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バックトゥザ令和  作者: グレープヒヤシンス
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古くて新しい生活

 翌日、花音と正路も参加して玉葱農家のバイトに行った。1日頑張って、600円ゲット。

 道場には風呂が無いので、銭湯に行く。600円稼いで何百円取られるか不安だったが、35円で入れるそうだ。次に問題なのはどっちに入ればいいんだ?変化の無い花音は問題無いし、年齢が変わっても性別はそのままの姉ちゃんと正路も問題無し。男子になった3人は勿論男湯だが、僕は問題だよね。外見的には男湯は不味いし、女湯に入るのは心苦しい。姉ちゃんと花音と時間をズラせば大丈夫かな?他の人のハダカ見えちゃうけど、知らない人なら、それ程罪悪感もない。


 銭湯に向かうと、じいちゃんとばあちゃんも一緒に来た。今の年齢だと、年下のふたりなので、呼び方を変えて欲しいと言われ、英造さん、千鶴さんで統一した。

「交代で入るから、外で待ってからね!」

「えっ?なんで?一緒に入ろうよ!!」

花音は気にしないようだ。

「僕、こんなカラダになってるけど、一昨日まで男子だし、恋愛対象は女性だし、僕にとっては混浴みたいな感じなんだよね!」

「つい最近まで一緒に入ってたからいいじゃん!」

姉ちゃんはそう言うけど、10年以上前の事をだよ!しかも子供だっし!まあ、ダメって言われるよりはいいのかな。思い切って一緒に入った。『見る』は、極力遠慮していが、『見られる』方はノーガード。しかも、触られ放題。なんとか入浴を済ませた。なるべく視界に入らないようにしていても、チラチラ網膜から届いてしまった映像では、姉ちゃんは子供だし、花音もドキッとする部分の発育はかなり控え目に思えたので、なんとか平常心をは保って脱衣場に脱出出来た。急いで髪を乾かし、自分のサイズに合わせて買った下着を着けてみた。花音が面倒を見てくれたので問題無かったし、変身してカラダが柔らかくなった様で、背中のホックも楽に留められた。買い物に行った時は、なかなかサイズが合うものが無く、バックヤードから探し出してくれた。この時代って、控えめサイズが多いのかと思ったが、きちんとしたサイズを着ける知識が浸透していなかったらしい。

花音は、デザインに不満があるようだ。

「令和に帰ったら、可愛いの買いに行こうね!」

元の時代なら元の姿なんじゃないの?まあ、全てが謎なんで、誰も正解なんて解らない。

 下着を着けると余計に膨らみが目立つようになった。苦しいなりに姉ちゃんのを着けたけど、姉ちゃんそんなに膨らんでなかったよね?ほとんどが道着かジャージ姿しか記憶に無いからピンとこないけど、あれって元の姉ちゃんのサイズならかなり余裕がありそうだ。昭和に来てから、弄られてばかりだったので、仕返しに、姉ちゃんを問い詰めると、意外とあっさりと白状した。

「嵩増ししてたんだよ!」

ペロっと舌を出して、下着の中で工夫して、改竄していたとの事。まあオトナの事情ってとこかな?

ドライヤーが無いので、髪はバスタオルで拭いただけなのでまだ湿っている。元々男子としては長めの髪だったが、天然パーマが濡れてストレートになると、女子のショートに見えない事も無い。姉ちゃんも花音も千鶴さんも絶賛だった。

「千鶴、上がったか?」

壁の向こうから英造さんの声がして、タイミングを合わせて、銭湯を出た。

「英ちゃん、可愛い!」

見かけはマッチョの格闘家になってる3人は、中身に合った乙女の反応でストレートヘアを褒めてくれた。

正路は、一瞬目が合っただけで、ソッポを向いていた。大方、僕だけ女湯に入ったのを羨ましいとスネているんだろう。

「正路、惚れ直したんでしょ?」

姉ちゃんがツッコミ、まさかと思ったが、正路は真っ赤になった。そこを更にツッコまれると、

「ゆっ湯上がりのせいだよ!!」

裏返った声で言っても信憑性はない。

嫌われるよりはいいと思うけど、僕からは、異性とは思えない。ものごころ付いてから十数年、同性の友達として付き合ってきたのに、そんな気分になれるのが不思議に思う。つい一昨日も、ゲームの美少女キャラで勝手にミスコンを開いて盛り上がっていた、あの熱い視線が、僕に注がれていると思うと、微妙?いや、かなり不快に傾いた気分だな。


 部屋に帰って、花音に相談してみた。

「そうね、私は雨丸くんの感覚、なんとなく理解出来るよ!恋愛感情は、ないけど、男の子になった3人は異性だと思うな。一緒にお風呂はムリね!」

門下生の3人は、元々美少女と言って誰も文句無しって感じなんだけど、冠に『よく見ると』が付く。格闘家を目指し、パッと見では少年みたいと言うか、ストレートに言うと女子力が低い。流行りのスイーツも気にならないことも無いようだが、プロテインの方を優先してしまう。機能重視のショートカットは、変身した男子の姿で丁度いい位だ。

「正路は少し、女の子に慣れるチャンスかもね!私も中学入った頃からまともに口効いて貰ってないから、凄い進歩だよ!」

そう言えば、正路は3次元女子とのコミニュケーションは出来ないんだった。やっぱり僕は僕として接してくれてるのかな?今まで通りに接して様子なので見ることにした。


 道場に行ってみると、変身した細マッチョ達が当たり前のように稽古に励んでいる。意外な事に、正路も加わっていた。3人は、パワーアップしたカラダを試しているようだ。正路も小さい頃は、道場に通っていたので、基礎は身に付いている。格闘漫画家を目指しているので、知識も充分だが、体育の授業ですら必要最低限な事しかしないのに、カラダを動かしているなんて奇跡のようだ。しかも、以前から4人グループだったかのような雰囲気。正路は、中学生になった頃から苗字にさん付けたったが、女子同士で読んでいるニックネームで読んでいた。

凜がピーさん、愛梨がラヴ、菜々美がセブンだ。『愛』がlove、『なな』がsevenは解りやすいがピーはちょっと捻りがある、中学の科学の時間、(りん)の元素記号がPで、燃えやすい性質が(りん)にピッタリとすっかり定着していた。

僕がこんなんなっちゃって、正路が孤立しないか心配だったけど、上手くやっていけそうでホッとした。

「私にも教えて!」

花音が見た事のないヤル気を見せている。体育館より図書館が似合う彼女は、根が真面目なので、体育も真面目に参加していたが絵に描いたような運痴で、ドッヂボールで彼女を狙うと顰蹙を買うくらいだった。柔軟体操から始めると、かなり柔らかい。僕も変身して柔らかさはかなりアップしているが、花音は更に上を行った。

幼児コースで教えるメニューを次々とマスターして行った。経験者達は、目を丸くしていた。

「蹴って見る?」

凜が誘う。非力で柔軟性の高い花音なら、怪我はしない筈なので、僕からも勧めてみた。

サンドバッグの揺れ具合にウットリしていた愛梨が、手本を見せて交代、花音のキレイな回し蹴りがサンドバッグに触れた。パチンと当たって、脛を痛がる姿を想定していたが、ズシリとサンドバッグを揺らし、釣ってある鎖を切ってしまった。

「あら、壊しちゃった?」

呑気な花音の脛は、痛くも痒くもない様子だった。

英造さんが慌てて、

「大丈夫か?」

花音が怪我でもしていないか心配の様子だったが、

「ごめんなさい、壊しちゃって!直せますか?」

あたふたしながら、200キロのサンドバッグをヒョイと立てた。

「危ないから置いてね!金具が壊れただけみたいだら、替えれば大丈夫なんで心配しないでね!」

花音は、サンドバッグをそっと寝かせ、ペコペコと謝っていた。

壊れたままだと、花音が気を使うからと、英造さんは金物屋さんに、金具を買いに行った。直ぐに戻ると、

「私、お手伝いします!」

花音はサンドバッグを持ち上げ、脚立に乗った英造さんが、金具を付け直した。


性別が変わったり、歳をとったり、若返ったり、それぞれ変化があったが、見掛けは、全く変わっていない花音は、超人的身体能力を身に付けたようだ。1人だけそのままのほうがおかしいから、当然っちゃ当然なのかもしれないな。バーベルなんかで、パワーを確かめると、男子の世界レベルを軽々と超えていた。変身した事は、この際置いておいて、筋肉の強さに不思議を思ってしまった。本来、筋肉の強さは、断面積に比例する筈。花音の見かけは、華奢なまんま。筋肉隆々って事もないし、チカラコブが盛り上がることもほとんど無い。まあ、パワーの制御も出来ていているようなので、問題は無いよね。


「いつの間にそんな仲良くなったの?」

ちょっとだけ、親友を奪われたジェラシーを感じながら聞いてみたが、正路は目を合わせず、

「別に・・・」

真っ赤になっているから、何も無かった筈がないけど、こういう態度の時は絶対に話さないのは、長い付き合いで解っているので、ターゲットを他の3人に代えた。3人も正路並みに赤面していたが、菜々美が渋々答えてくれた。

「銭湯でカラダ洗っていたら、ちょっとしたハプニングがあって、正路に助けて貰ったんだ。」

3人の表情から、きっと男子しか体験しないカラダの変化があったんだろうな。

男女が入れ替わるお話で、元女子は、股間の変化に戸惑うシーンがお約束。どう対処したかは、知りたくないし、聞かれたくない筈だろうから、放っておこう。

「おしっこで汚れてると思って、石鹸で洗っていたら大きくなっちゃって困ってたら正路が色々教えてくれたくれたんだ!」

菜々美は、戯けた表情で嫌な雰囲気を笑いに変えた。和やかにシモネタ解禁の雰囲気になったので、この際なので、聞けずにいた事を尋ねてみる。

「トイレの時、どの位拭けばいいのかな?なんか、ゴワゴワで痛いんだよね。大きい方は今まで通りだからいいんけど・・・。」

「拭くっていうより、紙を当てて吸い取らせるイメージかな?紙は、トイレットペーパーじゃなくて、硬いからちょっとグシャグシャって揉んでから使うといいよ!」

花音の解説で、正路がまたフリーズしていた。

「ついでだから、コレ上げる!俺達もう使わないからね!」

凜はそう言うと、女の子が必要な物をポーチに詰めて渡してくれた。

「使い方は、花音に習ってね!」

マッチョな彼等(・・)に女性特有の事を指導されるのは絵面が悪すぎだもね。

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