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Run Run Run  作者: 涼汰浪
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4.回想 ②

 俺がハイスクールを中退して地元の弱小ギャングのパシリになったのは、そこが元々は柄の悪いバイカー集団から変化した、まだまだケツの青い奴らばかりの集まりで溶け込みやすかったからと、最近赴任してきた二四歳の新人女教師とデートしていたのを学校にバレたから。そして、同じく最近孤児院に来た二三歳の新しいシスターにお互いの初めてを捧げ合って、バレちゃいないけど、気まずいからここから離れたいと思っていたから。だから、自分から踏み込んだ。誰のせいでも無く、自分から選んだ。


 最初の内は地元の店からシャバ代巻き上げて小遣い稼ぎして、バイクでチンピラ轢き回してシマから遠ざけて、盗んだ車のパーツを売りさばいて、悲しいことに今までやっていたことと大きくは変わってない。それくらいのこと、前からやっていた。レンタルショップで古い映画、特に日本映画を腐るほど見耽っていた傍ら、そんなことをしていたのだ。ホントにクソガキだった。


 それでも成長するにつれて、内容はよりディープに変化していった。進んだのでは無い。沈んだのだ。無理矢理に取っていたシャバ代は顔を出せば当然のように払われる様になったし、それに答えて、店に迷惑を掛ける客やそれ以外を丹念に追い払った。


 バイクで轢くなんてお粗末な脅しはせず、俺達の手には当然のように銃が握られていた。盗んだ車は登録番号を改ざんして、堂々と中古車販売店に並べる。ご近所さんとの関係は友好になるよう、銃や車は分けてやった。時にはお隣のカンザス(ミズーリ側のカンザスシティ。普通、カンザスシティといったらコッチだ)の組織を手伝って親交を深めた。クソガキバイカー共は、気付けば立派な構成員になっていた。


 俺は今と同じく、専ら銃の取引で貢献していた。どこぞの州で銀行強盗に使ったUZIイスラエルのマシンガンだを安く買い叩いて、製造番号を溶かし、バレルをヤスリがけして線条痕を変える。命中精度が落ちるが、マシンガンの精度なんて大差ない。そうやってこしらえた出所不明になった銃を後ろ暗い奴らに売りさばく。今でこ拳銃ばかり扱っているが、かつてはバカデカい機関銃だって弄っていたのだ。そこそこの腕はある。


 そうやって日々を過ごしていく中で、一度、州兵からくすねた手榴弾、五ケースをトヨタのピックアップにのせて、仲の良いご近所さんに届けに行ったことがあった。それを使って仲の悪いご近所さんに挨拶をしに行く算段らしい。


 貸しを作るのは後々物事をうまく運ぶのに役立つ。これは、どこの業界も関係なく、人生において知っておいた方が良いことのひとつだ。


 隣にお供の同僚をのせて、ドライブしていたそんなとき、その仲の悪いご近所さんが襲撃してきた。


 あちらさんはフォードだ。それも二台。最低でも四人は居るだろう。左右からの体当たりでサンドイッチの具にされて、胡椒をまぶす様に銃弾が振りまけられた。咄嗟にブレーキを踏んで、具から脱したが、前方を塞がれてしまう。バックで逃げようとしたが、正面からの一斉射でパンクするわ、エンジン周りに穴が開くわで動けなくなる。


 仕方が無いと覚悟を決めて、二人で外に出て行った。はったりを掛けようと、ケータイを出して、「ヘイ! 俺達を撃ったら後ろにある大量の爆薬を起爆するぜ」と声を上げようと思ったが、「ヘイ!」の時点でケータイを打ち抜かれた。いい腕の射手だ。


 絶体絶命のその時、俺達の前方、奴らにとって後方からひっそりと一台のBMWが近づいていた。直感で俺達はその存在に奴らが気付かないように命乞いを続けた。結婚するんだとか、病気の妹がいるとか、途中から矛盾したことも混じっていたが、それはどうでも良い。BMWから下りてきた三人の男達は瞬く間に手に持ったマシンピストル(あの距離だとフルオートの拳銃としか判らなかった)で乗車したままの運転手二人と、下りていた三人の射手を葬ってくれた。一応警戒して、ハグをしようと駆け寄るなんてことはせず、彼らの言葉を待った。聞いてみれば、荷物の届け先であるご近所さんだった。


「俺達が襲われるってタレコミが?」


「いいや、そういう訳ではないんだ」


 三人の内で、一番地位の高いであろう人物に感謝を告げて、どうにか無傷だった品物を渡し、近くの街まで乗せて貰った途中で聞いてみた。そこで返ってきた答えはこれだ。


「君達があそこで教われる予知を見たんだ」


 俺は、冗談を言われたと思って苦笑いを返したが、残りの二人に言わせれば、本当のことだそうだ。この人は過去に何度も敵の襲撃や、サツのガサ入れを予知して危機を脱してきたらしい。にわかに信じられないことだが、俺はそれを信じている。説明の付かない超常的な能力をもった人間は実在するのだ。


 だから、今回の一件、別にこの脳みその主が絶対に偽物だったなんて思っていない。生前の彼女が本当に超能力者だったとしても疑問に思わない。ただし、死んだ後、脳みそだけでも能力を行使するなんて勘弁だ。そんなのゾンビじゃないか。俺は、宇宙人や殺人鬼は大丈夫だが、幽霊やゾンビはお断りなのだ。


 銃が効かない相手は怖いのだ。


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