第35話 排除する者②
新作
『世界で唯一の【神剣使い】の俺は弱すぎるとギルドを追放された。しかし【神剣】のとんでもチートが発覚し俺が最強になると手の平返して戻ってきてくれなんて言ってきたが、もうすでに最強の町を創ってしまったのだが』
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俺は走りながら、異様な殺気を放つ者へと近づいていた。
瞬間移動で強襲をかけてもいいが、ここは慎重に行く。
いきなり突っ込んで負けたなんてシャレにならない。
そしておよそ300メートルほどの距離まで接近し、壊れた建物の物陰からその姿を視認する。
それは、驚くほどに白い髪と瞳の持ち主であった。
闇のように黒いロングコートを着ていて、黒い皮のパンツを穿いている。
その上履いているブーツまで真っ黒で、全身を黒でコーデした中年の男性。
表情は神父のような穏やかさと、暗殺者のような冷たさを併せ持っていて、底知れぬ恐ろしさを感じさせる人物だった。
男は大きなホテル跡の屋上にいて、そのホテル跡にいくつもある部屋の窓ガラスは全て割れていて、入り口は瓦礫だらけで中に侵入することはできない。
「そこにいるのでしょう? さっさと出て来なさい」
「!?」
バレていた。
隠れていることがバレていた。
こちらは潜伏を使っているというのに……なんで相手に俺の居場所を把握されたんだ。
俺は奴の言う通りにのこのこと姿を現すような真似をせず、他の建物を迂回し奴の背後まで回った。
「お前は誰だ? どうみてもモンスターじゃないし……人間だよな?」
「人間……に近い存在ではありますが人間ではありません。あなたに分かりやすい表現をすれば、『天使』にもっとも近いのかもしれませんね」
男はゆっくりと、俺がいる方向に体の向きを変えた。
「天使? 羽も無ければ頭の上に輪もない。それに天使と言えば相場は美少女と決まっているだろ」
「あはは。美少女でなくてすみませんね。でも、あなたのそばには美少女がいるのだから、別に私が美少女でなくてもいいでしょう」
男は怖いぐらい落ち着いた声で話をしている。
俺なんて目じゃない。
いつだって倒せる。
そう言った態度だ。
俺はゴクリと固唾を飲んで、話を続ける。
「それで……お前の目的はなんだ? なんで俺に向かって殺気を放つ?」
「そうですね……たとえば、ゲームの中で違法行為をしている者がいれば、それに対応する者がいる。その場合は管理者や運営者などという者が該当するでしょ?」
「……じゃああんたは何か? 俺が違法行為をしているから、処理しに来たって言うのか?」
「端的に言えばそうです。私は排除する者。4人いる排除する者の一人、白き排除する者閃光のフィル」
「!!」
フィルがこちらに手を突き出し、眩いほどの閃光を放つ。
それは言わば、極太のレーザーだ。
俺が咄嗟にその場を瞬間移動で離れると、さっきまで隠れていた建物は、穴あけパンチで紙に穴を開けたように大きな空洞ができた。
心臓が警笛のようにガンガン鳴っている。
逃げろ。今すぐ逃げろと俺に語り掛けてくるようだ。
「瞬間移動か。ですが、私もスピードには自信があるんですよ」
「なっ!?」
フィルは先ほどまでいた場所から、いつの間にか俺の背後に回っていた。
俺は無意識のうちに裏拳を繰り出し、奴の顔面に叩き込む。そのつもりだったが――
フィルの目の前で、バリンと見えないガラスが割れたような感覚があった。
「! 驚きましたね……まさか排除する者の障壁を破るなんて……やはり君はイレギュラーにも程があるようだ。消しに来て正解でしたよ」
「だったら消しに来なかったほうが良かったって後悔させてやる。お前がここに来たのは不正解だったってな」
お互いに距離を取り対峙すると、奴は殺気をビリビリ放つ。
殺る気だな。
穏やかな表情のその奥。
全く笑っていない真っ白な瞳が俺の姿を視認している。
緊張感が走り、空気が重い。
強者と対峙するのって、こんなに怖いものだったのか。
俺はクロスボウを取り出し、できるだけ距離を取ることを考えていた。
正面からぶつかるなんて俺の性に合わない。
まずは――牽制だ。
「『トリプルショット』!」
奴は打ち出された3本の矢を、難なく回避してしまう。
だが、俺の目的は攻撃を当てることじゃない。
一つ確認しておきたいことがあったのだ。
サッと建物の裏に隠れ、鷹の目でフィルに視線を向けておく。
するとフィルは、こちらに向かって閃光を放った。
「くそっ! 思った通りだ!」
俺は瞬間移動で奴の背後に回り『ウェイブショット』を放つ。
波状エネルギーがフィルに当たると思ったが、奴は顔を歪ませながら猛スピードでそれを避けてしまった。
「……驚きました。まさか、ここまで強いとは……予想外の強さだ」
「…………」
さっきのフィルの攻撃で分かったことが一つ。
奴は俺の鷹の目のように、目の前に障害物があろうとも敵の姿を視認できるということ。
それに潜伏も効果がないと。
厄介な目に厄介なバリア。
それに厄介な閃光を放つこの男……
どうやって倒すべきか。
俺はクロスボウをカードに戻し、瞬間移動で強襲した。
「『虎咆』!」
「!!」
体術の『虎咆』。
気を纏った俺の拳は易々とフィルの障壁を破り、奴の左肩をかすった。
「くっ!」
稲妻のような速度で俺との距離を取るフィル。
腕からは血を、その額からは大量の脂汗を流している。
「そんなに驚いてどうしたんだよ? さっき予想外って言ってたじゃないか」
「ふっ……想定していた予想を上回り、さらに次の予想も上回っていたのでね……君は危険すぎる。これで決着をつけさせてもらう」
フィルはこちらに手を突き出し、その手に光を収束させていく。
またさっきのレーザーみたいな技か?
そう思っていたが、奴は違う技を繰り出した。
奴は手から、何百という小さな光を解き放った。
それは自動追尾弾のように、全てが俺に向かって飛んで来る。
「なっ……!」
「消えなさい!」
瞬間移動で別の場所に飛んでも、それは俺を狙い方向を変えた。
これは……避けきれない。
そう思った俺は、光の弾丸を防ごうと両腕を顔の前でクロスさせる。
――だがそれが間違いだった。
何百と襲い来る光の弾丸は全て肉体を貫き、情け容赦なく俺の体を穴だらけにしてしまったのだ。
いつも読んでいただいて本当にありがとうございます。
8月から投稿したこの作品も、多くの方に読んでいただいているようで喜ばしい限りです。
8月は毎日投稿させていただいておりましたが、9月からは毎週月曜日の投稿になります。
よろしければ、これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。




