白昼夢
4月1日です!四月一日の日なので、記念に先に書いている作品とコラボしてみます!
師範にお使いを頼まれた。大通の『セキレイ』という手芸屋さんに、お買い物。花音が稽古で壊した、サンドバッグ等の補強に使う丈夫な生地がお目当て。
少し歩かなきゃならないけど、バス一本で行ける路線を教わってので、そのバス停に歩いた。本数が少なくて不便だけど、急ぐ訳じゃ無いので特に問題はない。
終点のバスターミナル迄乗ってお店まではまた歩く。地下街は無いので地上を歩くと、あっちの時代には無かった路面電車が走っていた。確かこのあとから地下鉄にシフトして、この時代が路面電車の全盛期だった筈だ。その線路を越えた辺りが目的の手芸屋さんなんだけと、一等地と思われる隣の角地が木造2階建ての食器屋さんで、歩道にはみ出して食器や信楽焼きのタヌキが並んでいた。あっちの時代では10階位のビルになってたような気がする。
『セキレイ』の前に来ると、グラリとこっちの時代に来た時に似た感覚を味わった。振り返ると、さっき驚いた路面電車の線路は消え、食器やさんはビルに変わっていた。戻ったのかな?ショーウィンドウに自分を映してみたが、エイミーのまま。英太と違う部分を触って見たが、エイミーのままだった。周りを見渡すと元の2019年に帰った訳では無く、タイムスリップした1969年と元の2019年の間のいつかの時代と思われる。
道行く人達は何事もない様子だったけど、僕の様にキョロキョロ街並みを確認して驚いている人を2人発見した。きっと一緒にタイムスリップした来たんだろう、声を掛けてみると、二人とも僕にソックリだった。1人は、元の時代で観ていたアニメキャラのコスプレみたいなセーラー服。タイムスリップ先では見ないセーラーだし、スカート丈が結構短い。もう1人は、元々僕等の学校の制服、2019年に花音や女の子だった葛根湯達が着ていた物にソックリなセーラー、違うのは完璧な校則違反のマイクロミニって位かな?
きっとまた、タイムスリップしたんだな。マイクロミニのコが、
「何か特殊な状況みたいな感じだね?お茶でも飲みながら落ち着いて話そうよ!」
コスプレのコが先導してドーナツ店に入ろうとすると、
「ああ、間に合った!」
僕がもう1人?僕のソックリさんが走って来た。
「お金もってないでしょ?今のお金!」
4人目のソックリさんは何か事情を知っているように思えた、見掛けでの僕との違いは、髪が正路がゲームで作ったエイプリールまでは伸びていないけど、肩までは伸びていた。同じ大星の制服だけどスカートが少し短い位。
4人で店に入ったら、マイクロミニのコは、初めて入ったようで、システムを全く理解できていていなかった。後から来たコが面倒を見て、2人分のオーダーと4人分のお会計を済ませてくれた。
空いたテーブルを見つけて席に着くと、もう1人のエイミーが、
「今日は、1994年の5月19日だよ、エイミーは25年前から、もみじは25年未来から、みーくんは異世界から来てるんだよ。」
戸惑う3人に、もう1人のエイミーは、
「25年前、あなたとして、ここに参加してたの。ちょっとお財布見せて!」
中身は、伊藤博文の千円札と小銭だけ。コスプレのコは、福沢諭吉、樋口一葉、野口英世と充実していた。もう1人のエイミーは、夏目漱石の千円札を出して、
「もみじのお金は使え無いよ、エイミーは3人分には足りないでしょ?」
コスプレのコは青い千円札を見比べ、
「ヘアスタイル変えたんじゃなくて、違う人なんだね!」
令和を知る3人は大笑い。蚊帳の外だったマイクロミニのコは、金貨らしき物をテーブルに積んで、
「この世界で通用するかどうかは解らないけど、御守りよりはマシな魔法掛けておくね!」
記念にと1枚ずつ配ってくれた。
後から来たエイミーの仕切りでそれぞれ自己紹介して、しばらくガールズトーク。コスプレのコは、『花田松太郎くん』、お姉さん達や、幼馴染に強制的に男の娘の『もみじちゃん』でいるそうだ。ただ、居心地のいい環境なので、『もみじちゃん』で居続けるのも悪く無いと、思っているそうだ。
「ヒゲとか筋肉とか、段々と『もみじ』で居られなくなるよね。」
もみじちゃん、口で言うよりも、このままを望んでいるように見えた。ソックリな僕が言うのもおかしいけど、滅多に見ない美少女で間違いない。
困った事を報告し合ってみた。
「一番困ったのは、幼馴染で初恋の相手で今でも好きな娘と同性になっちゃった事かな?女同士でラクな事もあるけど、やっぱり恋愛対象なんだよね。」
僕がそう言うと、もみじちゃんは大きく頷いたが、みーくんは、
「あたしの世界では、魔法で都合良く解決してるよ!」
『みーくん』こと『川畑ますみさん』は50年以上前にこっちの世界から転生して、魔法で男の子に変えられたまま半世紀を過ごし、本来の女の子に最近戻ったそうだ。男性でいた時の想い人と結婚して、現在は実質的に同性婚になっているそうだ。ただ、変身過程で男性でい時に、奥さんが妊娠、お嬢ちゃん1人と奥さんの卵子と自分の凍結精子で、現在妊娠中との事。50歳は越えているはずなのに、見掛けは高校生。不思議に思って尋ねると、魔女は歳をとらないそうだ。
「元々男同士の友達だったのに、たまに女の子を見る視線で、目が合ったりして赤くなるんだよね。あれちょっと、いや、かなり嫌かな。」
と、もみじちゃん。
「僕もそう!無駄に男子の気持ち解っちゃうから、どんな妄想してるかとか、解るんだよね。一応気付かないフリしているんだけどね。」
と、意気投合。この時もみーくんの反応は薄かった。もう1人のエイミーに話を振ったが、上手く司会進行で流して自分の事は話していたかった。25年経って髪が伸びただけって可笑しいよね?まさか僕も魔女なのかな?
話に花が咲き、あっという間に夕方だった。もう1人のエイミーが、
「そろそろ出ましょうか?」
ゾロゾロとついて行くと『セキレイ』の前でサヨナラの挨拶をすると、紙袋を渡してくれて、
「賭けは正路の一人勝ちよ!」
そう聴こえた後、またグラリとタイムスリップの感触を味わった。目眩が収まって辺りを見渡すと路面電車や食器やさんのが1969年だと知らせてくれた。
時間もさっきここに来た時から少しも進んでいなかった。なんだっただろう?夢?そう!夢だよね、やけにリアルだったけど、夢以外にあり得ないものね。
お使いを済ませて道場に帰った。花音、老師、葛根湯トリオに聞いてみたが、何も不思議な事は、起こっていないようだった。ん?着替えに部屋に帰り、制服を脱ぐと、ズシリと思い金貨がポケットから落ちた。あれ?夢じゃなかったのかな?そう言えば、夢の中で25年後の僕に貰った紙袋も手元にあった。開けようとすると『学校祭が終わったら開けてね!』と僕の筆跡で書いてあった。多分着る物、サイズや感触でなんとなく下着のような気がする。彼女が平成の僕もならば、昭和の洋品店で調達に苦労したことを覚えていての差し入れなんだろうね。でも学校祭の後ってなんか意味有るのかな?まあ、楽しみはとって置いたほうが好きなタイプなので、四半世紀後の僕の言うことを聞いて、お宝紙袋は押入れに仕舞っておいた。
四月一日の日記念で、4日まで毎日投稿します!