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Run Run Run  作者: 涼汰浪
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6.回想 ③

 日本に行くことになったのは、バカンスではなくてビジネスだ(座席はエコノミーだったが)。


 下っ端の俺が着いてこられたのは、俺が国内外問わない映画オタクで、学の無いチンピラ共の中で、唯一多少の日本語が理解できたからだ。黒澤明に感謝! とはいえ、通訳は向こうがちゃんとしたのを用意してくれるから、俺にとってはバカンスに近かった。東京の観光名所や上級のレストランをピックアップして、何日も前からどこに行くか考えを巡らせて過ごしていた。


 いい気なモノだったと思う。


 仕事の内容は、クスリの取引だ。そもそもクスリは地元でも全く扱っていなかったが、たまたま同業者から安く大量に仕入れることができて、じゃあやってみようかとなった。だが、新参ギャングがいきなり介入できるほど優しい市場な訳が無く、危うく組ごと消されかけたため、地元じゃ無理だと諦めて、他を探した結果、ヤクザと取引と相成ったわけだ。


 探せば絶対に国内でだって捌けただろうし、相手に言われたとおりにボスがわざわざ現地入りする必要も無かったと思うが、一三時間以上掛けて、ボスと幹部を引き連れて東京に降り立つことが決まった。仕方が無いとは思うが、やはり商売の下手な我々だ。せっかくだから、東京に支部でもおくか?


 さて。決まったのは良いが、どうやってモノを日本へ持ち込むか。クスリどころか、密輸自体自分たちでやったことなど無い我々だ。トランクケースにたんまり詰め込んで、正面突破を狙ったのでは、出国もままならないであろう。ダイハード2よろしく空港で大乱闘だ。そもそも空と海ならどちらが良いのか。


 勝手なイメージで言えば、王道は空輸だろう。そして見つかるのも空輸だろう。大体、密輸を扱ったドキュメンタリーだと空港でブツが見つかるのが相場だ。


 港にも麻薬探知犬はいるのだろうか? いないことないか、さすがに。いや、待てよ、日本は島国だ。四方八方を海に囲まれている。だったら、港でも何でも無い場所に船を着ければ良いじゃないか。


 良し、それで行こう。しかし、海路で日本まで一体何日かかる? そもそも内陸のカンザスに巣くう我々に船の当てなど無い。操縦できるヤツはもちろん、海図を読めるヤツもいない。金で雇うのも有りだが、悪行において信用できる船乗りの伝手(つて)だってないぞ。


 どうしたものか。少なくとも人間達だけは空輸でも良いだろう。クスリだけは安全を期して運ばねばならない。


 白状すると俺は飛行機が苦手だか、ここは堪えよう。船は乗ったことが無いから未知数だ。どうせ一日で着けるコトなんて無いだろう。もしも、船酔いしやすい体質だったならば、地獄だ。ハンディーカメラで撮ったような手ぶれ満載映画で気持ち悪くなった俺だ。可能性は高い(ブレア・ウィッチ・プロジェクトとクローバーフィールドよ、面白かったが二度は見られない)。


 どうしようかと迷っている時に、別件で取引先のヤクザから連絡が入った。ついでだからと、輸送方法についてそれとなく話を振ると、拍子抜けなことに、使う航空会社と便名を教えれば手を回してくれるらしい。恐ろしい限りだ。


 そうなっては、さっさと日本に向かってしまって問題ないだろう。意気揚々と荷造りを終えた我々は、空港のゲートを抜けて、ラウンジから金属製の巨鳥が羽ばたく様を眺めていた。この時はまったく気にしていなかったが、降りた先の税関はともかく、出国時にも何事も無く過ごせたのは、祖国の警備がザルなのか、こちらにまで手回しされていたのか、どちらにしろぞっとしない話だ。


 ついでに俺は飛行機が苦手だという話だが、飛ぶと直ぐに耳がキーンとなるからというものあるが、もう一つはそもそも空を飛ぶモノ全般に苦手意識がある。


 俺は人よりも、夜目が利く方なのだ。よく夜中に抜け出して、月明かりだけで何処でも行ってこられた。


 夜になれば動物たちだって半数は寝ている、カンザスにはバイソンがいるが、バイソンも寝ている。あいつらは、牛だからな。まぁ、野生のバイソンなんて出くわしたことは無いけれど。


 それでも、半数は夜行性で夜の方が活発になっているのもいる。そこで、よく襲われたのがフクロウだ。


 夜行性といっても、こっちも活発に動いていれば、大多数は襲ってこない。俺だって道を外れて、彼らの縄張りに入る愚行は侵さない。それなのに、あの鳥野郎は何故かよく俺の頭に突進を仕掛けてきた。とはいえ、言ったとおり俺も夜だって見える方なのだ。正面から来ようモノならタイミングを合わせて、画面映え確実のカンフーを披露して迎撃したものだ。それでも、自分に向かって突っ込んでくる小動物というのはトラウマもので、今でも空を飛んでいるモノを見ると思い出す。


 この連想ゲームはやっかいなことに、種類の分からない虫であろうと、比較にならないほど大きな飛行機であろうと飛んでいれば、脳裏をかすめてしまう。


 つまり、突如として飛来してきたヘリコプターは、俺のテンションを最大限に下げてくれた。


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