情報漏洩
学校とスーパーのバイトで時は流れた。あっという間に中間試験。無事にクリアしてまたバイト。バイトも慣れたし、少ない人数で回していたシフトが、正規の人数になったので、平日週3、土曜の午後と日曜で月2、3回で落ち着いた。3人揃ってのお休みは、スーパーの定休日の水曜日と他は日曜日にたまにある位。ちょっと寂しいけど、ずっと一緒に暮らしてるんだから贅沢な話かもね。
学校でのニュースは、教育実習の大学生が月曜から来るそうだ。スーパーのバイトが終わった日曜日の夕方、花音がワクワクしていた。
「ワクワクしてるみたいだけど、大星出身って言ってただろ?女だせ。」
マサミはかなりの温度差で、テレビのお笑い番組を眺めていた。
「別に、先生とのラブロマンスなんて期待していないから!なんか、私達の時代って、子供の頃から普通にオシャレしていたでしよ?」
「そうかもね、でも僕や正路はピンとこないかな?」
「それもそうね!平成・令和のオシャレが幼稚園デビューだとすると、昭和では、大学生デビューか社会人デビューって感じなのよ、むっちゃんみたいなキレイなお姉さんが来るのよ!」
花音の解説を聞いてもマサミは喰いつかず、
「コレ、何十年も続く番組だってことは知ってたんだけど、やってる事ホトンド変わってないんだな。司会もメンバーも座布団運びも違う人だけど、キャラの枠がこの時点で決まってるんだな。」
小さい頃、ゾウさんと観ていたけど、そんな分析できる程は覚えていないなあ。
引越しのバイトから、葛根湯達が帰ってきた。ハードな仕事らしく、一回で辞める人も珍しく無く、途中リタイアしちゃうバイト君もいるそうだ。3人は涼しい顔で、
「結構良いトレーニングになったよ!」
一緒に胃袋も鍛えたのか、盛大におなかの虫が大合唱。台所から美味しい香りが漂って来た。競うようにシャワーに走って行った。
月曜日の朝、森先生の後ろから入って来た美女。ちょっと見たことある?この時代に知り合いはいないから、ちょっとテレビで観た女優さんに似ているとか、スーパーのお客さんかな?気のせいか、僕と花音を見ているように思えた。
『織田 美代子』
黒板に大きく名前を書いて、自己紹介。
「おはようございます、織田美代子と申します。私はここの卒業生ですので、久しぶりの登校で私服なのに違和感があります。」
皆んなは大ウケ、老けてる訳じゃ無いけど、クールビューティー系のお姉様タイプなので、セーラー服は似合わないかな?
「高校1年の時、登山の宿泊研修で、捻挫した時に、それまでお話もした事なかった隣のクラスのコにおんぶして貰って下山した事がありまして、その感謝と感動を誰かの為に私は何が出来るかを考えて、教師を目指す事にしました。丁度実習期間中に、同じ山に登山遠足があるので、運命を感じました。」
視線は、しっかり花音にロックされていた。
担当は英語との事で、5時間目迄は会えないな。いつもの授業とお弁当、やっと織田先生が登場。今度は英語で自己紹介して1番後ろの席で一緒に勉強していた。
月曜日は僕と花音がバイトの日。むっちゃんも出勤していた。バイトが終わって裏口から出ると、
「あっ、みっちゃん!久しぶり!どうしたの?」
むっちゃんが明るく話しかけたのは、実習の織田先生だった。
「やっぱり?そう?なの?」
アララ、またバレちゃった。仕方がないので、正直に説明。案の定、昭和44年の前はどの時代から来たのかを聞かれ、2019年と、西暦で答えた。
織田先生は、猛勉強と一浪で大学に進学したそうだ。前の時代でも花音が引く位に感謝しているのが解っていたけど、進路を決定しちゃう位のインパクトだったんだね。少し、想い出話し?僕らにとっては先月位の話しをして、秘密の厳守を約束して道場に帰った。
道場でその話になるとエリーは、
「電器屋のあやちゃんが疑ってるわ、もう5年生だからね、中途半端な事じゃバレちゃうと思うな。あの歳の子に秘密守れるとは思えないんだよね。」
「社長に話して協力して貰う?」
ピーさんの提案にマサミは、
「社長、口軽いよ、ヘリウム位に!」
水素よりは軽くないんだね?ってどんだけ軽いんだよ!
「わざわざ言いふらすのは論外だけど、知られたって困らないんじゃ無い?既に何人も知ってるでしょ?」
ラヴはいつもながら冷静って言うか、興味無さそうだった。大体、僕らが存在するだけで、未来は変わっちゃうよね、そう考えればラヴの意見も一理あるかな?
「まあ、正解なんて解らないんだから、バレた時考えたらいいじゃん!」
セブンは能天気に笑い、会議を終了させた。結果、セブンの意見って言うか、今まで通りって言うことだよね?うん、そうそう。一応納得して食堂に降りた。




