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Run Run Run  作者: 涼汰浪
15/23

7.準備 ①

 正直ここで終わったと思ったが、ちょっとだけ踏ん張って走れば、直ぐにヘリではどうしようも無い建物の隙間に入り込む事ができた。


 考えれば、地べたを走って追いかけ回された今までよりはマシだ。何も無い我が故郷でなら逃げ場がないが、ここはコンクリートジャングル大東京だ。そんなものを乗り回しても、進入できる範囲は狭すぎる。ここは、さっさとずらかろう。


 自転車での全力疾走に加えて、落車の衝撃で身体はそこら中が痛んでいる。この数時間で何人も仲間を失って心も痛い。とにかく、腰を下ろして休みたい。


 頭上に気を配りながら、ゆっくりと歩みを進めていると、ケータイが鳴った。


「レナードです」


「レオ、俺だ。一体どうなってる? ニュースでやってる銃撃やらパトカーの爆破ってのは、お前と関係あるんだろ?」


「マッさん、ごめん。みんなヤられた。ニュースでやっている奴らは全員死んだが、今はヘリに追われている。奴らはスケットを呼んだんだ。ケイサツのヘリじゃあないぞ? 連中のヘリだ!」


「みんなヤられただ!? クソがっ! 一体何モン何だ、そいつらは? 白昼堂々、弾きまくりやがって! サツを殺すわ、ヘリまで出してくるわ」


「分からないが、お嬢の買った品が目的なのは確かだ。……お嬢は近くに?」


「いや、ニュースを見て、出て行っちまった。若いの三人で追いかけさせたが、戻ってこないとこを見ると、そのままお嬢と外だろう。……レオ、いまどこだ? 迎えをやる」


「ダメだ、マッさん! それはダメだ! 分からないが、オレはつけられている。連中はオレの場所がセイカクに分かるらしい。そのせいで、待ち伏せできなかった。そのせいで、みんなヤられてしまった。タンチの方法が分かるまで、オレと会うな!」


「探知されてるったて、お前に分かるのか? 身体は調べた上で言ってんだろ?」


「上着も捨てたし、他も調べたが、それでも追って来た。後はこのケータイと、お嬢の買った品だけだ」


「……ケータイの電源はこの後切れ。お嬢の買いもんは捨てられねぇのか?」


「これのせいでみんなヤられたんだ。今さら手放したら、意味がない」


「……ヘリに追われてんなら地下に行け。それで、落ち着いたら連絡しろ。それまで電源切っとけ」


「分かった。オレから連絡する」


 通話を終えて、一度深呼吸。身も心もクタクタでくじけそうだったが、指示を受けただけで、少しやる気がでてきた。とことん下っ端根性の指示待ち人間だな。でも良い。それで活力が湧くなら良い。やることがあって、やってやろうと思えるならそれだって良いのだ。


 地下か。取り敢えず落ち着ける、地下にある施設。それでいて出来れば俺が行っても極力問題が無い場所。ならあそこだな。


 引き続き頭の上にる機械鳥に警戒しながら(ずっとうるさい駆動音が聞こえている)目立たないように移動した。


 目的地は行きつけのバーだ。いや、この時間ならカフェだ。昼間はカフェ、夜はバーになる俺の行きつけの店。ビルの地下にあって、ヤクザに組する白人が通っても大丈夫な、多少ヤバい雰囲気のする、一元様が店内を覗いたら、即お帰りの居心地の良い店だ。


 当然、ヤバいのは夜に限りだ。昼間は普通のカップルとか良く見る。今行ったら迷惑かも知れない。でも、他に当てが無いし、絶対そこでコーヒーを飲んでいる知り合いが俺の助けになってくれるハズだ。汗だくの埃まみれで、膝が擦りむけて血が滲んでいる白人がこの時間に行けば、店長に嫌がられるかも知れないが、非常事態だ。大目に見てもらう。


 俺はひたすらに歩き続けた。今もヘリの駆動音が聞こえている。


 結局、ヘリを引き連れたまま目的地まで来てしまった。そうだろうと思ってはいたが、やはりケータイで追尾されているわけではないようだ。ならば、答えは一つ。この脳みそオンリーガールから追尾できる何かが放たれているのだろう。この後ゆっくり調べさせてもらう。


 申し訳程度に身体の土埃を払ってから入店する。


 『カフェ&バー シークレット』。それがこの店の名前だ。中には数組の客が、カウンター上部に設置されている音の消されたTVに見入っていて、俺の存在に気が付かない。映っている映像はもちろん俺のリプレイだ。とはいえ、俺よりもマシンガンズばかりが映った。いや、マシンガンズと警察しか映っていない回想録。そりゃあ、自転車で逃げる白人と銃をぶっ放す白人その他なら、後者を映像に残すのが普通だ。まぁ、俺の顔ががっつり映るのも困るから良しとしよう。


「いらっしゃ……。ちょっと、昼間からは止めてよ。うわ、何その格好?」


「ごめん、オジャマする」


 店長のみぃちゃんが実に嫌そうな顔で出迎えてくれたが、文句は言えない。服も肌もすり切れて血が滲んでいる小汚い白人が、汗だくの埃まみれで入ってきたのならば、誰だって良い反応はしない。


「なぁに? どうしたの?」


「妹に会いに来た。借りて良い?」


 ここで言う『妹』とは、俺のシスターではなく、みぃちゃんのシスターのことだ。俺に血の繋がった姉弟はいない。


「『会わせてくれませんか?』って、言いなさい。それくらい分かるでしょ」


「うん。会わせてくれ」


「何のよう?」


「調べてもらいたい」


「何を?」


「このケース中身(を欲しがっている連中)」


「あの子、ピッキングは出来ないわ」


「中身は分かっている。知りたいのはユライだ」


「由来?」


「ユライ」


「何で?」


「価値を知りたい」


「……盗品?」


「違う。ウチのお嬢が買った品物なんだ。ネダンに見合うモノなのか知りたい」


「そんなことお嬢さんに聞きなさいよ」


「できないから来たんだ」


「どうして?」


「今、ケータイが使えない」


「…………」


「…………頼むよ」


「……いつもの席でお茶してるわ。変なことに巻き込まないでよ」


「ごめん」


「……何故、謝罪だ」


 確実に巻き込むからだ。とは、答えずにさっさとカウンターから離れてしまおう。悟られては困る。


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