第21話 トシマ①
俺は『鷹の目』でシンジュクを見渡した。
なるほど。本当に敵がきれいさっぱりいなくなっている。
俺は大学にいた人たちに、山根さんらが根城にしている場所を教えてあげた。
とりあえず合流しておいた方が、みんな安心だろう。
全身全霊感謝を込めて、彼らは俺に頭を下げ、そして去って行った。
「無事に合流できたらいいな」
「ですね。でも……私は絶対に合流できると思います」
「なんでそう思うんだよ?」
「だって、司くんに助けてもらって意味もなく死ぬなんて考えられません。運命がそれを許さないんじゃないですかね」
「大袈裟だな」
「でも、私たちが出逢えたのも運命じゃないですか」
「……大袈裟だな」
そんなウットリした目で俺を見るんじゃないよ。
反応に困るわ。
「コボルトキング……エリアマスターを倒してシンジュクからモンスターはいなくなったんですよね?」
「うん」
不思議なことに、シンジュクからモンスターの姿は忽然と消えた。
理由は分からない。
分からないが、エリアマスターを倒すとその地域から敵がいなくなる。
それだけは理解した。
「不思議ですね」
「本当。不思議だな」
「あ、そう言えば私、コボルトキングから『レベル限界突破』というカードを手に入れました」
「レベル限界突破?」
なんだそれ。
初めて聞くカードだな。
「パッシブでもアクティブでもなくて……『シークレットカード』って書かれてます」
「シークレット? そんなのあるんだ」
そりゃ聞いたことないはずだ。
だってシークレットだもん。
隠されてたってことだもんな。
由乃はレベル限界突破を取り出し、自身に使用した。
するとカードが粒子となり、由乃の頭から降り注ぐ。
「……あ。レベルの限界が200になったみたいです」
由乃のステータス画面を覗き見ると、記録にそう表示されていた。
レベルが200まで上がるってことは……単純に考えたら通常の上級職の2倍強くなれるってことか。
これは由乃を鍛え上げたら、すごい戦力になりそうだな……
「……これで司くん扶養計画がさらに現実的に!」
「ちょっとちょっと、独りよがりの夢は見ないで!」
「大丈夫です。いつか司くんに認めてもらえるぐらい強くなりますから!」
「俺が言ってるのは強さの話じゃないよ?」
由乃のやつ、暴走し出したら話が通じなくなるよな。
狂人化とか意外って思ってたけど、由乃にピッタリだったんじゃないか?
「司くんは『空間』カードでしたっけ?」
「ああ」
アクティブカードの『空間』。
これもランクアップカードで、ランクSSSまで合成しておいた。
コボルトを倒しまくったおかげで、色んなカードが余りまくっていたからだ。
最終的に手に入れた『空間』の能力は4つ。
空間を切り取って敵を封じ込める。
見えている範囲に瞬間移動できる。
記憶している場所に空間移動できる。
そして記憶している場所へ瞬間移動できる『扉』を開くことが出来ると言うものだった。
瞬間移動と空間移動は、自分一人でしかジャンプできないようだ。
例えば、由乃に触れながら瞬間移動をしても由乃は俺についてこれない。
だが空間の扉を開くことにより、由乃も任意の場所へ移動できるのだ。
瞬間移動に関しては気になっていることが一つある。
後で実験をしてみるが、鷹の目と組み合わせれば10キロ先まで飛べるのかということだ。
有効範囲が10キロまで伸びるなら、使い勝手は良過ぎるよな。
「司くん、これからどうするつもりですか? シンジュクは解放しましたし、これからシンジュクでノンビリ過ごしていきます?」
「それも悪くないなぁ」
「ですよねー。私が外で狩りをしてカードを手に入れて食事の用意に洗濯、掃除、そして夜のお世話も……」
「それ全部じゃん。お金も稼ぐし身の回りの世話も全部じゃん」
「そうです。だから司くんはドンと構えて家にいれくれればいいんです」
俺は由乃の提案に乾いた笑いで返しておいた。
由乃の言う通りではないけど、シンジュクで生活していくのも悪くはないな。
だけど外ではまだまだ困っている人も多いだろう。
俺はこれだけ力があるんだから、他の場所で大いに振るってもいいと考えている。
シンジュクだけじゃなく、もっといろんな場所を解放してやろうかな。
そうすれば、自分自身の能力もまた高まっていくだろうし。
「とりあえず……トシマに行こうと思う。他の地域を解放するのもいいかもな」
「なるほど……日本中を解放して、司くん帝国を創るのもいいかも知れませんね」
「そんなのいらないから。面倒が多くなるだけだよ」
「なんと欲の無い……っ! 素晴らしいです」
「いや、欲はいっぱいあるよ。とにかくもっと強くなりたいし」
「じゃあ、早速行きましょう! 司くんと私の、新たなる力を求めて!」
キラキラした瞳で未来を見据えているような由乃。
ま、前向きなのはいいことだけどさ。
俺はトシマに向かって歩き出した。
由乃も俺と腕を組み、横に並んで歩き出す。
シンジュクの外に出るのは2年ぶりだ。
外がどうなっているのか気掛かりだと思う気持ちが半分。
残り半分、新しくどんな力を手に入れられるのだろうかとウキウキしていた。
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