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第37話 対決オークキング①

「あ……」


 呼び止めようと思ったが、それよりも早く司の姿が消えてしまった。

 瞬間移動をしたのだ。

 一体何があったのだろう。


「…………」

「司くんがあんな顔をするなんて珍しいです……」


 少し不安そうな表情を浮かべる由乃。

 でも司なら心配ない。

 私も磯嶋さんも、大和だってそう考えていた。


「何があったかわかんねーけどさ、司のことだから簡単に解決して帰ってくるだろ」

「オウ! そうだそうだ。司にできないことはない!」

「……そうですよね……そうですよね!」


 由乃は二人の言葉に安心したのか、笑顔をこぼしている。

 和やかなムードになり、みんなたわいもない話で盛り上がっていた。


「俺、できたらこれからも司について行ってさ……もっともっと強くなりてーんだ。司みたいにみんなを守れる力が欲しい」

「では私と一緒に、司くん帝国を作りませんか? 司くんをこの世界の新たなる王として君臨させるのです」

「い、いや……そんなのにはあんま興味ねえな……って、司はそんなことやりたがってんの?」

「いいえ。私の独断ですが、司くんは王様ぐらいがちょうどいいと思っているんです」

「な、なんかお前、考えが独特だよな……」


 由乃の発想に呆れている大和。

 磯嶋さんは大声で笑っている。

 いい考えだと思っているのか、思っていないのか、どちらかわからないがとにかく笑っていた。


「まぁ、司くん帝国のことはいずれ協力してもらうとして……これからよろしくお願いしますね、大和くん」

「おお。よろしくな。俺下級職だけど……司を見ていたらできそうな気がしてくんだよ。当分足を引っ張るかもだけど、頑張るからな」

「大丈夫です。私も司くんの足を引っ張っているので」

「そう? だったらちょっと気が楽かな。あはは」


 みんな笑っていて……司がいれば何も心配などいらなかった。

 いらなかったはずなのに。


「!」


 突如、周囲から殺気を感じた。

 いつの間にか私たちは、囲まれていたのだ。


「みんな……敵」

「え!?」


 由乃たちは武器を手に取り、周囲を見渡す。


「くくく……楽しそうだな」

「そ、その声……」


 聞こえてきた声に、腹の底でグツグツと怒りと憎しみが湧き上がってくる。


 急に何十ものオークたちが、瓦礫の上や物陰から姿を現せた。

 ハイオークも顔を出し、醜い笑みで私たちを見ている。

 そして……オークキングがドスンドスンと大きな音を立てて、ゆっくりとこちらに近づいて来る。


「か、囲まれてるのか!?」

「……みたいですね」


 大和は額に汗を流し、右に左に視線を何度も移動させ敵全体の動きを見ている。


「人間が急に消えて……まさかこうして舞い戻ってくるとはな。あれか? お前たちは自殺志願者と言う奴か?」

「違う。私たちは、お前を倒す者」

「倒す? お前たちが? どうやって俺を倒すと言うんだ?」


 オークキングはゲスな含み笑いをし、力量を測るように私たちに視線を向けている。

 そして値踏みが済んだのか、ニヤリと口の端を歪ませてオークたちに命令を出す。


「やれ。皆殺しだ」

「オオオ!」


 オークキングの命令に、叫び声で応えるオークたち。

 奴らは全速力でこちらに向かって走り出す。


「ただしいつも通りだ。男の首は落とし、女は焼き殺す。いいな」

「オオオオオ!」


 オークキングの言葉を聞いて左半身が疼く。

 焼き殺す……あの時のように。

 

 自分の火傷跡が熱くなり、怒りにまともな思考ができなくなる。

 ただ私の中に、オークに対する殺意だけが増幅していく。


「オークキング!!」

「ま、待て円! 司が帰って来るまで無茶するな!」

「はああああ!」


 大和が私を止める声が聞こえたが、それを無視して駆け出した。

 オークキングに向かって真っ直ぐに。

 前方にはオークが13匹。


 今の私なら、なんてことない相手だ。


「『クロスブレイク』」


 剣スキルでオークを4つに分解し、近くにいたオークに剣を突き刺す。


「ガアアアア」


 勝てる。この勢いのままいけば勝てるはず。

 次々と襲い来るオークを私は切り伏せていく。


「円ちゃん!」


 由乃が私の下へと斧を振り回しながら近づいて来る。

 オークたちは由乃の力にボンボン吹き飛んでいた。

「円ちゃん、無茶は禁物ですよ」

「でも! あそこにオークキングが!」

「相手がどれだけ憎くても無茶をしていい理由にはなりません! 今は勝機を……司くんが帰ってくるのを待ちましょう!」

「いつ帰ってくるか分からない司を待っていられない」


 私は由乃の言葉も無視し、オークキングとの距離を詰めるためにオークを倒していく。


「……なんだ。そこそこ強いみたいだな」


 13のオークを始末した私を、オークキングは冷静な表情で見据えている。

 何か見下されたような、まるで雑魚を見るような、そんな目で見ていた。


 許せない。

 あいつの全てが許せない。


 私は両手の剣を強く握りしめ、風になって奴に斬りかかる。


 ガキンッと激しい金属音が周囲に響く。

 オークキングは巨大な包丁で、私の剣を簡単に受け止めた。


「許さない……許さないオークキング」

「……どっかであったことあったか?」


 私を挑発するようなとぼけた声。

 益々怒りが増していき、辺りには雨が降り出していた。

 まるで……あの日のように。

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