第7話 限界突破②
クロスボウの熟練度が最大値になったので、他の熟練度を上げることにした。
武器を取り出す為には《ホルダー》からカードを取り出し表出させなければいけない。
戦っている最中にそんな暇は無いので、今回習得しようと思っているのは――
体術だ。
素手なら武器を必要としないし、突然の強襲にも対処できるはず。
毎度のことながら俺はトレント狩りにやって来ていて、これから初めての接近戦を試みようとしていた。
もしもの時のために、骸骨の仮面を装着しておく。
これで防御力の底上げをしておけば、攻撃を喰らってもマシだろう。
何事も慎重にやる。
それが無事に生き残るためのセオリーなのだ。
「よし。行くぞ」
俺は『潜伏』を使い、トレントの背後にこっそり回る。
というか、素手でどれだけのダメージを与えることができるのだろう?
そもそも素手で倒せるのだろうか?
そんな邪念が思考を支配するが、とにかくやってみなければ分からない。
無理なら潜伏して逃げればいいか。
俺は右拳をトレントの背面に突き出した。
ボーンと破裂するトレントの体。
一撃。
一撃で倒せた。
素手でも十二分にダメージを与えれるんだな。
俺はホッとし他のトレントに視線を向ける。
「?」
だがそこで、おかしなことに気が付いた。
トレントたちは、俺を視認している。
俺の『潜伏』が解けてしまっているようだった。
「なんで?」
襲い来るトレントの集団。
仕方なく俺は、そのままトレントたちを相手することにした。
トレントは鈍い動きで、こちらに枝を伸ばして攻撃を仕掛けてくる。
俺はそれを余裕で回避してみせた。
これぐらいの動きなら、一生当たらないぞ。
俺は風のように動き回り、一撃でトレントを倒していく。
まったく俺の動きについてこれないトレント。
それでも俺は、容赦なく敵を叩き潰していく。
敵の数は20ほど。
殲滅するのにかかった時間は1分ほどだった。
敵に近づくリスクはあるが、クロスボウで遠くから狙うより早かったな。
しかし、『潜伏』はなぜ解けてしまったのだろうか?
攻撃するまでは敵にバレてなかったのに、攻撃をした瞬間に解けてしまった。
接近戦じゃ、潜伏の効果が切れてしまうのか?
どっちにしても、やはり安全圏から敵を叩くのが一番だな。
◇◇◇◇◇◇◇
体術の熟練度を上げ始めてから1週間。
毎日のルーティーンでトレントを倒し、ゴブリンを倒すフリをし、雑用をする。
体術自体は2日ほどでカンストしたが、カード集めに狩りを続けていた。
そしてようやく、『パッシブスキル』が全てLRクラスまで合成できたのだ。
骸骨の仮面もランクSSSになり、『蘇生』というスキルを手に入れた。
これは一度だけ死の淵から蘇ることができるみたいで、慎重派の俺にピッタリのスキルだ。
これで突然死んでしまったとしても、一度は死を回避できる。
『アクティブスキル』も現在手に入れれる物は全て完成した。
『潜伏』は仲間と認識する者も同時に敵から認識されなくなり、『鷹の目』は障害物があろうがなかろうが、10キロ先まで見渡せるようになった。
『警戒』は仲間共々、10キロ範囲の敵を認識することができ、『盗む』に関してはちょっと凄いことになっている。
『盗む』のスキル――
ランクSで好きなカードを盗むことができ、SSで体力を奪えるようになった。
極めつけにはランクSSSで、生命そのものを奪えるようになってしまったのだ。
うん。これは便利だ。
生命を盗むってことは、一撃で敵を倒せるってことだよな?
ただ、好きなカードを盗むことはできるようだが俺の場合Nしか入手できないので、そこだけ恩恵が少ないようにも思える。
まぁ、それを差し引いても十分使えるスキルだ。
どれぐらいまでのランクの敵に通用するのかは分からないが、これの熟練度も上げていくことにしよう。
そして、現在の俺の能力。
島田 司
LV99
ジョブ 合成師
HP 2506(+5012)
MP 907(+1814)
攻撃力 1253(+2506)
防御力 907(+1814)
敏捷 907(+1814)
魔力 1253(+2506)
運 1002(+2004)
ジョブスキル
合成
武器スキル
体術 99
弩 99
アクティブスキル
火術Ⅴ
水術Ⅴ
風術Ⅴ
土術Ⅴ
回復術Ⅴ
心術Ⅴ 2
鷹の目Ⅴ 99
潜伏Ⅴ 99
警戒Ⅴ 99
盗むⅤ
パッシブスキル
HP増加(特大)
MP増加(特大)
怪力
鉄壁
超魔力
俊足
強運
神の加護
毒無効
麻痺無効
石化無効
混乱無効
誘惑無効
病気無効
魔力消費0
HP吸収(特強)
高速成長
これは中々極まってきたな。
病気無効を手に入れてから体の調子が良くなったし、運が上がってから欲しいカードが入手しやすくなってきた感覚がある。
自分の中のあらゆるものがドンドン良くなっている。
「なあ島田」
「はい?」
静かに喜んでいる俺に、山根さんが話しかけてきた。
「そろそろ敵を倒さないと、みんなお前のことを疎ましく思ってるみたいだぞ」
「はぁ……」
俺はよくなっている。
しかし全てが良くなっていく俺に反比例するように、ここにいる仲間たちは俺を悪く思っているようだった。
ま、見た限りでは敵は倒さないのに、食事はしっかりしてるからなぁ。
気持ちはよく分かる。
だから俺は、ある決断をした。
「じゃあ……ここ、出て行きます」
自身を更なる高みに導くため。
更なる変化を求めて、この場を去ることを決意した。
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