第31話 シンジュクへの道のり③
「『ウェイブショット』」
18匹いるオークたちの前に瞬間移動し、『弩』のスキルを発動するとクロスボウから波状エネルギーが前方に生まれる。
広範囲に放出されたエネルギーはオークたちをまるで電子レンジで加熱した卵のように爆発させていた。
「ウワアアア!!」
残ったオークは3匹。
奴らは決死の覚悟で俺に斬りかかって来る。
だがそんなオークらにクロスボウを撃ち込んでやると、あっさりと消滅してしまう。
楽勝だがまだやることはある。
俺はさっさと次のオークたちの下へと飛ぶ。
「『イフリートブレイズ』」
オークたちが俺に気づく前に、火の上級術を発動。
巨大な火柱が上がり、その場にいるオークたちは蒸発する。
数は数えていなかったが分かっていることは一つ。
それは今の一撃で全滅したということ。
「…………」
イフリートブレイズを使用した跡を見て俺は思案する。
これ、威力が高すぎて周囲への被害が大きすぎるな。
今回は人がいなかったからいいけど、時と場合によっては使っちゃマズすぎる。
威力が高いのは嬉しいことだが、ここら辺は強すぎる弊害だな。
嬉しさとやるせなさを含んだ笑みをこぼし、俺は磯さんたちの下へ飛んだ。
「ただいま」
「オウ? もう片付いたのか!?」
「うん楽勝だったよ」
早くも行く先の敵を壊滅させたことに、磯さんは目を丸くさせていた。
大和なんかは口を大きく開いている。
円は……なぜか震えていた。
「円……どうしたんだ?」
「……き、巨大な火柱が上がった……」
「…………」
さっきの『イフリートブレイズ』か。
円は火が怖いって言ってたもんな……火の術に関しては、さらにもう少し気をつけよう。
「ごめん。円がいる時はできるだけ火の術を使わないから」
「……あれ、司の術!?」
「あ、ああ……」
「…………」
円は俺の術の威力に、顎が外れる勢いで可愛い口を開いていた。
まだあれの上位術が2つあるんだけどなぁ。
あれでこれだけ驚くなら、後の2つ見たらどうなるんだよ。
「あの火柱、この間のコボルト戦を思い出します」
「ああ……そういやあの時も使ったっけ」
「はい。私は遠くから見えただけでしたが……悪を裁く神の鉄槌にしか見えませんでした」
「……また大袈裟なことを言って」
「ふふ。でも、司くんなら絶対にコボルトキングには負けないって、あの時強く感じました。全部司くんに任せておけば大丈夫だって」
そして由乃は、その場にいる全員に向かって大声で話しかける。
「だからみなさん! 安心してください! 司くんがいる限り、みなさんは必ず安全にシンジュクまで辿り着けます!」
由乃の言葉に、緊張しっぱなしだったみんなに笑顔が灯り始めた。
希望を胸に抱いているようだ。
重そうな足取りだったものが、軽い物に変化している。
どんよりした空気が、キラキラした輝かしいものになっていた。
「司くん、私は後何をすればよろしいですか? ドンドン命令してください」
「ああ」
「もちろん、夜の命令だとしてもいついかなる時でも馳せ参じる所存であります」
「そんな命令は出さないから馳せ参じる必要はありません」
「ええ~。じゃあ夜這いでもしろということですかぁ?」
「そういうことを止めろってことだよ」
由乃がぷぅっと頬を膨らませ、俺は嘆息する。
「ふふ」
そんな俺たちのやり取りを見て、円が珍しく笑い声を漏らしていた。
「どうした?」
「こんな時なのに緊張感が全然ない。二人とも面白い」
「緊張感がないのは由乃のせいだ」
「でもでも、司くんの力あってのことですよ。これだけ安心していられるのは」
「またいい様に言いやがって……っ」
和やかなムードであったが、背後から物凄い勢いで追いかけてくるモンスターの姿が、俺の『探索』に引っかかる。
こちらに向かって来ているのは……
青い色のオーク――ハイオークだ。
レベルは……45!
なんて強さだ。
コボルトキングよりも高いレベルじゃないか。
果たして、由乃たちでも勝てるのだろうか?
まぁ、俺一人で戦ってもいいんだけど……
「何か来るの?」
「ああ。ハイオークだ」
「ハイオーク……」
円はギリッと歯を噛みしめ、ハイオークの方向を睨み付ける。
まだ視認できるような距離にはいないが、迎え撃たなければいけないだろう。
「お願い司。私も連れて行って」
「円?」
「私はオークキングとも直接戦いたいと考えている。だから、ハイオークとの戦いにも慣れておきたい。あいつはハイオークを何匹も連れ回して行動しているから、いずれ戦うことになる」
「ダメだ」
「…………」
「と言っても、来るんだろ?」
「うん」
円はまだ見えぬハイオークを睨んだまま、小さく頷く。
俺は彼女の気持ちを汲んでやりたい。
彼女からは、ただならぬ執着心を感じる。
きっと、どうしてもやり合わなければならない理由があるのだろう。
だから俺は、円の思う通りに力を貸してやろうと考えている。
「では、私もお供します」
「由乃。大丈夫か?」
「はい。司くんがいますし。それに、私もまだまだ強くなりたいです。強い相手と戦うことが、強くなるための近道だと思っていますから」
「よし、じゃあ行こうか。円の復讐の始まりだ」
「……なんで分かるの?」
「それしかないでしょ。まぁ、話はいつか聞かせてくれよ」
円は相も変わらず、小さく頷くだけだった。
そして俺たちは、爆発するように全力で駆け出した。
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