趣味していますよ。そうだ、知ってます? これの元ネタは、やはりこれまた人間達がやっているゲームに出てくるモノなんですよね。本当はこの一言が載っているのは日記なんですけど、そういう所は再現しなかったのか、するつもりがなかったのか、はたまた知らなかったのか。………しかし、あのゾンビはウィルス性のモノだとしたら、自分は一体何なんですかね? プレイヤーとして選択しているのだから、自然発生的な? 自然発生ゾンビとは一体………いやまぁ、この手の設定を連連と考えていたら、何だか矢鱈と大きなゾンビが出てきましてね。これはいよいよ“らしく”なってきたぞとちょっと気合入れたものの、奮闘敢えなくキルされてしまいまして。ちょっとまだまだ調べたい場所があるんで、幽体状態で周囲観察ついでに、マップに村の場所を書き込んでから墓地(ここ)へとリスポーンしたら丁度良くトワさんとお会い出来ましてね。あぁ、そうだ。あの時、トワさんが落ちてしまわれた後に、また一人アンデッドプレイヤーが来てくれましてね。その方とも楽しくお喋りしていたんですが、その方もいつの間にか居なくなってしまっておられてですね。もしかしたら、都合が悪かったのかなぁとか引き止めてしまったみたいで申し訳ないなぁとか思いましてね。しかし、余り会う事もないだろうアンデッドプレイヤーですからね。自分のようにテンションがアガってしまう者が居ても許していただきたいものなのですよね。ところで、これから自分は例のゾンビ村に行こうと思っているのですが、トワさんもご一緒にどうですか? いやぁ、独りで奮闘しているのも少々飽きてきてしまってですねぇ。それで、先程の脳内異母妹の話に戻るという訳なんですよ。やはり他のプレイヤーと協力してこそのゲームですからね。独りよりも二人。二人よりも三人、と多人数協力プレイが醍醐味ですから。それだからこそレイドボスが存在するようなモノですからね。あ、それでどうでしょう? 一緒に行って頂けませんか?」




 いや、知らんがな。




 共同墓地にリスポーンすると、ばったり偶然にもゾンビーフ氏と再会した。

 あの時はちょっと終わりが見えなかったしで先に無言でログアウトした負い目もあって、声を掛けたらこんな感じだ。

 相変わらずゾンビ無双とかいうゲームをやっているらしい。ゾンビのモンスターハウス………村か。に一緒に行く事を誘われているが、冗談ではない。

 オレはゾンビ一体相手でも死に戻りしているような軟弱スケルトンだ。ゾンビーフ氏について行っても分断されて周りからタコ殴りにされて死に戻りする運命しか見えない。一応死んだふりでやり過ごす事も出来るだろうけど、ゾンビーフ氏の話だと村に着くまでほぼ戦闘だったらしい。それならば、オレが行ってもお荷物以外の何者でもなくなるだろう。それにオレは、あの灯りが何であるかを調べなくてはならない。


「申し訳ないですが、オレが行っても足手纏いになるだけだし、それにやる事もあるので」


「アッ、そうですか。やる事があるのに引き止めてしまって、こちらこそ申し訳ありません。自分がゾンビ村の殲滅という目的があるように、トワさんにも優先するべき事があるのは当たり前ですよね。それでは、自分は急ぎますので、もう行きますね。では、お互い頑張りましょう!」


 ゾンビーフ氏は前回よりも肉が削げ落ちた腕を振り、共同墓地を出ていった先で早速ゾンビを殴り飛ばしていた。

 あの人、本当にゾンビとのエンカウント率高いな。どうなってるんだ。墓地の入口付近には、さっきまでゾンビの影も形も無かったぞ。


本文に出さない設定を語らせるのに便利なお喋りキャラ、ゾンビーフ。ただ、須らく長文にするので苦手なヒトは苦手かもしれないゾンビーフ。


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[一言] 朝起きたら隣に会社の中年上司が寝ていた時みたいな気持ちになりました
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