表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Run Run Run  作者: 涼汰浪
20/23

9.激走 ①

「レオさん! 目ぇつぶってないで、上の様子を教えてください!」


 どんなに腕のいいドライバーでも、頭上からロケット弾が降ってくる状況では、自慢のテクニックだけでは乗り切れる自信が無いらしい。そうは言っても俺だって、ヘリに乗った射手に追われるのはこれが初めてだぞ?


「・・・・・・焦るなブッキー。きっと当たったりしないさ。もし当たっても、銃弾だ。ロケット弾が直撃したりしない」


「なんで言い切れるんです!?」


「ロケットを当てたら、お宝までコッパミジンになるからさ」


 脳みそパワーで当たらない可能性もあるが、そもそも連中はこれが欲しくて追ってくるのだ。それを爆砕したりしないはず。あれは脅しと、さっきみたいに道路をえぐって、こちらがくぼみに嵌まるんを期待して撃っているだけだ。


 そう信じたい。


「ねぇ! これからどうするの?」


 身を屈めすぎて、グローブボックス下に収まっているキスマークが、振わせながら声を上げる。


 ロケットランチャーは想定外だが、プランを変更するほどの事では無い。このまま俺の商品を取りに向かう。


「ブッキー、オレの『店』に向かってくれ。場所は覚えてるか?」


「倉庫の方? 事務所の方?」


「事務所!」


 倉庫はその名の通り、商品の倉庫。都心からは少しだけ離れた場所にある。当然そちらのほうが武器がたくさんあるが、一階しかない一棟建てで、ヘリとやり合うのは難しいし、ちょっと遠い。ましてや、ほぼ火薬庫なところにロケット弾を撃ち込まれるのは、悪夢でしかない。


 事務所は売買を行うときに使う場所で、小さいオフィスビルに入っている。基本的には売買の成立した商品しか置いてないが、客とは言え、部外者を入れる関係上、自衛の品もそれなりに置いてある。ビルの三階に入っていて、他の階は、内の組関係とテナントが入っていない階しかない。ヘリとやり合うならこっちだ。


「そんなとこよりも、トンネルとか屋根のある道に行かない? もしくはもっと建物の密集した場所!」


「トンネルは良いけど、ロケット弾で出入口を潰される危険もある。道を走る必要がないあっちのほうが先回りしやすいからな」


「出口を崩落させて、逆サイドからじっくりいたぶるわけですね」


 そもそもヘリコプターは時速二〇〇㎞くらい平気で出す。先回りなんて楽勝。小回りの差で撒かれないように、接近しすぎないようにしているだけだろう。見やすく、狙いやすい位置取りだ。


「それにビルの密集地に紛れてもたぶん撃たれる。みぃちゃんのところだって高い建物が多かったのに、店裏にいたオレ達に当ててきただろ? ビルより高く飛んでも良い精度で当てられる銃と腕があるってことだ。まだ射手が見えるくらいの距離のほうが良い」


 さすがに揺れるヘリから精密狙撃なんて魔法はつかってきていないが、二メートル四方には当ててきている。敵は元海兵だな。


「それでも高層ビルの多いところを走るほうが、有利ですよね? 真っ直ぐ向かうと、当てられそうな場所がいくつかある。多少遠回りですが、安全をとります」


「それでいい。あいつらはオレ達の向かう場所を知らない。目的地に先回りは出来ないから、混乱させてやれ」


 こうしてプランを立てている最中にも、ヘリのうるさいエンジンの音量は変っていないし、相変わらずアスファルトに高速でぶつかった何かが、道を削っている。


 リアウィンドウから目上げてみると、周囲の建物よりもだいぶ高いところにいる。正直この距離だと射手は見えない。スナイパーライフルかロケットランチャーかどちらが狙っているのか分かりそうになかった。


「・・・・・・ヘリに乗っているヤツが撃てるロケットランチャーは初めてみたけど、そんなに数を用意してないだろう。絶対に少ししか載せてないはずだ。そんなにビビらないでいこう」


「ロケットランチャーって、ガンダムが持ってるようなやつでしょ? 弾いっぱい持ってるかもよ?」


「ロケットランチャーも色々あって、撃ちきりの使い捨てとか、狭いと撃てないのとかあるんだ」


 撃ててもカウンターマス(発射の勢いで吹っ飛ばないように、後ろに金属片なんかを同じ勢いで吹っ飛ばして、相殺するのが携帯式ロケランの発射方法。カウンターマスとは、その後ろに撒き散らす金属片のこと)で後方がヒドいことになるから、あのヘリは元の用途で使うの大変そうだな。


「この距離じゃあ何を使っているか分からないけど、ロケット弾なんて、普通の銃弾よりデカくて重いし、射手の後ろを空けないといけないから、ヘリにはそんな載せられないだろう。民間のヘリだし。きっと数はないよ」


「その代わりライフル弾はいっぱいありそうですね。これだけばらまいてるんだから」


 一般道をそれはもう飛ばしながら運転しているブッキーだが、会話する余裕があるとは、さすがプロだ。モータースポーツで真っ当に生きる道は、彼に無かったのだろうか? 自分のことを棚に上げているが、良い技能なのにもったいない。


「そっちは自信有りなんだろうな。まぁ冷静に考えたら、動いてるヘリから動いてる車に携帯ロケットを当てようとは、考えないだろ。さっきのはやっぱり脅しだ。気にするな」


「気にはしますよ。それに、ちょいちょい天井に当たってるんですけど、貫通してきませんか?」


「うーん」


 それに関しては、脳みそパワーの恩恵かも? 真上から貰えば絶対アウトだろうけど、斜めにきているから、どうにか弾が跳ねている。それもいつまで続くか。普通に考えれば、いずれ抜けてくるだろうな。


「このタイプR、防弾?」


「そんなわけないでしょ! いつかガラスは変えようかと思ってましたけど、天井は考えもしてません」


 日本にいながら防弾ガラスに変えようとは、意識が高い。こんなことに巻き込まれればきっと変えるだろうな。俺から巻き込んでおいて何だが、申し訳ないね。


「真上から真っ直ぐ撃たれたら、絶対に貫通するぞ。ヘリの下に入らないように意識してくれ」


「了解。させませんよ」


 そう言いながら器用に片側二車線の道路を右に左に走り抜ける。多少の運もあるだろうが、他にも車はいるのに、ほどんど速度を緩めずにいられるのは大したものだ。


「そういえば、通行規制があるって言ってたな。周りは普通に車がいるけど、この辺は違うのか?」


「通行規制の原因がこうやって動きまわってるから、警察も追いつかないでしょう。ヘリと発砲音でみんなビビってるでしょうけど」


「ニュースではヘリの音が聞こえたら建物に隠れろって言ってるよ。今走行中の車は、その情報を知らない人がほとんどでしょ」


 キスマークがケータイを弄くり回しながら、告げてくる。グローブボックス下に順応したのか、先ほどまでの慌てた素振りは消え失せた。そこが気に入って何よりだ。


「キッス、ヘリ以外の銃撃事件のニュースが入ったら教えてくれ。組のみんなが敵のアジトを叩いたニュースが入るはずだ」


 うまく行けば、ヘリもそっちの増援に向かうかもしれない。そうなれば、脳みそを俺の鍵付倉庫に隠して、場所が分かっても取り出しにくい状態に出来る。そうすれば、大量の武器を抱えて援軍に向かおう。墜ちたブラックホークに群がる民兵の如く、たこ殴りにしてやる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ